私達の展覧会には必ず登場する、おじいちゃんの手作りぞうり!
作っているのは、武治郎さん!
武治郎さんは、平成6年2月2日に交通事故に遭われ、その後遺症で感覚性失語症になってしまわれました。
失語症とは、大脳皮質にある言語中枢とその連絡領域の障害によって言語表現や理解が困難に陥る状態の事を言います。知的機能や情緒面での障害はありません。障害が生じた部分によって、運動性失語症、感覚性失語症、健忘失語症、伝導失語症、超皮質性失語症などがあります。原因は、脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍などで、言葉を話したり話を聞いて理解する能力が失われます。
武治郎さんの場合は、交通事故で頭を打った事が原因でした。身体の他の部分はどこも怪我をされなかったのに、脳だけに損傷を受けられてしまったのです。家族は意思の疎通が図れない状態に困惑し、武次郎さん自身も理解されないと言うストレスが多かった事と思います。普通に話をしているように見えても、どこまでその内容を把握して話しているのかが周りの者にはわからないのです。感情や意思は正常なのに言葉が混乱しています。家族はその事を理解して接しなければならない事が非常に大変でした。
お医者様から脳に刺激を与えるようにと言われました。おじいちゃんの手作りぞうりは、そこから出発したのです。
農家で育った子供時代に、わらぞうりを作った思い出。それが布を裂いて作るぞうりへ繋がりました。最初は誰かが手伝わないと作らなかったのですが、少しずつ積極的に作るようになりました。材料は、古い衣料品です。それを細く裂いて紐状にして編みます。配色も考えて手を動かす事で症状も軽くなってきたようです。
江戸表具を愛する会の第一回展では、五十足も作って下さいました。一日一足のペースだったのをスピードアップして作って頂きました。皆様に喜んで頂けて私達も嬉しかったです。このぞうりは、スリッパ代わりに大変重宝致します。
←第二回展にも登場しました。 |
昨年(平成13年)の夏には、ご夫婦で初めての海外旅行にもお出かけになりました。武治郎さんが行きたいと言ったドイツです。普通にお話していると病気の事などわかりません。物静かで優しい素敵なおじいちゃんです。ただ、それが悪くすると周りの人々に病気である事を理解して頂けない事にもなってしまいます。
ディズニーランドのシンデレラ城のモデルになったお城でツーショット |
感覚性失語症は、軽い書字障害もあるのですが、今は漢字検定に挑戦していらっしゃいます。問題を理解する事が困難なのですが、懸命に取り組んでいらっしゃいます。
私達の携わっている表具も手仕事ですので、武治郎さんの頑張る姿が励みになります。