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掛け軸の形式


掛軸の形式には、中国から伝わった表具が日本で様式化された大和仕立てがあります。また、中国から伝わったままの形を伝えている文人仕立てや、その他日本で考案された形式のものもあります。

《大和仕立て》

真・行・草の三体があり、その三体にも各体ごとに真・草・行の三体がある。しかし、草の形式には真がないため、全体で八式となる。この様式は、茶道の真・草・行三体に通じるものとして相阿弥が確立したと言われている。

●真の形式は、裱補(ひょうほ)、裱褙(ひょうほえ)、表補絵(ひょうほえ)、裱補絵(ひょうほうえ)などと称され、神聖表具、中尊表具、本尊表具とも言われる仏表具(仏仕立て)の事。仏画・曼陀羅・頂相・画像・神号・仏号・道号など宗教的内容の絵や書に用いられる。中縁の内外に筋を廻す。内側の筋を浅黄色、外側の筋を紫にするとも言われるが、定められてはいない。このことから、沈め表具・四十縁とも言われる。

真の真・・・総縁、中縁、一文字が本紙を廻っている。(天地も廻っているので総縁と言う)中縁の内外に筋を廻す
真の行・・・一文字が廻っていない。総縁は廻す。中縁の内外に筋を廻す
真の草・・・一文字を省略したもの。総縁は廻す。中縁の内外に筋を廻す。

●行の形式は、幢補(どうほ)、 幢褙(どうほえ)、道補絵(どうほえ)、幢補褙(どうほうえ)などと称され、本表装(本仕立て)とも言われる表具の形式。歌切れ・懐紙・詠草・色紙 ・書画などに用いられる。

行の真・・・一文字・中縁が本紙を廻っている。
行の行・・・一文字・中縁・天地と別れているので三段表具と言われ、大和表具とも言われる。
行の真・・・行の行の一文字を省略したもの。二段表具。

●草の形式は、輪補(りんぽ)、 輪褙(りんほえ)、輪補絵(りんほえ)、輪補褙(りんぽうえ)などと称され、幢褙の柱を狭くしたもの。茶掛けとも言われる。茶人の書画、または画賛もの、禅僧の墨跡などに用いられる。

草の行・・・幢褙(行の行)の柱を狭くしたもの。
草の草・・・幢褙(草の行)の一文字を省略したもの。

大和仕立ての真・行・草の三体の図(八つの形式)

大和仕立ての形式

《文人仕立て》

中国から伝わった形ままの形を伝えているもので、南画や文人画や漢詩などに用いられる。

●袋表具(袋仕立て)は、同一の裂地で上下と柱を繋いだもの。一文字を入れたものや本紙廻りに筋を入れた形もある。風帯はつけない。

丸表具・・・袋表具の一文字がついた形のものを言う。風帯はつけない。切り仕立とも言われる。

本袋表具・・・丸表具の一文字のついた本紙に筋を廻したもの。

●明朝表具(明朝仕立て・袋明朝)は、掛け軸の左右端に3分前後の縁(明朝)をつけて仕立てる。明時代に流行したことから呼ばれる。江戸時代の中頃より広まった仕立て方。柱の端に筋を通して、同質の裂地を明朝にしたものを筋明朝(筋分け明朝)と言う。明朝の代わりに薬袋紙で覆輪をしたものも明朝表具と呼ぶことがある。

●太明朝表具は、左右の柱が天地を貫き通したもので、天地と左右の柱が同色の時は境に筋を入れる。異色の時でも入れることがある。細物を仕立てたときは聯仕立てとも言う。

●唐表具は、天・中・一文字・風帯を同一色にして、その境に筋を入れたもの。一文字に金襴を用いたものもある。(文人仕立てのことを総称として唐表具と呼ぶこともある)。

《その他の表具》

●台紙貼り表具 は、日本で考案された掛軸の仕立て方。色紙や短冊など小さな本紙を台紙に張りこんで大きく表装する方法。連台表具と言う台を重ねたものもある。台入れ表具・台表具・台張表具とも言われる。本紙が歌切れ・懐紙・詠草・色紙 ・書画などが多いので、幢褙、輪褙に仕立てられる事が多い。

●見切り表具は、中廻しの柱を略し一文字と平行に置き、天地を柱で繋いだもの。袋表具と呼ぶこともあるので文人仕立てとも言われるが、裱褙の「真の行」の形式の中縁を略した形として幢褙より格が上とされる形式。佐久間将藍(さくましょうげん)の好み表具と言われる。 柱の太いものを幢褙見切り、狭いものを輪褙見切りと称す。

●くり抜き表具 は、。裂地を切り抜いて本紙(作品)を嵌め込む技法。丸くくり貫いたものは、円窓(えんそう・まるまど・丸窓)と言う。

●描き表具(画き絵表具)は、本紙だけでなく、中廻し、天地の部分の裂柄まで筆で書き分けた表具。

 

●柱隠

など。創作表具(自由な表具の形)もある。