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【本】 大正生まれの飛騨っ子
著者:中島澄子
初版:2002年12月−文芸社

大正8年に岐阜で生まれた中島澄子さん(現在は東京在住)が、小さな頃の思い出を書かれた本。昭和のはじめの日本の様子が良くわかります。当時のお正月、七夕、天神まつり・・・四季折々の生活が書かれています。てんこ流しと言う上流で伐採した木を下流に流す昔の飛騨の風物詩なども思い出の一頁として出てきます。毬つきの歌やお手玉の歌も書かれています。私が小さい頃にお手玉をしながら歌った歌は?少ししか思い出せません。書きとめておかないと何もかも忘れてしまいます。色々な方に私達の知らない昔のお話を伺いたくなりました。そして、私達も私達の知っている事を次世代に伝えなければならないと思いました。

【本】 小島起美追悼歌集 一途に (四季投稿の歌より)
手作り和本−2002年12月・限定30冊
短歌:小島起美(雪香)
原稿収集:小室桂子
挿絵:小島晨男
編集:小森谷秀治

2002年4月に小島雪香さんの十三回忌の供養として開催された"絵里佳&桂子−我が家のお宝展 " と同じ想いで作成された手作り和綴じ本。小島雪香さんが"四季"に投稿掲載された短歌を娘の桂子さんが収集し、息子の晨男さんが挿絵を描き、孫の絵里佳さん、そのご主人の秀治さんにより編集されたものです。
書にも板画にも心血を注いでいらした小島雪香さんが四季折々に感じる心が素直に表されています。80代で病の床にありながらも毅然としたお心で日々を過ごされている姿が目に浮かぶようです。そして小島雪香さんを囲む家族の優しい想いがその短歌から偲ばれます。年老いてもこのようでありたいと思わされました。挿絵も穏やかな色調で、家族の温かさに包まれている短歌集です。

【本】 織と文−志村ふくみ
著者:志村ふくみ
初版:1994年10月−求龍堂

表装のお教室で出会った方に、すごい方だからと貸して頂いた本でした。
志村ふくみさんは、大正13年(1924)滋賀県近江八幡市の医師の家の次女(姉・兄二人・妹)として生誕。 染織作家として紬織を芸術作品にまで発展させ、多くの賞を受賞。1990年(平成2年)66歳の時に、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。エッセイでも賞をお受けになっています。

この本は、志村さんの織られた着物に全て作品名がつけられてカラーで紹介され、文章も綴られています。 眺めているだけで美しい色の着物。植物の中から取り出された色は、志村さんの感性に出会って穏やかなる美を放っています。そして綴られた文章を読んで、日本語とはこんなにも美しかったのかと再確認させられました。

【本】 大学図書館の39年
著者:清水末寿
初版:2002年4月−創栄出版

著者の清水末寿さんとは、表装のお教室で出会いました。どなたかが道具を忘れるとすぐ貸して下さる優しい方です。表装教室は、主婦やお仕事を退職された男性が多いのですが、どのようなお仕事をされていた方なのかは殆ど分かりません。皆、一受講生であり"表装を楽しむ仲間"と言う事だけです。たまたまこの本に出会った事で清水末寿さんの業績や人となりを垣間見られたようです。

著者紹介には、昭和6年北海道生まれ。青山学院大学第二英米文学科、文部省図書館職員養成所卒。北炭清水澤炭鉱、大学図書館に勤務。編書に、『一橋大学付属図書館史』『一橋大学年譜T』『外池文庫目録』"Catalogue of Serials in Library of Hitotsubashi University"など。と書かれています。

この"大学図書館の39年"は、いくつかの論文や書評と回想録をまとめられ古稀の記念に出版されたものです。 私も色々な事柄を調べるのに図書館を良く利用致しますが、今まで図書を整理されている方のご苦労までは考えませんでした。図書館の検索機で調べれば探したい本が見つかり、保存庫の中の本までもすぐに出してきて頂ける。そして、いつの間にか自宅のパソコンでも図書館の本が検索できるようにさえなっています。清水末寿さんのような方々がいて、分類整理を続けているからこそのシステムなのでしょう。ささやかな自分の本でさえ置き場所が見当たらなくなる事が多々あるので、膨大な図書の整理を考えると気が遠くなります。

図書館史とともにご両親の話や幼い日の記憶や過ごしてきた日々の事などか書かれています。「思い出の風景」と題された文章の中に、三好十郎の廃墟と言う戯曲の話が出てきます。思いがけなくこの戯曲が出版されて居る事を知り、近くの図書館にあることまで調べられて嬉しかったです。ずっと読みたいと思っていた戯曲でした。清水末寿さんご自身のお話は、まるで清水末寿さんにお話を聞かせて頂いているような感覚で読ませて頂きました。過ごされてきた日々から古き日本の姿が浮き彫りにされているようです。

この本は、2002年8月に日本図書館協会の選定図書になり、2004年には改訂版も出版予定のようです。
現在、清水末寿さんは闘病中でいらっしゃいます。ご回復を心からお祈り申し上げます。 (2004.4記)

【本】 織ひとすじ千年の技 西陣兄弟、二百歳の志
山口伊太郎
山口安次郎
初版:2003年12月−祥伝社

西陣織での源氏物語絵巻を制作プロデュースをなさる兄の山口伊太郎氏102歳と、織職人として能装束の復元に取り組んでいらっしゃる弟の山口安二郎氏99歳。伊太郎氏は、現存する源氏物語絵巻を今あるままに西陣織で表現すると言う事ではなく、コンピューターなども駆使して西陣織の技術を研究追求され、西陣織で表現出来得る限りの美しい源氏物語絵巻を作り出されています。安二郎氏も、能衣装の復元に際して、退色した色のまま復元するのか、退色以前の色を使うのか、現代の舞台に映える色にするのか、試行錯誤され、現代の舞台に映える色にされているようです。そして、身に付ける人の身になって織る手間をかけていらっしゃいます。裏に織り糸の出ていない、軽くて着やすい能衣装を織られるようです。長寿についてのお話や昔の職人の世界のお話など興味深いお話も書かれています。

納得するまで試行錯誤を繰り返す、生涯現役が大事なこと、伝統は新しさの積み重ね、究極の仕事は機械よりも人間技が勝る・・・など、現役で活動し続けていらっしゃるお二人から出る言葉の一つ一つが重みを持って伝わります。

この本にも数枚の写真が掲載されていますが、大倉集古館での展覧会(山口伊太郎、山口安次郎兄弟二百歳記念作品展「千年の織物、二百歳の夢」−2003年12月2日〜2004年2月12日)時の図録には、絵巻物のアップの写真や能衣装も数多く掲載されていてとても綺麗です。

【本】 沈黙の・・・深い声
山本 萌
初版:2005年10月1日−且Y心社

作者の紹介文から、『・・・埼玉県所沢市の古い借家に二匹の猫と暮らす。車に乗らず、テレビ、ケイタイ、パソコンなど持たず、地に低く生きることを信条とする。小さな生きものたちと交流し、樹木や草木に親しみ、音楽や古陶を愛でて、玄米食の日々を送る・・・』
住まいを「萠庵」と呼ぶ山本萌さんの45篇のエッセイです。

2005年10月に三鷹市下連雀のギャラリー・オークで「山本萌書展」がありました。落ち着いた雰囲気のギャラリーで掛軸や額の小品が展示されていました。書の雰囲気と裂地の取り合わせが素朴に調和した作品ばかりで、身近に置いたら心安らぐような感じかしました。全てご本人が裂地を選んでいらっしゃるとの事。会場内で穏やかにお客様と話されている姿と上記の作者の紹介文にも惹かれて、出版されたばかりの、この「沈黙の・・・深い声」を求めました。

日々の生活や書や絵への思いが、美しい言葉で淡々と綴られています。ゆったりとした時の流れの中で暮らしている姿が垣間見られます。生き物の命だけでなく物の命とも語り合いながらの暮らし。忘れていた何かを思い出させてくれた1冊です。

【機関誌】 百万塔
紙の博物館機関誌133号−2009年6月発行

百万塔の第133号の72頁〜88頁に、江戸表具を愛する会の制作担当・ごぶりんばあほおの一員である、古内都の「=情報記録媒体としての料紙装飾= 『西本願寺本三十六人家集』の加工料紙」が掲載されました。以前に書いた論文をまとめたものとの事です。元の修士論文も読ませて頂いたのですが、詳しく調べられていて見事でした。精力的に資料集めや取材に走り回って書かれたものです。メンバーの文章がこのような冊子に掲載される事はとても嬉しいです。表具ばかりではなく色々な事に興味を持って知識を深めて行くメンバー達に置いていかれないように、頑張らないと!と、奮起させられる出来事でした。




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