国際基督教大学にも、学園紛争がありました。その学園紛争に、機動隊が出動したことを知っていますか。
1969年10/20のことです。ディッフェンドルファー学生会館に籠城する学生を、機動隊は、暴力で排除しました。同日、立教大・東京農工大にも、機動隊は出動しています。
当時のＩＣＵ教員が書き残した資料に、流血を物語るものがあります。「大学礼拝堂前の土は、現実的に学生の血を吸い込んでいる」と表現されているのです。
ＩＣＵの機動隊導入は、9月には決まっていたようです。授業を再開したのは10/27ですが、機動隊は、10/20から２ヶ月あまり、大学に常駐したとあります。機動隊暴力が学内で最もひどかったのは、西の関西学園と、東の国際基督教大学だと、指摘もしています。そして、東西共通していることは、「キリスト教主義」であること。
学生は、登校拒否で対抗したのですが、大学は、1970年1/27を、「自動的に退学になる」リミットとする、弾圧政策をとったのです。そして、前日の1/26に全共闘は、解散したとあります。
1969年、この時代は、70年安保を前にして、各大学でも、紛争が起きていました。
東大・日大・早大・中央大・京都大・大阪大・立命大・神奈川大・広島大・神戸大・富山大・関西学院大・岡山大・群馬大・山梨大・長崎大・埼玉大・京都府立医大・専修大、慶応大、明大、高崎経大、法政大、福島大、その他にもまだまだ、紛争を抱えた大学はありました。
紛争原因も様々でした。沖縄返還協定調印、ベトナム戦争、不正入学、学費値上げ、成田三里塚（成田空港）、王子野戦病院、基地拡張、米軍タンク輸送、大学治安立法、エンタープライズ寄港、能研テスト、などです。
1969年、この時代の背景を探ってみます。
| 1967年 | |
|---|---|
| 2/10 | 国際基督教大学。能研テスト導入に反対して本館に学生が籠城、本館を封鎖する。 |
| 10/10 | 成田三里塚闘争。‘66年に始まった反対運動が、公団の杭打ち作業を阻止しようとして、機動隊との武力衝突にまで発展。 |
| 1968年 | |
| 1/19 | エンタープラィズ入港。長崎佐世保港に、アメリカ軍の原子力空母が、ベトナム参戦のため寄港する。寄港阻止をしようとする全学連と、機動隊が、1/15日から衝突を繰り返す。 |
| 2/20 | 金嬉老事件。ライフル銃で、暴力団員二人を射殺、静岡県寸又峡のふじみや旅館に、人質を取って立て籠もる。 |
| 2/26 | 成田三里塚闘争、大規模な武力衝突が起こる。反対派三千人が参加、全学連が機動隊と激突、40人の負傷者が出る。 |
| 3/10 | 成田三里塚闘争、反対派１万人が参加、全学連二千人が機動隊の築くバリケードに突入、負傷者五百人を出す。 |
| 3/16 | 南ベトナム・ソンミ村でアメリカ 軍によって、村民５０４人が虐殺される。 |
| 1969年 | |
| 1/18・19 | 東大、安田講堂の攻防。 |
| 6/28 | 2月末頃から、新宿西口広場で、毎週土曜日にフォークソング集会（フォークゲリラ）が開かれていたが、この日、暴動が勃発。機動隊が導入される。 |
| 7/21 | アポロ計画、月面着陸。7/16に打ち上げられたアポロ11号は、この日、船長らの月面着陸を果たす。大気のない月面で、星条旗がはためくシーンが印象的と、評判になる。 |
| 10/21 | 新宿騒乱事件。新宿・高田馬場を中心に全共闘、反戦労働者、市民らが機動隊と激しく衝突、火炎ビンと催涙弾が飛び交った。1221人の逮捕者が出る。このあと、投石防止策として、歩道の敷石がアスファルトに変わった。 |
| 1970年 | |
| 3/14 | 大阪万国博、開催。4/2、「太陽の塔」に登って、籠城する男が現れる。 |
| 3/31 | 赤軍派による「よど号」ハイジャック事件。4/2に離陸、北朝鮮へ。 |
| 5/12 | シージャック事件。「ぷりんす号」を乗っ取り、乗客を人質にする。5/13、大阪府警のライフル班により射殺される。 |
| 6/23 | 日米安保条約自動延長。 |
| 11/25 | 三島由紀夫が、市ヶ谷陸上自衛隊東部方面総監部において、割腹自殺。 |
これらを背景として、国際基督教大学で、「建国記念日」から端を発して、「能力研究テスト」が火種になって、学園紛争に着火したのです。
1979年に共通試験が登場するまでに、1947〜54年に進学適正検査が、1963〜68年に能力研究所の共通テスト（能研テスト）が、試みられています。試行錯誤の時代に、機動隊を用いて学生に暴力を振るい、機動隊導入を拒んだ造反教員を解雇する、弾圧の道を選んだ、ＩＣＵです。あるＩＣＵの教員が、質疑応答の中で、学園紛争により、「大勢の先生方が学外に出られました」と述べています。
1970年、ＩＣＵの学園紛争にあって、教員・職員・助手のなかで、業務拒否を貫徹したために、解雇された人達がいます。警備員のなかでは、「私は、学生を守るために警備員になったので、学生を追い出すために警備員になったのではない」と、検問業務を拒否した人がいました。解雇されたそうです。
2002年11月3日