委員長のきまぐれ「週報」 「争議団的暮らしとは」

第33回 06年の始めに 「乱世の底流に兆すもの」

 昨年の争団連は、久しく勝利がなかった歴史を塗り替えて、渡辺工業闘争の解雇撤回・職場復帰の勝利、日野遺跡闘争の解決をかち取った。だが同時に、私たちが掲げていた「争議連続勝利」の力強いうねりをつくり出すにまでは至っていない。
 このことは、私たちが、弾圧・争議・労働運動解体攻撃に抗する争議団共闘、地域共闘・地域合同労組運動の持続の中で争議に勝ち得ることを示すことのできた成果と、他方で未だそれを運動のダイナミズムへとつなげて行く飛躍をかち取れていない自らの課題を明らかにさせるものだった。大道測量闘争、藤商会闘争等が勝利へと肉薄し、教育社闘争、郵政民営化の動向の中で最高裁判決を控えている四・二八反処分闘争等が局面の煮詰まりを迎えるなど、各争議団は奮闘している。昨年の勝利を糧に、06年に持ち越されたこの目標に向け私たちは全力で挑んでいきたい。
全争議団闘争勝利への奔流を断ち切ろうとする壁は幾重にも立ちはだかっている。争議をめぐる状況も、この三〇年間、あるいはこの一〇年間を見ても大きく変貌を遂げている。私たちは長期間にわたって争議が労働運動に占める位置を突き出し、その意義を体現する争議にこだわり、闘ってきた。だが、労働運動そのものを所与のものとして語ることはできなくなっている。労組の組織率は、18%台へと30年連続下落し、全労働者の3分の1を越える非正規・不安定雇用の労働者をめぐっても、個別紛争処理制度とせめぎ合う闘う地域合同労組運動の大きな前進局面を切り開いてはいないのが現状だ。だが、着目すべき激震の芽も広汎に吹き出している。
 05年は、泥沼のイラク戦争を抱えて二期目の就任をしたブッシュの米国をハリケーンが見舞い、中国で反日デモ、ロンドンで同時爆破事件、フランスで移民の若者の暴動が起こり、日本では、JR脱線事故、郵政国会解散=9・11総選挙を経て、耐震偽装発覚に暮れるなどした。日本社会が「崩壊」「末期」「どん詰まり」「メディアの臨終」といった各所での惨状を露呈した一年であった。「経済財政白書」が「バブル後脱出宣言」を行い、二極化の進行と「勝ち組」にしがみついての「景気回復」の唱和の下で、「株式市場の活況」を呼び込んだが、新自由主義的「構造改革」の名による労働者・民衆への犠牲強要策はいよいよ露骨に進められ、労働者の平均賃金は7年連続下落し、年収200万以下の世帯数が全体の20%、生活保護世帯が百万世帯へと急増等、「経済格差」拡大と生活破壊が顕著になっている。このままではそれは同じ職場にいる労働者でも成果給や雇用形態の差で今後ますます拡大していくことになる。
 「下流社会」を語る言説が登場しているが、「勝ち組と負け組」という枠組み、多数派は「負け組」となる仕組み自身を保持し、下流候補層を〈欲望ー消費〉の回路にはめ込もうとするかのようなマーケティング業界の筆者の物が売れている。ここにも情報ー市場主義的価値観の一元化が顔をのぞかせているが、このような腑分けと分類の対象とされることを私たちは拒否して生きる。亀裂を深める社会の底流を読み取り、市場原理主義的「改革」の自己矛盾が不安定な社会の底割れを招来させている地殻変動の鼓動を察知しつつ、枠組みを転換させる時代を切り拓くだろう。よるべき拠点も将来像も見出せない中で「下流候補」とされる若者も深く悩み、社会秩序と異なる関係を模索している。使い捨てにされる不安定雇用労働者、高齢化社会の労働ー生活問題を抱えた中高年も黙ってはいられない。そうした点に接合した私たちの闘いを共同的関係を、築いていくことが求められている。職場で闘う労組、失業・排除に抗する野宿者の仲間等も必死で頑張っている。
 労働運動の死滅か新たな再生か。死活をかけた攻防がこの2006年に正念場を迎える。07年へかけて憲法改悪や共謀罪制定、労働契約法制定、等が狙われて治安弾圧と戦争国家化、団結破壊攻撃が進行しており、昨秋年末には立川反戦ビラ弾圧で高裁逆転有罪判決が出され、争議現場にも再び公安の徘徊・権力の介入が目立ち始めている。生まれつつある地殻変動と矛盾の噴出に身構えた攻撃との激闘をも勝ち抜いて、全争議団闘争勝利・闘う労働運動の発展をかち取っていこう。
 2・3全国結集行動(争団連統一行動)を闘い抜き、3月全国争議団交流集会の成功へ!
第25回全国争議団交流集会の関西開催(3/12)へ向けて、2月4日東京で第4回企画会議を開催します。その前日の2月3日には、全国結集行動(争団連統一行動)として藤商会本社闘争ーふじせ五反田地域デモを闘います。北部集中闘争となっている連帯・板橋パートの闘いと合わせ、三つの現場への皆さんの結集を呼び掛けます。

 争議団連絡会議の機関紙「莽」06年1月号に、2・3ふじせ闘争(争団連統一行動)の呼び掛けを兼ねて書かせていただいた原稿を転載しました。表題は変更しています。また手抜きの上に、今回は硬い文章で、恐縮です。