7・17
宮原学研社長宅闘争展開

 社長就任後、2012年から相次いで組合ニュース記事に「名誉毀損=損害賠償訴訟」を仕掛けてきた宮原・学研との攻防は、請求異議審(2017~2019判決)での反撃、昨年秋と今春の「さくら損賠」地裁・高裁連続勝利判決、そして今年3月の「宮原損賠」勝利判決をかち取り、社前・株主総会での追及と共に最高責任者へ迫る闘いの飛躍へ進んでいます。そして、転居後の宮原社長自宅への第1波の行動を7月17日に展開しました。

 猛暑の中、多くの仲間が結集、東新橋一丁目にある47階建てのタワーマンション=東京ツインパークスのL棟24階に住む宮原社長に申入れを行いましたが、不在の様子で応答がありませんでした。
 R棟のすぐ南側にあるイタリア公園で横断幕を掲げ、マイクでの情宣とビラ配布を行いました。
11時45分までの行動を打ち抜いて、シュプレヒコールをあげて終了しました。
6・16学研社前行動
 この日は小早川常務も宮原社長も姿を見せない中、朝ビラ配布、抗議行動を打ち抜きました。行動の途中社長宅へセンチュリーが迎えに行ったようですが、他所へ出向いた様子でした。

 朝ビラでは、宮原損賠での学研の控訴理由書への批判等を掲載しました。7時半から10時までの社前行動を打ち抜きました。
6・29三井住友Fg株主総会闘争を闘う
 メインバンク三井住友銀行が、争議解決の働きかけもせず、組合員の預金口座の所在を学研に教えて差し押さえ=金の取り立てに協力した民事弾圧加担の責任も追及し、フィナンシャルグループ株主総会に対し、インパクトある情宣行動を展開しました。
 130枚ほどのチラシを配布、うち100枚近くは出席株主の受け取りで、宮原損賠とさくら損賠勝利の事実も知らせて抜群の情宣効果となりました。

 三井住友銀行に対しては、ここ数年、環境保護団体が二酸化炭素排出産業への融資を拡大していることに抗議し、同時刻に総会への抗議行動を展開しています。  

7・3宮原損賠控訴審結審し、10月判決へ
 組合勝訴の一審判決に対し、学研、苦しい弁解の控訴理由書
 株主総会で宮原学研社長が、「(組合に)3億円を要求されている」などという虚偽の答弁を行ったことにつき、今年3月に東京地裁が「名誉毀損」とした判決につき、学研経営と宮原社長は控訴し、控訴審が7月3日に東京高裁で開廷しました。
 10時30分から地裁・高裁前での情宣行動の後、法廷に臨みました。学研経営側から出されている控訴理由書に対して組合側はこれらの主張を批判する控訴答弁書を提出しました。以下に、その主な内容を掲載します。
組合側<控訴答弁書> 学研の控訴理由書批判
1 原判決の正当性
 「本件発言は、一般の聞き手に対し、原告労組が、争議を通じて被告会社に不当に金 銭を要求し、その要求額が3億円という法外な金額であるかのような印象を与えるも ので、これにより東京ふじせの業務再開等を求め、金銭解決を固辞してきた原告労組 の社会的評価を低下させるものと認められる」「本件発言は、被告宮原が他の株主に 対し被告会社の強硬な姿勢を誇示することを目的に殊更虚偽の事実を摘示したものと 読み取れるから、悪質というべきである」等の原判決の判示は、長年にわたる学研・ ふじせ争議の経過を踏まえた極めて正当なものであり、関係各証拠と矛盾する点は一切ない。
2 本件控訴には一切理由はないこと
⑴ 控訴理由書第2・1(3頁)について
ア 原判決で認定されている東京ふじせ企画が控訴人学研の労務政策により設立されたことは85年損賠判決でも明確に認定されているが、これが事実でないとして批判する控訴人宮原と学研の主張は、これが事実か否かという問題に関連する「前提事実」への言及で、本件の争点1(被告宮原の本件発言により原告らの社会的評価が低下したか否か)とは関連せず、争点1の結論が左右されるものではない。
 イ 被告黒川は、被告工藤に対し、東京ふじせ企画から被告学研の編集業務を引き上げることにして、ショック療法をやろうと申し向けた。被告工藤は、組合が結成されたのでは被告学研の仕事を円滑に処理することができず、従前通り被告学研の業務を続けてゆくためには当面被告黒川のいうショック療法を受け入れることもやむなしと考え、被告黒川に対し、被告ふじせ企画の方から業務返上という形にする旨返事した」(83~84頁)、等々の85年の損賠判決でも認定されている事実への原判決の認定を、控訴人宮原と学研は否定しているが、これらも控訴人学研が編集業務をふじせ企画及び東京ふじせから引き上げたか否かという問題に関連する「前提事実」にすぎず、直接、争点1と関連を有するものではない。
 ⑵ 控訴理由第2・2(5頁)について
  ア 控訴人・宮原、学研は、「私たちは学研による労働者の生活破壊に対し、雇用と業務を保証する形で回復させるよう求めているものです」と述べるのは、被控訴人が控訴人学研に対して金銭解決を求める意味を有することが明らかである旨主張する。組合のこの要求が、宮原宛の 「団体交渉申入書」(甲15、2011年11月26日付け)に記載されていることを原判決が引用しているが、この記述を金銭解決の要求との趣旨に読み取ることなど不可能である。被控訴人が、控訴人らが主張するように、控訴人学研に対して金銭解決の要求をしたのであれば、その旨明確に記載しているはずであり、そのような記載は一切ない。
  イ 控訴人らは、控訴人学研の側から、金銭解決の提案をしたとの事実はない」と主張する。しかしながら、1985年3月13日に行われた代理人間での和解協議の場では、控訴人学研側から「会社もふじせ争議の解決を考えている。金銭解決でなら話し合ってもよい」と提案した(甲6)。同年10月28日に都労委で行われた和解協議の場でも、控訴人学研側は「社長とも相談してきたが、現段階では業務再開はむずかしい。なんとか金銭で解決を」と提案してきた(甲7)。同年11月29日の都労委での和解協議では、控訴人学研側から「なんとか金銭での解決を」と提案してきた(甲8、9)。1988年10月11日の仮処分命令申立事件における和解協議の場でも、控訴人学研は金銭解決の提案を行った(甲10、11)。1990年2月1日の中労委での和解協議の場でも、控訴人学研は「組合の要求する業務と雇用保障など全く考えていない」(甲12)、「組合側で新会社を起こすなら開設資金の一部援助くらいはしてもよい」と金銭解決の提案をした(甲13)。
 このように、控訴人学研は、被控訴人に対して、繰り返し金銭解決の提案をしてきたが、被控訴人はこれを一貫して「固辞」してきたのである。
  ウ 2015年の時点で存在しない東京ふじせでの就業の実現可能性が皆無であることは明らかであることから、「いまだに東京ふじせ企画での就業を求めている者」などいるはずはないし、そもそも被控訴人が控訴人学研での就業を要求したこと自体一度もなく、合理的な解釈としては「すでに編集業務を行う職場で就業することをもう求めていない人もおり、そのような人は就業以外の方法での解決、すなわち金銭解決を求めている」としか解釈の余地はない旨、控訴人は主張する。
    しかしながら、このような控訴人らの解釈こそ著しく不合理であるというほか
   ない。・・・「いまだに東京ふじせでの就業を求めている者」がいたとしても、それが金銭解決要求を意味するものとはならない。事実、繰り返して論ずるが、控訴人や國分、あるいは支援共は一度たりとも金銭解決要求に触れたことはないのである。
  エ 控訴人らは、被控訴人が控訴人学研に対する不法行為責任を主張していることから、控訴人学研に対して金銭解決のみを要求しているものと理解せざるを得ない旨主張する。
    しかしながら、争議の相手方が不当労働行為責任を否定する場合、他の何らか   の法的責任を根拠に団体交渉を求めて争議活動を行うことはままあることであり、   不法行為責任を追及することは金銭解決要求とは必ずしもつながらない。
 ⑶ 控訴理由第2・3(8頁)について
  ア 控訴人らは、原判決が「控訴人宮原が知悉しながら」「殊更虚偽の事実を適示した」と認定したことについて、その根拠を一切挙げていないと論難する。そのうえで、被告宮原は、1986年に控訴人学研に入社、2009年に取締役に就任したことなどから、控訴人宮原が「知悉し」ていること自体あり得ない旨主張する。 控訴人宮原は、学研・ふじせ争議の労働委員会や行政訴訟の記録あるいは控訴人学研の株主総総会において控訴人が提出した「事前質問書」などに目を通しており、そこには一言も金銭解決の要求や「3億円」との具体的金額が記載されていないことを十分に「知悉」しつつ、あえて控訴人が被控訴人学研に対して「3億円」との具体的金額を要求している旨の事実を摘示したのであって、これを「悪質」と評した原判決の判示は説得力を有する。このことは、控訴人宮原の控訴人学研への入社時期や取締役就任時期とは関係のないことである。「3億円」との具体的金額は、2021年12月24日に開催された控訴人学研の第76回定時株主総会において初めて、控訴人宮原の口から出されたものであった。
 ⑷ 控訴理由第2・4(9頁)について
  ア 控訴人らは「被控訴人らが公権的に確定した内容に反して争議行為又は組合活動と称して正当な争議行為又は組合活動と認められ得ない行動を継続して行っていることは客観的な事実であり、『不当な争議行為又は組合活動を行っているかのような印象』を受けるとすれば、それはそのことが理由である」と主張する。
  しかしながら、本件で問題となっていることは、果たして、被控訴人が控訴人学研に対して3億円という「法外な金額を要求」(原判決11頁)するために「争議行為又は組合活動を行っているかのような印象」(原判決11頁)を与えるか否かであり、・・・控訴人らの主張は全くの筋違いである。
イ 控訴人らは「本件発言は、労働争議に対して一般的にある『金銭的解決を模索すべきではないか』との安易な意見に対するものとして、仮に金銭解決をする場合に要する金額の規模感を示し、控訴人学研としてそのような解決方法を全く考えていないことを示すものであり、金額を示すことで被控訴人の不当性を印象付けようとする意図などみじんもない」と主張する。この点の控訴人らの主張は何ら理由がなく、単なる後付けである。
 ⑸ 控訴理由第3・1(11頁)について (略)
3億円の算定根拠を、組合の要求とは無関係に計算して出すなどしていることにつき批判。
 ⑹ 控訴理由第3・2(13頁)について
ア 控訴人らは「本件において被控訴人が『金銭解決を固辞してきた』ことによって築き上げられた社会的評価(金銭解決を固辞する特別な考えを持った労働組合であるといった社会的評価)など存在しない」と主張する。 被控訴人は金銭解決を固辞してきたが、そのような事実を否定して、控訴人学研に3億円という「法外な金額を要求」しているものと摘示することは、社会評価の低下につながる。
イ 控訴人らは「事案発生から約45年、控訴人学研の使用者性を否定する司法判断の確定から約20年が経過し、またおそらく全員が控訴人学研の定年年齢(60歳)及び再雇用の終了年齢(65歳)を超えている状況になっているにもかかわらず…、いまだに雇用を求めて、金銭解決を固辞するということ自体がおよそ現実性を欠く要求であると言わざるを得ず、そのことによる社会的評価というもの自体がおよそ存在しないと言わざるを得ない」と主張する。
この控訴人らの主張も荒唐無稽の立論である。控訴人らによれば、被控訴人の社会的評価など一切ないことになる。しかし、このような考え方は、民法名誉棄損法理ではとられていない。あらゆる人格に社会的評価が存在することを前提に名誉棄損法理が築かれているのであり、控訴人らの主張は独自のものにすぎない。
ウ 控訴人らは「被控訴人は、法的根拠だけでなく、実現可能性さえも存在しないことに関して団体交渉に応じる義務のない相手方に団体交渉を求め続けている組織で、・・このような観点からも、本件発言により社会的評価が低下することなどあり得ない」と主張する。しかし、団交応諾義務の有無ではなく、3億円要求しているなどという虚偽の事実を摘示していることが名誉毀損に該当するのだ。
 ⑺ まとめ 以上、控訴人らの控訴理由には一切理由はない。棄却されるべきである。
高裁は、この日1回で結審し、判決は10月4日(水)午後1時30分となりました。