学研・ふじせ闘争 2022年10月28日号
東京ふじせ企画労働組合 ふじせ闘争支援共闘会議
「サクラ損賠」敗訴で焦る学研経営
「宮原損賠」で苦しい弁解を開陳!
昨年3月29日の「新新損賠」判決の批判記事を載せたことに対して、学研が「名誉毀損」などとして330万円の損賠金支払いとネット記事削除を請求する訴訟を仕掛けてきた「サクラ損賠」事件で、9月16日東京地裁が「原告請求をいずれも棄却する」との組合側勝利の判決を出したことは先月号で報告しました。
「判決批判の中で名誉毀損事実を再度摘示した」などという言いがかりの訴訟は容認されませんでしたが、学研経営は控訴してまだ不当な請求を続けようとしています。
10・12宮原損賠 学研側は混迷の準備書面を提出し宮原社長の虚偽答弁=「3億円」発言につき苦しい弁解
宮原社長が昨年12月の株主総会で「組合側に3億円を要求されている」との虚偽答弁を行ったことについて組合側が提訴した名誉毀損訴訟の第1回口頭弁論(8月30日)では、学研側は期日に出廷不可で欠席し、擬制陳述の「答弁書」(反論内容のない形だけのもの)を提出、10月12日の第2回口頭弁論での主張が注目されました。
会社側準備書面は主に以下のような内容でした。
「被告宮原が、原告労組が金銭要求をしているかのような発言をしたことは認める」、「被告宮原の発言は原告労組を対象とするものであって原告支援共闘を対象とするものではない。」「原告労組は被告学研に対して金銭要求を行っていることを認めており、原告らの主張は事実と異なる」「原告労組が3億円の要求を行っていたこを指摘しても原告労組の社会的評価が低下するものではない」「また被告宮原の発言は、原告支援共を対象とするものではなく、これによって原告支援共の社会的評価が低下することもない」「被告宮原の発言は、本件総会を含め、いずれも原告労組との間で金銭での解決をすることができないといった被告学研の方針を伝える前提としてのものである」
「一般に、相手方に対して不法行為責任等の何らかの責任がある旨を主張する者が、その補填措置として金銭要求を行うことはよくあることであるから、対象者が金銭要求した旨の事実の摘示は、対象者の社会的評価を低下させるものではない」「この点、原告労組は被告学研に対して労働争議責任を主張して団体交渉を要求しているが、一般に労働争議は、不当労働行為として解雇が行われた場合に解雇がなかったならば取得したであろう賃金を支払うこと(バックペイ)によって解決されるものである。・・・東京ふじせは既に存在しないことから現職復帰する会社がそもそも存在しない・・原告らの主張によっても、原告労組の組合員の地位確認をした上で原職に復帰させることは不可能であり、バックペイ(被告学研は東京ふじせの従業員に対して賃金を支払う立場にはなかったことから、厳密にはバックペイに相当する金銭の支払いということになろう。以下同じ。)によって解決するほかない。」「実際に原告労組の代表者・・は、平成27年8月27日に貴庁の公開の法廷において・・・東京ふじせの実質的経営者であった工藤英一氏が死亡した時点・・には、原告労組が被告学研に対してバックペイを要求するものであったことを明らかにしている」「以上から明らかなとおり、原告労組は実際に被告学研に対して権利行使としてバックペイを請求しているのだから、そのことを被告宮原が本件発言によって改めて指摘したとしても、原告労組の社会的評価が低下することはない。」
「次に、原告労組が要求している金額が3億円であるという事実も、原告労組の社会的評価を低下させることはない」「東京ふじせにおいて被告学研の業務に従事していた者らは34名であったとのことであるところ・・・それらの者の1ヶ月あたりの給与の合計額は469万0200円であり、・・社会保険料の合計額は44万3430円であった。・・年額6160万3560円・・・となり、わずか5年分のバックペイでも3億円を超過する。」「令和3年における全労働者の平均月額賃金が昭和52年のそれと比べて2.1倍超になっていることを踏まえて・・・これを前提とすれば過去3年分のバックペイであっても、3億円を超過する。」「このことからすれば、・・原告労組が被告学研に対して請求する額が3億円であることは、原告労組の主張を前提すれば、不相当に多額なものではなく、一般人からしても合理的に予想できる範疇である。」「したがって、原告労組が請求している金額が3億円であるという事実も、原告の社会的評価を低下させることはない」
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以上、学研側準備書面は、もっともらしく「事実」をこしらえた上で、主張を組み立てています。宮原社長が株主総会で「(組合に)3億円を要求されている」という全く事実に反する発言を株主に向けて行ったことに対して、本件名誉毀損訴訟は起こされています。それに対して、被告学研がおこなっているこの主張が破綻していることは一目瞭然です。これらの被告学研の主張への詳細な批判は、次回法廷期日に提出しますので、今日の段階では割愛します。
次回期日は、12月26日(月)11時30分から、と指定されています。
多くの証拠も示しながら、被告学研側のでたらめな居直り主張を覆していく予定です。
宮原社長は法廷に姿を見せていませんが、出てきて堂々とこんな主張を述べられるのでしょうか?
9・29学研社前行動を展開 敗訴判決受け宮原社長は逃亡
組合と支援共闘会議は、9月29日に学研社前行動を行い、「サクラ損賠」勝訴の件をはじめ、朝ビラ配布とマイクで訴え、抗議行動を打ち抜きました。行動のさなか、宮原学研社長を迎えに8時半過ぎに社を出たアルファード、いつもと違い一時間過ぎても戻らず。敗訴判決直後で組合側との接触をさけたかったようで、社長は行動終了後の10時過ぎに出社してきました。
↓9・29学研社前行動
↑厚労省労働政策審議会への申し入れ
解雇自由化を許さないぞ!
9・29労政審労働条件分科会への申入れを行う。
解雇の金銭解決制度審議をやめろ・法制化を許さない、と抗議!
先月号でも掲載しましたが、解雇自由化(金銭解決制度制定)の動きが続いています。
解雇の金銭解決制度の検討は、2018年6月より「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(法学者6名)で行われ、22年4月に「検討会」は報告書をだしました。その報告書をうけ、いま検討は厚労省労働政策審議会労働条件分科会に移っています。この報告書は制度の骨格を「無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭(以下「労働契約解消金」という)を支払い、当該支払いによって労働契約が終了する仕組み」としています。この報告書を受け4月27日より審議を開始した労政審労働条件分科会に対する私たちの「解雇の金銭解決制度に反対する申入れ」を9月29日に行いました。この日も月に1回ペースで行っている厚労省前でのビラを配布し、マイクで訴える抗議情宣行動を行ってからの申入れを行いました。
対応したのは労働基準局労働関係法課法規第一係の高沢氏一人。事前に提出していた「申入れ」で制度の骨格に対する私たちの批判について、見解が示されました(あくまでも高沢氏の個人的なものとのことでしたが)。
「@解雇自由化・リストラを促進し、これまでの解雇規制を解体するもの」との指摘に対しては「こういった話は聞いてもいるが解雇規制・解雇濫用法理は変わらない。解雇無効となっても会社に戻るのはイヤだという労働者がおり、お金をもらってやめるという選択肢として出す労働者救済制度の一つである」。「A労働組合の弱体・解体化を促進するもの」との指摘には「組合に話があって団交とか制度として選ぶかは労働者。地位確認訴訟に訴えればよい」。「B金銭支払いの申立権は使用者に拡大される可能性が高い」との危惧には「解雇無効では経営側申立の理由が法制度上無理」と回答。以下の申し入れに対する回答では「1)解雇の金銭解決制度について審議を中止し、法制化に向けた答申を行わないこと」には「審議はいつやるか明らかになっていない。労使の判断」。「2)貴分科会について、開催日については決定直後、直ちに公開し傍聴可能にすること、@開催案内の公開が開催日の直前であることの理由は?」には「案内が直前で申し訳ない。委員の人数が多く、資料を示さなければならず、かなりぎりぎりまで調整せざるをえないので」。「Aこれまでの(22年4月27日第173回から)分科会傍聴希望者人数と抽選の結果をしめされたい」に対しては、7回の実態について最小は14名、最大は59名だが会場の都合で抽選で48名とのこと。
以上の見解、回答に対して参加者から批判、意見が出されました。「会社に戻る気がない労働者がいると言うが、その実態調査は行っていないのではないか。解雇・排除を反省し、安心して復職できる環境をつくるのが雇用責任というものだ。使用者に金銭支払申立権はないとしているがこれまでの「小さく産んで大きく育てる」やり方からすれば拡大され、経営者はこの制度を活用して労働者を職場に戻さない結果になるのは明らか。労働委員会、裁判所では退職前提の和解を勧め、従わない労働者には敗訴命令や判決が多く出されるのが実態。パワハラを伴う解雇も多いがその経営の体質を不問にして職場はそのまま、労働者は金銭で追い出すような制度で良いのか、等々。短時間で不十分な申入れになったが、継続して申入れを行うことに高沢氏の了承を得て終了しました。
労働法制改悪阻止・職場闘争勝利!労働者連絡会
<学研・ふじせ闘争とは>
1977年12月、学研の下請編集プロダクション「東京ふじせ企画」に勤め、「○年の科学」「マイコーチ」などの編集業務を行っていた私たちが無給長時間残業・低賃金などの超劣悪な労働条件の改善のために組合を結成すると、わずか一週間後、学研は私たち35名に行わせていた業務の一切を引き上げ、会社を倒産させて全員の首を切りました。これ以前に本社では、全学研労組結成への14名の解雇・賃金差別、管理職らを総動員した吊し上げや集団暴行等で73年〜92年まで争議が続きました。結成直後から全学研労組員に仕事干しを行い、スト対策のために労組員から取り上げた業務を下請化した会社がふじせ企画でした。そこにも組合ができたことに学研経営が焦っての暴挙です。下請けの経営者も後に「組合潰しは学研の指揮・命令」と事実を明かしています。倒産後に東京ふじせ企画破産管財人が学研相手に起こした損害賠償訴訟では、 1985年に東京地裁が「組合を解散に追い込む目的で学研が業務を引き上げた」と争議責任を有する事実を認定、ふじせ労働者に直接管理・監督して雑誌・教材を制作してきた学研の実質的使用者実態も認める判決を出しました(経営同士の損賠は否定)。
学研経営が唯一、居直りの口実にしているのが、85年地裁判決と逆に学研の使用者性を認定しなかった87年の労働委員会の命令です(後に行政訴訟で確定)。「労働者派遣法」が85年に制定された流れで出されたものです。直接の雇用者と派遣先経営者を分離して、派遣先の使用者責任を免罪する悪法が親会社や派遣先の労働者使い捨てと今日の派遣切りを生み出しました。都労委不当命令は、組合潰しの業務引き上げ等の事実認定の中でも学研が主導した部分を意図的に削除し、下請経営者がやったことに書き換えて、「使用者でない学研が何をしたかは認定する必要がない」と言っているひどいものです。
使用者性の有無を差し措いても、学研が下請会社を倒産させた事実は明らかで、労働者を解雇状態に追い込み、生活を奪った争議責任は重大です。
争議解決のための話し合いを拒んで居直るばかりか、最近は組合のニュース記事に対して損害賠償訴訟を濫発し、組合員の自宅を差押える等の悪質な金の取り立てまでして争議責任追及の活動を潰そうとする学研経営の対応は許しがたいものです。