不当判決を批判したら、「名誉毀損」?!
学研経営からのまたも無理筋な損賠訴訟

「サクラ損賠」事件の第6回口頭弁論が5月9日にありました
 学研ココファン関連で第3次の損害賠償請求訴訟(「新新損賠」)で、昨年3月27に出された不当判決に対して、3月29日の組合ニュース(本紙)で判決の不当性につき批判を展開したところ、学研経営は、昨年7月に、このニュース記事も「名誉毀損事実を再度摘示したしたものだ」などとして、またも損賠訴訟を起こしてきました。「新新損賠」は、学研ココファンまちだ鶴川で起きた殺人事件についての学研の情報公開の姿勢に疑義を呈した福祉団体のブログ記事を引用して学研株主総会で質問書に掲載したこと、また学研の毎年の不当な総会運営の中で翼賛株主がふじせ株主を誹謗・中傷していることを批判したこと(いずれも組合ニュースに掲載しウェブサイトにも転載)、の2点を対象に1650万円の損賠訴訟をかけてきたものです。これを東京地裁松本真裁判長が容認し、とんでもない不当判決を出してきたのです。
 判決を批判する以上、「名誉毀損」とされた組合側の表現につき、裁判で何をどう争ってきたかを当然記載し、読者に説明する必要がありますが、学研側は、それが「名誉毀損事実の摘示」だなどと言っているのです。
 5月9日の口頭弁論では、学研側からの前回の準備書面への反論を提出しました。前訴の「新新損賠判決」への批判は名誉毀損事実の再提示などに当たらないことを再度述べた上に、数多くある名誉毀損訴訟でも、ふじせの組合ニュースのような非メディア型媒体やマスコミ記事の違い、また記事の読者、原告・被告間の対立状況等の実態、損害の程度等々で、名誉毀損該当性の判断基準が異なることを述べ、この日事例列挙が間に合わなかったいくつもの判例につき補充書面を提出することを述べました。
 次回期日は6月20日(月)15:00〜421号となりました。また、この日の法廷に先立ち、朝9時45分から10時40分まで裁判所前で抗議情宣を行い、多くの裁判所利用者・司法関係者に学研の争議責任と不当な訴訟攻撃(民事弾圧)の実態を知らせるチラシを受け取ってもらうことができました。
職場(福祉協会)ー争議(学研社前)を 貫き
4・26南部春季統一行動を打ち抜く!

 4月26日、地域の交流・共闘組織である南部地区労働者交流会は職場ー争議を貫く春季統一行動を展開しました。 
福祉協会前行動
 第一現場の日本知的障害者福祉協会(浜松町)では、都労委での和解決着後、初となる現場行動で、当日は全日の指名ストライキを打ち、現場行動を敢行しました。8時30分から
福祉協会事務局のあるKDX浜松町ビル正面と裏手の二手に分かれ、ビラを通勤途上の労働者や浜松町ビルで働く人々に配布しました。
 ビラ配布後、9時30分から集会を開始。当該組合員から経過報告、団交からの末吉事務局長の逃亡、労働委員会闘争での和解決着への経緯等、を報告しました。連帯挨拶は三多摩合同労組、ユニオン同愛会、全都実、連帯労組武蔵学園の仲間からいただき、南部労組から鈴木さん闘争の報告を行って、シュプレヒコールで締めくくりました。なお、この時間帯に末吉事務局長は出社を控えて逃亡、私たちが解散してから浜松町ビルに入って行きました。


     福祉協会前                         学研社前
学研社前行動

 第2現場は11時からの学研社前。設営などの後、11時30分からシュプレヒコールを上げ、社前集会を開始しました。ふじせ労組からの経過報告では、2013年から始まった学研の第2次民事弾圧は、エフィシモの学研株買収、遠藤前社長への解任要求などの混乱の末、同ファンドの撤退に伴う株の買い取り請求で、買い取り価格をめぐる裁判からM&A専門の現弁護士事務所が登場して、ふじせ闘争への連続訴訟攻撃を宮原新社長の下で展開してきたこと、その時期は新たな経営戦略・新規事業の柱としてココファン=高齢者福祉事業を展開し始めた中で、千葉市ココファンあすみが丘の居住者が待遇改善要求を無視する学研を許せず、ふじせ労組へ相談してきたというタイミングで、学研HD=持ち株会社化の足下から攻勢を展開するふじせ闘争を全力で潰しにかかり、それに裁判所が全面加担する形で民事弾圧と不当判決がくりかえされてきたことなどを、最近の新新損賠、その判決批判への新たな「さくら損賠」の悪質性につき、そこまでの流れと背景を報告し、治安法攻撃、侮辱罪罰則強化等の取り巻く状況下での重要な攻防局面を全力で闘う決意を述べました。
連帯挨拶は争議団連絡会議から大道測量闘争の行動禁圧攻撃・裁判闘争をはじめ、民事弾圧と闘う各争議の状況報告、中部労組東邦エンタプライズから、コロナを口実とした都労委の不当な傍聴制限との攻防、破防法・組対法に反対する共同行動から、刑法・警察法改悪をはじめ改憲・戦争・治安国家化との正念場の攻防、日韓民衆連帯委員会から刑事弾圧を打ち返して、日韓連帯を強化しながら闘うサンケン闘争の報告を受けました。超長期争議となったこの闘いの勝利をめざす決意表明をふじせ闘争支援共闘会議から受け、最後に南部交流会から統一行動のまとめの発言を受け、再度、圧倒的なシュプレヒコールをあげて終了しました。力強い統一行動を展開することができました。
民事訴訟法改悪(裁判の全面IT化、等)を許さない!
 法制審議会は、民事裁判の提訴から判決までの手続きを全面的にIT化する民事訴訟の改正要綱を答申し、3月8日改悪案が閣議決定され、3月23日から衆議院法務委員会で審議入りし、同委員会での実質的な審議は同年4月13日、15日、20日の僅か3日のみで4月21日に本会議で可決成立してしまいました。参議院も5月17日に通過、成立してしまいました。
 民事訴訟のIT化では、裁判所への持参か郵送が必要な訴状や準備書面について、オンラインでの提出を容認(弁護士など訴訟代理人は義務化)。さらに、e-courtと称して、口頭弁論や証人尋問、判決言い渡しなどで「ウェブ会議」形式を可能にするというものです。裁判所と弁護士事務所をインターネットで結ぶオンライン形式での裁判実施は、当事者、代理人らが一度も裁判所に赴くことなく手続きを行えるようにする、紙媒体で保管されている訴訟記録も原則電子化し、当事者らは裁判所のサーバーにアクセスして閲覧できるようにする(e-filing)、というものです。
 衆議院通過では、「ウェブ会議の方法による証人尋問等については、心証形成が法廷で対面して行われるものとは異なる場合もあることを踏まえ、裁判所における相当性の判断が適切に行われるよう法制度の趣旨について周知すること。」「口頭弁論等における当事者等のウェブ会議による参加については、当事者や証人へのなりすましを防止すること及び第三者からの不当な影響を排除すること並びにウェブ会議の録音・録画を防止することを確保できるよう努めること。」等の附帯決議がされていますが、民事訴訟法改悪の内容は変更なく維持されています。
討論会でも本法案の数多くの問題点が指摘される
 私たちは、4月4日には衆議院第2議員会館前で反対の情宣行動を行い、法務委員になっている議員の方の事務所への要請行動を行い、4月13日には、学習・討論会を山下幸夫弁護士を講師に迎えて開催しました。官邸の日本経済再生総合事務局で検討が開始され、未来投資戦略2018で裁判手続きIT化の推進が決定されて以降、今回に至る法案の狙い、官邸のプラン、民事裁判IT化の問題点、施行後に想定される運用の実態等につき、講演と質疑討論の場を持ちました。
 問題は多岐にわたりますが、核心的な問題として、「口頭弁論や証人尋問、判決言い渡しなどでウェブ会議形式を可能にする、というこの法案が通り全てがオンライン方式になれば、裁判では、法廷で証人の態度や表情の全てを把握できる訳にはいかなくなり、これまで裁判官が証人の態度等から心証をとっていたことが大きく転換することになる。これらは、直接主義、口頭主義、公開主義といった裁判の諸原則に反する。改正法上は必ずしも明確ではないが、傍聴は可能と言われているものの、それはパソコンの画面上のやりとりについての傍聴であり、これまでの法廷での尋問の傍聴とは質的に得られる情報が少なくなる。反対尋問等は極めて困難となり(これは既にビデオリンク方式による証人尋問でも指摘されている)、尋問による真実の追及が減殺される。国際的には既に法制化されている国もあるが、法廷で実施される場合と比較すると、証人や本人の信用性を評価する際の態度や様子などの身体的な状況が伝わりにくく、話の内容だけで評価されるようになるため、その信用性判断を誤る可能性が増えるとの指摘もされている。裁判IT化の進む韓国でも法廷オンライン化は例外的にしか行われていない。また、訴訟記録等をオンライン化することによるセキュリティの問題、情報流出の問題等がある。」などの指摘がありました。証人尋問等の法廷のイメージは、裁判官だけが在廷し、原告・被告側はそれぞれモニター画面でやり取りし、仮に「傍聴」席に入ることはできても、生の裁判ではなくモニターを視聴するもので、傍聴の意義は失われ、裁判への参加が無くなっていく、というものでした。
裁判期間6ヶ月への短縮制度で拙速審理強行も
また、今回の民訴法改定は、IT化だけでなく、「新たな」訴訟手続として,通常訴訟と並列的な訴訟制度(審理期間を6か月以内に限定する制度)を設けようとしています。現行の制度でさえ人証や証拠の申請が却下され拙速に不公正な判決が出される傾向が強まっていますが、この異常な裁判期間短縮制度で主張・立証の機会がさらに制限されます。十分な主張・立証を許さぬ拙速審理が横行すること必定です。この法定審理期間訴訟手続は,規定上,消費者契約事件と個別労働事件を除くが,それ以外の民事事件はすべて対象とされています。人々が等しく公正・適正、充実した裁判を受ける権利が侵害されるものです。IT化と共に裁判の「迅速化」「効率化」を唄う政府・財界の目論みが露わです。今国会での成立を弾劾し、ひき続き声をあげていきたいと考えます。2025年までに全面化という官邸の方針に対し、現場ー法廷を貫き、反対・抵抗を先々まで続けて息の長い攻防を展開していきます。
侮辱罪厳罰化は、批判的言論封じを狙っている
 今国会では政権の目論む治安法攻撃のラッシュとなっています。ネットでの誹謗・中傷で女子プロレスラーの木村花さんが自殺に追い込まれた事件を契機に、明治時代からある侮辱罪が厳罰化される法案が衆議院を通過し、成立させられようとしています。他人を侮辱すれば、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金となります。『拘留・科料』という軽犯罪だった侮辱罪が、本格的な犯罪になるということです。「名誉毀損」のように立件に一定厳格な要件が求められることもなく、何が侮辱にあたるのか、その基準は曖昧で、憲法の『表現の自由』を制限する非常に重要な問題となります。「安倍は独裁者だ」等の批判も、「悪口を言うと犯罪になるかもしれない」とみんなが考えてしまう萎縮効果も狙っているのです。
<職場で困ったら>
 地域で一人でも入れる合同労組=南部労組のリーフは大崎労政事務所や飯田橋の東京しごとセンターにも置いてあります。職場で困ったら、気軽に相談をお寄せください。
 Mail southwind@mbr.nifty.com  https://southwind.webnode.jp
<学研・ふじせ闘争とは>
1977年12月、学研の下請編集プロダクション「東京ふじせ企画」に勤め、「○年の科学」「マイコーチ」などの編集業務を行っていた私たちが無給長時間残業・低賃金などの超劣悪な労働条件の改善のために組合を結成すると、わずか一週間後、学研は私たち35名に行わせていた業務の一切を引き上げ、会社を倒産させて全員の首を切りました。これ以前に本社では、全学研労組結成への14名の解雇・賃金差別、管理職らを総動員した吊し上げや集団暴行等で73年〜92年まで争議が続きました。結成直後から全学研労組員に仕事干しを行い、スト対策のために労組員から取り上げた業務を下請化した会社がふじせ企画でした。そこにも組合ができたことに学研経営が焦っての暴挙です。下請けの経営者も後に「組合潰しは学研の指揮・命令」と事実を明かしています。倒産後に東京ふじせ企画破産管財人が学研相手に起こした損害賠償訴訟では、 1985年に東京地裁が「組合を解散に追い込む目的で学研が業務を引き上げた」と争議責任を有する事実を認定、東京じせ労働者に直接管理・監督して雑誌・教材を制作してきた学研の実質的使用者実態も認める判決を出しました(経営同士の損賠は否定)。
 学研経営が唯一、居直りの口実にしているのが、85年地裁判決と逆に学研の使用者性を認定しなかった87年の労働委員会の命令です(後に行政訴訟で確定)。「労働者派遣法」が85年に制定された流れで出されたものです。直接の雇用者と派遣先経営者を分離して、派遣先の使用者責任を免罪する悪法が親会社や派遣先の労働者使い捨てと今日の派遣切りを生み出しました。都労委不当命令は、組合潰しの業務引き上げ等の事実認定の中でも学研が主導した部分を意図的に削除し、下請経営者がやったことに書き換えて、「使用者でない学研が何をしたかは認定する必要がない」と言っているひどいものです。
 使用者性の有無を差し措いても、学研が下請会社を倒産させた事実は明らかで、労働者を解雇状態に追い込み、生活を奪った争議責任は重大です。
 争議解決のための話し合いを拒んで居直るばかりか、最近は組合のニュース記事に対して損害賠償訴訟を濫発し、組合員の自宅を差押える等の悪質な金の取り立てまでして争議責任追及の活動を潰そうとする学研経営の対応は許しがたいものです。