争議行為圧殺狙う学研経営の連続訴訟攻撃
低劣の度を増し敵意むき出しの裁判所判決も
公正らしさが完全に欠如

 下請労組潰しの倒産・解雇攻撃の責任を追及している学研・ふじせ闘争を潰そうと躍起になっている学研経営はこの10年間にわたって組合のニュース記事に対して「名誉毀損」を言い立てての執拗な損害賠償訴訟攻撃をくり返しています。いずれも不当な訴訟提起ですが、その内容が年々ひどくなっています。驚くのは裁判所も一体化してより低劣・悪質な判断を下していることです。現場で争議を闘う労組・争議団への敵意をむき出しにし、公正を欠いた判決を頻発させているのです。
これまで以上に粗悪だった「新新損賠」地裁判決(3/29)
手抜きの12・23高裁不当判決に対し、最高裁へ上告

 
昨年3月29日に東京地裁民事49部松本真裁判長が出した「新新損賠」(学研ココファン関連第3次訴訟)事件の判決は、裁判官の思考回路が完全に崩壊しているとしか言いようがないものでした。2018年末の株主総会当日に東京ふじせ企画労組が発刊して、株主総会参加者や学研労働者に配布した組合のニュース記事に記載した文章に対して、学研HDと学研ココファン経営が「名誉毀損」として1650万円の損賠金支払いとネット転載の同記事の削除を請求してきた「事件」の判決でした。
 この損賠攻撃は、@この年9月に起きた学研の高齢者施設=ココファンまちだ鶴川での殺人事件につき、福祉団体の理事がブログで記者会見も開かない等の学研の対応につき、論評している記事とこのブログへの書き込みを紹介し、株主総会で学研経営がこれに対するコメントを株主に向けて行うように質問書で求めたこと、および、A毎年の学研の株主総会運営を批判した記載の中で、翼賛的な株主の中でも際だってふじせ株主への悪質な質問妨害に当たる発言を行った株主を問題にした記載の2点を「名誉毀損」としてのものでした。なんで、これが名誉毀損になるのか、あり得ない全くの言いがかり訴訟でした。
書き込みがされているという事実の適示を、書き込みが事実であると適示したと曲解
 ところが、@につき3・29地裁判決は「本件ブログからの引用の形式を用いて、原告らの関係者が同殺人事件の犯人であるとの事実を摘示するものであり、また、・・・引用の形式を用いて、原告らが金銭の力で同殺人事件の真相を隠蔽しているとの事実を摘示するものと理解せざるを得ない」などと驚くような認定をしているのです。組合ニュースは、ブログに「学研のやつ犯人と違いますか?」「利益しか考えない学研ですから金で伏せているのでは」という書き込みがされている、という事実を指摘し、こういう風評がネット上にあることに対して、学研とココファンは対応する必要があることを促したものです。それを、この書き込みが事実であると適示した、と解釈することなど、この文脈にそって普通の読み方をすれば到底あり得ません。松本裁判官は、それをやってのけたのです。「訪問介護事業、サ高住の運営を主な事業としている原告ココファンの関係者が本件施設の入居者を殺害した上、この殺人事件に関する情報を隠蔽する目的で原告らが警察、報道機関等に金銭を交付しているとの印象を与えるものであるから、原告らの社会的評価を低下させるものであるということができる」との解釈まで付しているのにはさらにあきれます。組合への敵意と偏見がこんな歪んだ解釈を生んだのかと疑わざるを得ません。
今もネット上に残っている引用元のブログ記事
 ところで、このロングライフサポート協会代表のブログの記事と書き込みについては、未だにネットで視ることができます。学研側がこちらには訴訟はおろか抗議さえしていないことも組合はブログ主宰者の方に確認しています。本音では、「名誉毀損」などと文句を付けられないものと学研HDとココファン経営は考えているのです。
ふじせ株主を標的にした翼賛株主の発言
 Aについては、この株主の翼賛発言では、まず「昨年の株主総会から発言を3分に制限することとなり、会社の意気込みを感じましたので、私も発言をさせていただきます」と発言をしています。これまでの株主総会でも、ふじせ関係の株主らは、マイクの電源を切られたり、発言の途中で制止され、発言が最後までできなかったことが多々ありました。また、学研HD側の答弁も不誠実で、事実と異なる答弁も多々ありました。こういう状況でありながら、株主の発言時間を3分間に制限することは株主にとっては認めがたいことであるにもかかわらず、この株主は、この発言時間を3分に制限することに「会社の意気込みを感じた」と言い、続けて「毎年の株主総会の冒頭で発言される何人かのグループへの意見です。私はあなた方の発言を、学習研究社として東証第2部に上場して以来、大田区の会場から有明、そしてここ五反田と聞かされてきました。いつも株主総会の始まりで。いつも株主総会の始まりで、このグループが一斉に挙手をしまして、議長の指名を受けるという方法に嫌気がして、総会を3度ほど即退席した経験があります」と発言をしています。この株主が言うところの「グループ」とは、ふじせ関係株主であり、「嫌気がして」などと誹謗中傷をしています。加えて、大田区では株主総会は行われたことはなく、株主総会の会場は、現在の五反田の学研本社ビル、港区高輪のパシフィックホテル、品川区不動前の学研第3ビル、江東区有明のTOCビルでした。この株主が真実、株主総会に出席してきたか疑わしいものです。この株主は、引き続き「グループの発言は聞き飽きました。発言の内容は、古くは古岡さんという人への恨み言であり、あるいは裁判で負けたことへのこれまた恨み言であったり、最近では目的事項にも審議事項にもなっていない発言に終始しています。いずれも株主総会に相応しくない発言と私は考えています」と発言している。これも、誹謗中傷です。私たちは「恨み言」などを言ったことはありません。第2に、株主総会の目的事項にも審議事項にもなっていない事項について発言をしたことはありません。発言は、すべて株主総会の目的や審議事項に関係するものであり、事前に書面で質問をしています。また、株主総会会場における相手方学研HD側の答弁に対して再質問をしています。この株主は「いずれも株主総会に相応しくない発言」などとしていますが、これは私たちふじせ株主の発言を踏まえたものとはいい難いものです。
 翼賛株主の中でも、特にこのようなふじせ株主への誹謗・中傷のみを行った株主につき、組合ニュース記事で批判したことを学研側が名誉毀損としたものです。その果たしている役割から、表現したものです。
唯一の反対尋問で、学研経営はこの翼賛株主につき質問・防御
 この「新新損賠」事件では、支援労働者と当該組合員への証人・本人尋問が行われ、学研側の訴訟提起の不当性につき多岐にわたって証言がされ、内容的には圧勝でしたが、原告学研が唯一反対尋問で述べた質問が、この翼賛・忖度発言の株主について、証人らへ「この株主を覚えているか」「面識があるか」ということでした。判決は、「さくら株主」については、「証人らがその株主と面識がないことを認めている」ことなどを理由にして、「具体的な主張及び立証がされていない」として、この表現の妥当性を否定しています。しかし、逆に面識がある者であれば、私たちが指摘するような役割を担うことができなかったのであり、この認定も誤りでこじつけであることは明らかです。
12・23高裁判決、「名誉毀損」の認定に触れぬ手抜きぶり
 3・29不当判決を許さず控訴した「新新損賠」は10月12に第1回口頭弁論となり、私たちは有力な証人(元ジャパマー闘争当該)の申請と数々の株主総会闘争に関わった萩尾健太弁護士の秀逸な意見書を提出しましたが、高裁民事14部はこれらを無視、控訴審は1回で結審、12月23日判決(石井浩裁判長)は控訴棄却のわずか6頁のものでした。これについては既に「パルス」12月24日号で報告しました。
最高裁へ上告理由書、上告受理申立理由書提出へ
 不当判決を許さず、3月初めの上告期限までに私たちは上に述べた点を含めた判決批判の上告手続きを行っていきます。
第1 上告受理申立て理由の要旨
 申立人らは、原審判決が、相手方らが行った損害賠償請求について、憲法28条で保障された団結権を担保するために争議行為に民事免責を認めた労働組合法8条の解釈・適用を誤り、あるいは不法行為に対する損害賠償責任に関する民法709条の解釈・適用を誤り、あるいは経験則違反の判断を行って民事訴訟法247条の解釈適用を誤ることで、相手方の損害賠償請求を認めた原審の判断が「法令の解釈に関する重要な事項」を含んでいること、原審の判断は最高裁判所の判例に違反する判断を含んでいることを明らかにし、これが民事訴訟法318条1項に該当することをもって、本上告受理申立の理由とする。として、以下、第2 申立人らは民事上の責任を負わない〜労働組合法8条の解釈の問題、第3 名誉棄損の成否〜民法709条の解釈の問題、を柱に、主張を展開していきます。次号以降で追ってお知らせしていきます。
「サクラ損賠」次回口頭弁論は3月4日
 なお、「新新損賠」判決批判を掲載した昨年3月31日の組合ニュース記事に対して、この批判が「名誉毀損」などとしてさらに損賠請求訴訟が仕掛けられ、3月4日10時30分から421号法廷で次回の口頭弁論が開催されます。「さくら株主」規定をめぐる判決批判記事への訴訟攻撃だったので、「サクラ損賠」事件と名づけています。
学研社内・関連からの声
「抽選での人数削減株主総会、参加株主はみな学研社員」?!
昨年12月24日の株主総会は前年と同様にコロナ禍を理由に、約20人という極端な人数制限で開催され、株主の質問権を侵害する運営がされたことは1月28日号の組合ニュースでお知らせしました。これにつき、抽選で参加となっているが、参加株主はみな学研社員との情報が寄せられています。ふじせ労組当該のみが質問し、促されて他に1名が「学研の株価」につき質問していましたが、事前登録で積極的に応募したのに質問がない(去年も、ふじせ関連以外、質問はゼロ)のが不自然でした。事実は確かめようがありませんが、選ばれた20人からもっと質問がされてしかるべきではあります。
碇常務、コロナに感染
 碇常務がこの1月下旬にコロナに感染したとのことです。社内関係者との会食(宴席)からのもの、とか。「グループのSDGs責任者、リスク管理部会長など、木村専務の後任としてグループ内の規律や規制を発する総責任者である本人が、宴席で感染。こんな体たらくで、どう統率していくつもりなのか」との声が聞かれます。
互いに気を付けたい、誰もが感染し得るし、感染した人を責めたくはないですが、こいう立場の人の振る舞いであれば、言われてしまいますね。
<学研・ふじせ闘争とは>
1977年12月、学研の下請編集プロダクション「東京ふじせ企画」に勤め、「○年の科学」「マイコーチ」などの編集業務を行っていた私たちが無給長時間残業・低賃金などの超劣悪な労働条件の改善のために組合を結成すると、わずか一週間後、学研は私たち35名に行わせていた業務の一切を引き上げ、会社を倒産させて全員の首を切りました。これ以前に本社では、全学研労組結成への14名の解雇・賃金差別、管理職らを総動員した吊し上げや集団暴行等で73年〜92年まで争議が続きました。結成直後から労組員に仕事干しを行い、スト対策のために労組員から取り上げた業務を下請化した会社がふじせ企画で、そこに組合ができたことに焦っての暴挙です。下請けの経営者も後に「組合潰しは学研の指揮・命令」と事実を明かしています。1985年には東京地裁が「組合を解散に追い込む目的で学研が業務を引き上げた」との事実を認定、学研の実質的使用者実態も認める損害賠償判決を出しました。             学研経営が唯一、居直りの口実にしているのが、学研の使用者性を認定しなかった87年の労働委員会の命令です(後に行政訴訟で確定)。「労働者派遣法」が1985年に制定された流れで出されたものです。直接の雇用者と派遣先経営者を分離して、派遣先の使用者責任を免罪する悪法が親会社や派遣先の労働者使い捨てと今日の派遣切りを生み出しました。その流れで出された都労委不当命令は、組合潰しの業務引き上げ等の事実認定の中でも学研が主導した部分を意図的に削除し、下請経営者がやったことに書き換えて、「使用者でない学研が何をしたかは認定する必要がない」と言っているひどいものです。学研が下請会社を倒産させた事実は明らかで、労働者を解雇状態に追い込み、生活を奪った責任は重大です。
 争議解決のための話し合いを拒んで居直るばかりか、最近は組合のニュース記事に対して損害賠償訴訟を濫発し、争議責任追及の活動を潰そうとする学研経営の対応は許しがたいものです。