コロナ禍を口実に株主権を著しく制約 
  事前登録・抽選等で参加者を激減させ
      株主総会乗り切りを図る学研経営

 学研の株主総会は、多岐にわたる経営の問題点や争議責任につき質問を浴びる事態が長く続いていますが、学研経営は「ふじせ労組によって総会が毀損されている」(宮原社長の総会答弁)などとし、質問者のマイク電源切断、不誠実答弁、挙手していても発言させず質疑打ち切り等の不当な総会運営で居直ってきました。
 そして、本日の株主総会については、新型コロナ感染防止を口実として、事前登録申請等の手続きでの極端な参加規制、質問封じで乗り切りを図っています。
 私たちは「事前登録で各人が250文字程度でメール送信」と制約を余儀なくされた個別質問とは別に、本総会の実施について以下の「質問状」を学研経営に提起します。

                   質 問 状
株式会社学研ホールディングス
 代表取締役社長  宮原 博昭  殿
                                 学研ホールディングス株主  國分 眞一ほか
                                                    株主7名
 私たちは、株式会社学研ホールディングス第75回定時株主総会開催にあたって、貴社が株主の事前登録方式をもって総会参加者の選別を行ったことに関して、以下の質問を行います。今回の事前登録制は、新型コロナウイルス感染の防止を名目に経済産業省の指導に基づいて行われているものですが、運用において以下のように株主の権利を侵害ないし制約するところとなっている点について、説明と回答を求めるものです。この質問に対する回答は、本総会に出席した株主のみならず、全ての株主に対して告示することを求めます。コロナ禍を口実とした株主の権利侵害があってはなりません。

1、例年総会のために使用してきている貴社会議室の収容規模が何名であり、そして今年は感染予防のために、何名まで収容して開催することを予定しているのかが全く示されていない。因みに、東京都の公共施設では、コロナ対策として貸し出しに当たって通常の定員の半数での使用を条件としている。収容規模と今回の「定員」が何名なのかも示していないのは問題であり、明らかにされたい。
2、参加人数の制限を行うにあたり、メールでの事前登録を求め、定員を超えた場合、抽選を行う、としていて、実際に抽選が行われた模様である。しかし、この抽選方法に疑義を持たざるを得ない。
 1)全ての株主がネット環境を有しているわけではない。しかも、招集通知到着からわずか3日以内の申し込みを求めている。何故、郵送での申し込みを選択肢に加えなかったのか、1週間程度の期間を設け、郵送でも受け付けるべきではなかったのか。議決権行使はネットのみでなく、議決権行使書の郵送も可としているのだから、なおさらである。ネット環境がない株主は事前登録できず、総会出席の希望を事前に打ち砕かれたのである。経産省指針にもある「出席の機会を不公正に奪う」ものである。これにつき説明されたい。
 2)メールで事前登録を申請した私たちのうち、1名にしか出席表が届かなかった。ほんとうに「定員」を越えたのか。越えたとして、抽選は第三者が立ち会って公正に行われたのか不明である。
毎年総会が行われてきた貴社三階のホールは定員300名程で、主席者は150名~200名程であったと考える。このうち、前の席を占有している社員株主は、6~70名程であったが、今年は出席を自粛した株主も多く、社員株主も率先して辞退すれば、収容規模の半数に達しない数で、抽選などせずに開催できているのではないか?私たちは、毎回、争議のことを含め重要な経営事項につき積極的に質問を行っている株主である。そういう株主を選別・排除した疑いを持たざるを得ず、抽選など無かったか、あっても不公正に行われたのではないかと考えざるを得ない。
3、抽選により株主が出席できない、という事態はできる限り避けるべきであり、出席できなかった株主の権利をいかに保障するかを示すべきであり、また席に余裕があるなら質問事項を有し出席を求める株主は参加させるべきである。
そのような考えはないか、示されよ。何故ならば、経産省の指針は、株主総会への出席が得られなかった株主に、インターネット等で議決権を行使させる旨の代替案を示しているが、質問権の行使という重要な株主の権利の重要性について等閑に付しているといわざるを得ないからだ。当事者企業は、この指針に安住し、質問権を侵害してよいはずがない。貴社のこれまでの不当な総会運営の延長にこの態度がある。即ち、質問書に対する極めて不十分な答弁につき、質疑・応答を重ねることを許さぬ問答無用の態度である。メールで250字程度の質問を送れとするのみでは、総会での質疑・応答が保障されないことは言うまでもない。
8名のうち1名はネットが不調で、株主名簿管理人の三菱UFJ信託銀行の担当者と電話で話し、「当日、受付にお越しください。大丈夫です」と言われた。またもう1名はネット環境がないことを貴社窓口に説明し出席を求めた。これらを含め、当日、質疑・応答を願い出席を求める心ある株主に対しては、出席を認める柔軟な対応を行うことを要求したい。                               以 上

メールでの質問と事前通知書 これも紹介します。通知書は受け取りを拒否された。
1、回の株主総会の実施方法について(上の質問状の要約なので略)
2、総会運営について
 株主に信頼される公正な総会運営をめざす気はないのかを問いたい。貴社の株主総会運営は質問時間の3分制限、質問途中でのマイク電源の切断、不誠実な答弁で再質問をさせず打ち切る、挙手していても「ふじせ関係者ばかりで」などと指名しない、など正当な質問権行使を妨げ、不公正極まりない。さる12月7日、私は東京地裁民事49部でこれらの実態を証言したが、これに対する貴社の反対尋問は、殆どなく、現在の総会運営を正当化するものは何も示されていない。今回、さらにコロナを口実に事前登録、参加者の抽選、質問の制限等で不当な総会運営に拍車をかけようとしている。ましてや、この質問内容で総会出席を妨害することは許されない。
3、市販雑誌部門のリストラ、東京グローバルゲートウェイの赤字について
 リストラと一部赤字の実態につき貴社の責任を明らかにされたい。今年頭から市販雑誌部門のリストラが続き、7月に学研と日本創発グループが共同で「ワンパブリッシング」を設立し、主な雑誌(テレビライフ、キャパ、歴史群像など)がこの会社に売却された。代表に収まった広瀬社長は、旧パーゴルフ編集部の身売りでも社長となって転出し、ほとぼりが冷めた頃に学研に戻ったと聞く。100人以上いたはずの売却された雑誌部門の社員の人たちの処遇はどうなったのか?また、社長の織田氏が学研プラスに戻されたと聞くが、東京グローバルゲートウエイ(東京都英語村)の赤字の実態はどれほどか?存続の見通しはどうか?
4、学研ココファンの情報公開と介護労働者への雇用姿勢について 
 学研ココファンの情報公開と介護労働者への雇用姿勢を問う。ココファン鶴間で入居者1名がコロナに感染(4/29)、ココファン四谷でスタッフ1名が感染(5/1)し、本社でも社員家族の感染で本社フロアの一部閉鎖が起きたと聞く。しかし、学研HDのウェブサイトでは情報公開がされていないのは何故か。また、11月13日付の新聞報道などによると、「新型コロナによる雇用環境全般の悪化を受け、学研ココファンなど学研グループの介護関係2社は、コロナで失業した人などを対象に合計で1千人の緊急採用を打ち出した。」とある。コロナ禍の雇用情勢に対して貴社が救済的に受け皿を設けたというより、「緊急採用」と銘打って人手不足を補うものではないかとも取れる。業界全体での水準の低さに対して、貴社では介護労働者へ十分な労働条件を保障しているのか聞きたい。
5、東京ふじせ企画労組に対する会社倒産・全員解雇攻撃の責任について
 争議解決への貴社の方針の如何を問う。東京ふじせ企画破産管財人が提訴した損害賠償訴訟でも貴社が、東京ふじせ企画労組を解散に追い込む目的で業務を引き上げ、会社を倒産させたことが明確に認定されており、当時の全学研労組との争議時代から真相を知る大橋監査役も責任を認めた。長期間にわたり争議を抱えていることは重大な経営責任として問われることであり、総会の目的事項でないはずがない。都労委命令~最高裁までの行政訴訟の判決で貴社の東京ふじせ労働者への使用者性が否定されたことは争議責任を免罪する根拠にならない。

新新損賠裁判 12・7証人・本人尋問で学研を圧倒
 裁判所が損害賠償を認めたことは不当だが、一昨年末の新損賠控訴審判決、昨年4月の請求異議審判決と、学研の法外な請求が認められない判断が出され、組合弾圧に手詰まり感を抱いた学研は、昨年春また新たに今まで以上に無理筋の損賠訴訟に出てきました。 一昨年12月の学研の株主総会に対する質問書で、9月に学研ココファンまちだ鶴川で起きた殺人事件に対し記者会見も開かない学研の対応につき福祉団体=ロングライフサポート協会の理事長がブログで批判的に論評していることを引用し、これを掲載した組合ニュースではブログへの書き込みも紹介、また翼賛的な株主にふじせ株主を誹謗・中傷させている旨も指摘したことに対して、名誉毀損だとして計1650万円の損賠金支払いとネット記事の削除を請求してきたのです。
12・7争議責任を隠蔽し、悪質な総会運営続ける学研を丸裸にする証言
 コロナで口頭弁論期日も間が空いたが、12月7日に証人・本人尋問が行われました。原告の学研は証人申請なし、組合側が申請したMさん(元三一書房労組)、当該の國分被告(全学研労組のTさんは不当にも却下された)が証言を行いました。
 三角さんは、勝利した光文社闘争や中央公論社闘争などの出版労働運動への自らの関わり、学研・ふじせ闘争を支援しての経験、一時学研の監査役が争議責任を認めて非公式折衝を求めてきたこと、毎回学研の株主総会に参加して、特に現在の宮原社長になってからのふじせ株主への発言封じ、マイク電源を切る、挙手していても指名せずに総会を打ち切るなど運営の酷さが目立っていることなどを証言しました。國分被告は、ふじせのニュース発行の実態、ふじせ争議の責任と合わせ、毎年学研社内から寄せられる内部告発や情報提供に応えて、それらの経営責任事項を株主総会で質問していること、総会では例えば、自分を学研の社外監査役とする株主提案がされたり、大株主インデックスへの申入れで「学研への解決の働きかけ」が約束されたが、学研は答弁でその事実を否定、55歳定年制が社員に不評で廃止に追い込まれたが、それも会社答弁はごまかそうとしたこと、カネボウの粉飾決算で逮捕者を出し金融庁の処分を受けた中央青山監査法人に対し総会に付議せず監査依頼を続けようとしたことを追及したこと、ボランティア用語辞典の記述の6割が誤りで回収を余儀なくされた件の原因究明姿勢を示さない経営答弁を追及したこと、宮原社長がことあるごとにふじせ労組が金銭狙いの嫌がらせをしているゆすりたかり集団であるかのような印象づくりを狙った答弁をしていることとの攻防、資本も雇用関係もない映画会社東映に倒産攻撃の責任を取らせた争議の事例を当該労働者も株主になって紹介・質問したが、学研は聞く耳を全く持とうとしなかったこと、などを指摘しました。また、学研経営のビラ受け取り禁止の実態とこれを批判する労働者の告発のメールが寄せられたこと、やらせであることが明白な株主の総会でのふじせ株主への誹謗・中傷の言動、ココファンまちだ鶴川殺人事件に関して学研を批判したブログ主宰者の清原氏に確かめ、学研からはこの引用元へはなんの抗議も行われていないこと、こうした民事弾圧で学研が権利を濫用して悪質な金の取り立てを行っていること、学研の組合潰しを狙った倒産攻撃を詳細に認定した85年の損害賠償判決、等につき証言を行いました。
 二人の証言は学研側を圧倒、学研経営側は、ふじせ株主を中傷する株主につての認識を問う程度の質問だけで、殆ど反対尋問を行ないませんでした。

鈴木敏嗣さん没後一年にあたって
 12月5日でふじせ闘争支援共闘会議の鈴木敏嗣さんが亡くなって1年になります。今月号と1月号で、鈴木さんを偲ぶことばを掲載します。

焚火の空                           支援共Z
 猫が亡くなったことを知った多摩の友人から「多摩川で焚火をしませんか」とのお誘い。焚火という音(おん)が懐かしく、おそらく50年ぶりか。聖蹟桜ヶ丘の多摩川の河原で、夕方から夜にかけて男ふたりで飲みながらの焚火と相なった。
 彼が持ち込んだ袋いっぱいの木切れは全て燃え尽き、白赤色する熾火の何という美しさ。エネルギーはすべて空に舞い上がり、「エネルギー保存(不滅)の法則」という言葉が口を憑く。私の愛猫もまた形を変えて、この大空に満ちているんだと思うと涙が流れた。ふと鈴木さんの顔が浮かんだ。
 彼と焚火をしたかったなあ。相対性理論により質量もまたエネルギーの一形態だとすれば、世界はすべて不変のエネルギーで満たされている。人生とは、このエネルギーの「揺らぎ」でしかない。
 仏教研究の第一人者(探究者)だった鈴木さんに、「馬鹿だなあ」と白い髭の先で慰撫され、そして笑われながら、ゆっくりとそんな話がしてみたかったなあ。

神宮球場で                          河野通彦
お亡くなりになり一年が経って、はっきりと思い浮かぶ映像があります。その光景が、私に対する関心や興味の、ささやかな表し方だったのではと感じたりもしています。
旅立たれた年の4月8日、鈴木さんのお誘いで神宮球場の一塁側のヤクルトベンチ裏から、ヤクルトvs.阪神のナイターをふたりで観戦しました。阪神が5本のホームランで13対5と圧勝しました。乾いたさわやかな打球音と共に大山の打球がレフトスタンドに吸い込まれていく様子が鮮やかに瞼に浮かびます。季節には少し早い冷たい生ビールを飲みながら、ヤクルトファンの鈴木さんは、阪神のホームランに「また打たれた!」と冷静に悔しがっていました。
私が精神的な病で臥せっていた時にも他の方たちと一緒に神宮球場に誘い出してくださいました。周りを盛り上げるためにやや大袈裟な表現をしながらも、人の気持ちの機微に極めて敏感な方だったと思います。とても繊細な方でした。
年齢も大きく離れていて、社会的、政治的な課題に見識もなく、何事にも場当たり的な私を、鈴木さんがこよなく可愛がってくれたのだ、と身勝手に感謝しています。    
鈴木さんの亀                         ふじせ労組・國分 
 鈴木さんが亡くなって、夫人の禮子さんからいただいた遺品が2種類ある。一つは直筆原稿で、また次の機会に紹介するが、もう一つは彼が沢山集めていた小さな亀の置物で、支援共、南部、争議団の仲間らで分けた。何故、こんなに亀に愛着を感じていたのかと考えた。仏教に造詣の深い鈴木さんと亀を結びつけると、釈迦が弟子の阿難に語った「盲亀の浮木」という説話が浮かぶ。深海の底にいて腹が熱く甲羅が冷たい目の見えない亀が、甲羅を太陽の光で暖めようと広い海上に漂う真ん中に穴の空いた丸太めがけて100年に一度海面に顔を出す、「丸太の穴に亀が頭を入れることがあると思うか」と問われ、阿難は「そんなことはとても考えられません」と答える。「ところが阿難よ、私たちが人間に生まれることは、この亀が、丸太ん棒の穴に首を入れることが有るよりも、難しいことなのだ」と釈迦は言い、人として生まれることは有り難いことなんだよ」と教える。生命の奇跡、人との出逢いを大切に考えて鈴木さんは生きてきたと思える。昨年の株主総会で、宮原社長は、亡くなったばかりの鈴木さんの思いに触れて発言した株主の質問に対して、「鈴木さんは何回も会っている」「鈴木さんが亡くなったことを使って問題を拡げていくというやり方は、人間としておかしい」「鈴木さんは冥福できない」などと語って会場から憤激の声を浴びた。宮原社長は株主総会で鈴木さんに追及されはしたが、鈴木さんに一度も会ってなどいない。一度も向き合ったことがない。鈴木さんは宮原サンのような駄目な経営者でも、出会ったことから身をそらさず、諭すように質問を投げかけていた。器の違いというものを感じさせる鈴木さんであった。