PΛl s 2020年5月28日号
続くコロナウイルスパンデミック、学研経営の対応は
 前号で私たちはコロナで露わになっている社会状況に触れました。緊急事態宣言解除にあたり、安倍政権は「日本的モデルで、わずか2ヶ月で終熄をもたらした」などと愚かしい寝言を言っています。コロナ感染が小康状態になっているのは、ブラジルや米国等をのぞけば世界的な動きで夏を過ぎた第2波の到来は必至とされています。欧米と異なったアジア諸国の相対的数字には、ウイルスの性格、歴史的慣習、BCGの効能、その他諸説が語られ、日本のここまでの経過も情報公開の乏しさも相俟って「?」のままです。そして、自粛休業「要請」で払った多大な犠牲は社会・経済に深刻な結果を生じつつあり、政治家たちのパフォマンスに惑わされずに見れば、国政も東京都政も大阪府政も、新自由主義政策に走って医療費を削減してきたために、感染症の専門医をはじめ医師・看護師、設備・医療資材も不足していることが白日の下にさらされた事実、等々が顕著であり、次の大波が来たときには医療崩壊の危機は深刻になりかねず、自己責任論による労働者・民衆への犠牲強要、切り捨て雇用破壊がより激化することを許さず対峙せねばなりません。
 学研では、学研プラスの社員の家族が感染し、本社ビルの15階は閉鎖、同部署は在宅勤務に切り替えとなったのに続き、学研ココファン鶴間で入居者1名が感染(4/29)、ココファン四谷でデイサービススタッフ1名が感染(5/1)と聞いています。ココファンでの感染の事実は、ココファンのウェブサイトでは知らせていますが、学研HDのサイトでは触れていないようです。5月15日に発表された決算短信で、コロナの影響が学研教室などで生じたことが出ていますが、今後の展開(秋以降の第2波)次第で、上記のココファンなどのような介護・福祉や医療の現場は感染発生が深刻な事態になり兼ねないので細心の態勢が求められます。
非正規労働者への依存度が著しく増大した学研
 コロナ解雇が1万人を突破しています。倒産・失業・解雇が既に非正規・不安定雇用の労働者を中心に襲っています。「東洋経済」が今春も特集を組んだ「非正規社員への依存度が高い500社ランキング」では小売り、外食チェーン店などが多いのですが、学研HDが275位に入り、非正社員比率が63、3%、非正社員数が12、041人。従業員数は6、970人。5年前に比べ非従業員数が、なんと6、016人も増加になっているそうです。進学塾買収に続いて、ココファン拡大、介護・福祉関連企業買収をおこなってきた結果と考えられます。日本社会全体で増加した非正規の割合が40%近くですが、これを大きく上回っています。これらの学研グループの現場がどういう実態になっているか、コロナでどうなるか、見過ごさないようにしたいところです。東洋経済誌も「企業はどのように雇用を維持していくのか」と問うています。

               4・30学研社前行動
5・11新新損賠 裁判は延期

 学研経営は2013年から立て続けに私たちの組合ニュースの記事を「名誉毀損」などと称して損害賠償請求訴訟を仕掛けてきています。ココファンあすみが丘の居住者の方たちから相談が寄せられた施設の待遇・運営をめぐる件についての記載(1320万円損賠金支払い請求)、仙台の進学塾あすなろ学院の買収に端を発した東北ベストスタディの内紛についての記載(660万円の請求)への訴訟、ココファン損賠判決確定後にすぐに判決を履行しなかったので損害が発生したなどとしての新損賠訴訟(360万円)、またこの他に、ココファン損賠一審判決(仮執行付き)を受けての組合員の預金口座差し押さえ(33万円余の学研HD分債権による)、同判決確定後の組合員自宅への差し押さえ(66万円余の学研ココファン分債権による)、さらには「ネット記事削除の間接強制決定違反金1340万円発生した」との主張に基づく2度目の自宅差し押さえ等により悪質な金の取り立て攻撃も仕掛けてきました。
 いま焦点になっているのは、新新損賠事件(18年12月の組合ニュース記事への学研からの1650万円の損害賠償請求)ですが、5月11日に入っていた期日は、コロナで裁判所の民事事件が全面停止で延期になりました。
この裁判は株主総会の日に社前で配布したニュースで、この年の9月に起きたココファンまちだ鶴川での殺人事件に対する学研ココファンの姿勢につき、ロングライフサポート協会代表理事が10月8日付のブログで論評していることにつき学研HDの株主総会で回答を求めた質問書を掲載し、併せてブログ読者の書き込みを引用したものです。ブログでこうした指摘がされているが、学研経営はどう対応するのかを質したもので、ブログにも書き込みにも組合として論評を加えていません。にもかかわらず学研HDと学研ココファンは、名誉毀損などとして損害発生を主張して訴訟を起こしてきたのです。しかも、引用元のロングライフサポート協会のブログに対しては訴訟はおろか抗議さえ行っていないのです。12月21日の総会当日、学研経営陣は、この件でこの質問書に引用された非難(私たちはこれになんら同意の意思を表明していません)や、「9月にココファンまちだ鶴川で殺人事件が起きた。ココファンあすみが丘でも居住者から指摘された夜間の勤務態勢など、どうなっていたのか、居住者の方たちの受け止めはどうか、また貴社としての見解と対処方針を示されたい。」との私たちの質問に正面からまともな回答を全くしていません。
 この不当な訴訟攻撃では、もう一点、私たちの株主総会宛の質問書を掲載した組合ニュースの中で、学研経営の総会運営においても株主の質問権を侵害し、翼賛的株主にふじせ関係者株主への誹謗・中傷を行わせていることに触れた件についても、「○○○株主」との表現が名誉毀損だ、などとしています。
2019年7月の口頭弁論以降、この裁判で私たちは学研経営のこの訴訟攻撃の不当性を明らかにしてきました。
反論になっていない学研HD、ココファンの準備書面
 この4月30日には学研側の準備書面(3)が提出されました。これは前回3月16日までに組合側が提出した準備書面への反論です。
 これまでの学研HDの株主総会の内容、今回の事件の性格として「名誉毀損」の有無がどういう判断基準で争われるべきか、ということについての反論の主張ですが、読んでみて反論になっていないものです。詳細は法廷で主張していきますが、ここでは株主総会に関して少し触れます。学研経営がふじせ関係者の株主を敵視し、質問にまともに回答しない、挙手しても指名せず発言させない、質問を遮る、質問中にマイクの電源を切ってしまう等々の質問権の侵害を行ってきたことは明らかですが、準備書面(3)はそのような事実がないかのような苦しい詭弁と虚偽の主張をくり返しています。そうした会社のふじせ労組排除の意思とタイアップした翼賛株主の誹謗・中傷発言が前年の株主総会であった事実を2018年12月の組合ニュース記事で指摘したものです。揺るぎない事実ですが、この誹謗・中傷的発言を行った翼賛株主の果たしていた役割を指摘したことが「名誉毀損」などとされることの不当性は明らかです。
 この翼賛株主の発言が質疑・応答の冒頭にあり、ふじせ関係者株主が、学研・ふじせ争議に関し、これを「社の発展を願えばこそ解決すべき問題」「学研のこれからの健全な発展にとって、労働問題の解決が不可欠である」と発言したのを宮原社長が制し、マイクが切られる。社員株主から「もうやめろ」「長いぞ」などとの発言があり、宮原社長は「退場を命じることになりますよ」と発言を静止する。宮原社長は「それでは他の人。ふじせグループの挙手ばかりですから」と発言し、「ふじせ関係者」の株主を排除しようとする。そして、宮原社長は、原告学研HDの担当者から促されて挙手をした「ふじせ関係者」以外の株主を指名する。宮原社長は、株主が挙手をしているにもかかわらず、「そろそろ審議も尽くされていまいりましたので、あと2名の方でお願いします」と発言、その後、宮原社長は「ふじせ関係者」の株主4名ほどが挙手をしていたにかかわらず、その後に挙手をした別の株主を指名する(34項、35項)。株主4〜5名が挙手をしていたが、質疑が打ち切られ、約1時間で定時株主総会が終了する、という流れが形づくられていったのです。
 学研側準備書面(3)は株主総会の運営はいつも適正に行われていたなどと無理筋な主張をくり返していますが、全く通用しない主張です。
今回の新新損賠訴訟攻撃は全く不当で、こんな損害賠償請求が通るなどあり得ない、通るなら世も末だと言われても仕方がないものです。法廷ー現場で争っていきます。
4・30学研社前行動
4月30日、7時30分から学研社前行動を展開しました。緊急事態宣言が全国に拡大した後で、朝の出勤時間帯の人通りも少なめになっており、学研労働者も4割減くらいでしたが、朝ビラ(争議責任追及に自粛はないとコロナ状況を論じた組合ニュース)
を配布しました。いつもだと出社して来る小早川取締役(学研ココファンHD社長)も宮原社長も姿を見せませんでした。9時過ぎから座りこみ抗議行動に移り、マイクで社内と地域への訴えを行いました。周辺マンショなどに在宅の労働者も多くいたと思われ、
下請け倒産=全員解雇攻撃を仕掛けた学研との争議につき丁寧に説明、また緊急事態宣言発動を批判し、労働者の雇用と生存を守る自力の取り組みの必要性を訴えました。
 解雇自由化、裁量労働(ただ働き長時間労働)を進める厚労省検討会、民事執行法施行等を糾弾、改憲・治安国家化を許さない、学研の損害賠償攻撃等の民事弾圧を多くの仲間と共に打ち破っていく決意もアピールして、10時までの社前行動を打ち抜きました。

民事弾圧を許さない共同声明運動が始動。共に拡大へ!
韓国の仲間からも続々と賛同、日韓連帯集会実現を図ろう!
 今春から民事弾圧を許さない共同声明運動が、当事者団体、弁護士、有識者等の呼びかけにより本格的に始動している。
共同声明に対しては、全国各地の労組、住民運動団体、個人の他に韓国の民主労総傘下の各団体・個人からも沢山の賛同が寄せられている。
 争団連・間接強制対策会議では、元々、5月に昨年の日韓連帯集会・現場行動を引き継いで、また韓国の仲間を招いて集会を開催する予定だったが、コロナ状況で互いの往き来が不可能になっている。従って、これもスタイルを変えて、7月18日、東京での日韓連帯集会に韓国の仲間にネット接続で参加してもらい集会と、日本で未公開の「ユソン企業闘争の記録」上映会との2部構成を予定している。
集会参加、共同声明運動拡大を呼びかけ、民事弾圧を打ち破る社会的連帯・交流・共闘を強化していきたい。
7・18日韓労働者国際連帯の集いへ!
 昨年5月に韓国双竜自動車の仲間をはじめ民主労総の仲間を招き民事執行法反対の院内集会を開催、学研社前行動や裁判所抗議の現場を共にし、8月韓国訪問、9月韓国から再び来日で武蔵・明大・大道の現場行動を闘うなど日韓労働者国際連帯を活性化させてきたが、これを引き継ぎ、日韓連帯集会を開催する。
 7月18日(土)午後1時〜5時 日本キリスト教会館4F
1:00〜3:00 「ユソン企業闘争の記録」上映会 当該・監督の挨拶(ネット中継)
3:00〜5:00  日韓連帯集会  双竜自動車職場復帰等の闘いの近況と日本の民事弾圧の近況、コロナ状況での今後の闘い等につき交流
        主催:争議団連絡会議/日韓連帯民衆委員会
コロナショックドクトリン=監視・排外主義国家化
            改憲攻撃を許さない!

 
緊急事態宣言発動から改憲・緊急事態条項制定へと目論む安倍政権は、コロナ禍を奇貨として、ショックドクトリン=非常時・例外状態を拡大し、国家に緊急権を託させ権力の肥大化・監視社会化を恒常的に進めようとしてきました。
 検察庁法改悪を狙い(これは多くの反対で阻止)、高齢者を労働法の保護から外す高齢者雇用安定法の改悪、改正国家戦略特区法(「スーパーシティ構想」)をドサクサに紛れて成立させ、5・28の憲法審査会開会から国民投票法改正案の成立(改憲派の広告を金にまかせてふんだんに流せる等)に踏み込もうとしています。
これらの動きを許さず、4・19コロナに乗じたヘイトをやめろ!緊急アクション、5・1メーデー情宣、5・3改憲反対デモ(新宿アルタ前)、5・23改憲反対集会(日本キリスト教会館)等の行動が取り組まれ、多くの仲間が参加し声を上げました。

追悼 宇野勝実さん
 去る4月13日、東京南部労組のかけがえのない仲間であった宇野さんが急逝しました。死因は「虚血性心疾患」。昨年の夏から体調を崩し、3回の入退院を経て、3月末から自宅で介護ヘルパーさんを入れての生活を始めた矢先の出来事でした。
宇野さんが南部労組に入ったきっかけは、2004年に不動前の組織化情宣で地元住民だった彼がビラを受け取り、労働相談に来たことからでした。テック工業という埼玉にある電気設備会社で正社員化、労働条件改善、いじめ嫌がらせを跳ね返す職場闘争を展開しました。その後、07年工場偽装閉鎖、経営逃亡と事態が進み、08年逃亡先の経営に迫って謝罪と未払い賃金・解決金をかち取るという闘いを展開しました。解決後、宇野さんは自分の意思で南部労組に残りました、。共に闘った仲間といる場所が自分の生きる場だという確信でしょうか、その足取りは全都の沢山の争議現場に向かって行き、皆に親しみを持たれました。人を悪く言うことがなく、いつもマイペースで飄々とした態度が人々の心に強く残っています。学研・ふじせ闘争の現場でもビデオ撮影などで活躍してくれました。宇野さん、ありがとう!忘れません!