PΛl s 2019年7月18日号
6・27三井住友FG株主総会で情宣

 6月27日、三井住友フィナンシャルグループ株主総会が大手町の同銀行本店で開催され、私たちは情宣行動を展開しました。

 学研経営が、2016年2月のココファン損賠訴訟の仮執行付きの判決に便乗して、5月26に東京ふじせ企画労組の組合員の三井住友銀行の個人口座への差押えを行い、6月13日に、学研HD分の38万4950円(33万円+遅延損害金+執行費用)の取り立てが行われました。以降、三井住友銀行が個人口座の所在を学研経営側に明かしたことにつき抗議、これまでのメインバンクとしての争議解決働きかけ要求に加えて、
重大な責任追及を毎年の株主総会での抗議や「間接要請・損賠攻撃に反対する全国集会」に続く結集行動などでの抗議・申入れとして本店への行動を展開してきました。 争議責任を居直り、私たちの組合ニュース記事に対して「名誉毀損」などと言い立てて不当な損害賠償訴訟を仕掛け、嫌がらせの差し押さえ=強制執行攻撃で悪質な金の取り立てを行っている学研経営に加担した三井住友銀行の責任につき広く訴え抗議する闘いを展開しました。
 今年も、預金者の口座を開示してしまったことへの糾弾は株主の関心を惹き、通行人と合わせて多くの人々にビラを受け取ってもらうことができました。
7・3「新新損賠」 口頭弁論で
   学研の不当な訴訟攻撃を批判

 「パルス」3月号でお知らせしましたが、昨年12月の株主総会時に配布した組合のニュース記事でココファンまちだ鶴川での殺人事件に関する質問書掲載と総会運営批判に過剰な反応をした学研経営が、今年2月にココファン関連だけで3度目になる不当な損害賠償(1650万円)とネット記事の削除を請求する訴訟を仕掛けてきた事件の口頭弁論が7月3日に東京地裁民事49分で開かれ、私たち組合側はこの訴訟提起の不当性につき準備書面での主張を提出しました。以下、その主な点をお知らせします。

1、本件訴訟は訴権の濫用に該当し、訴えは却下されなければならない。
「訴えが、もっぱら相手方当事者を被告の立場に置き、審理に対応することを余儀なくさせることにより、訴訟上又は訴訟外において相手方当事者を困惑させることを目的とし、あるいは訴訟が係属、審理されていること自体を社会的に誇示することにより、相手方当事者に対して有形・無形の不利益・負担若しくは打撃を与えることを目的として提起されたものであり、右訴訟を維持することが前記民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き、信義に反すると認められた場合には、当該訴えの提起は、訴権を濫用する不適法なものとして、却下を免れない」とされている。
本件情宣のような批判的言論活動に対する訴え提起も訴権濫用の一類型である。さら
に本件情宣活動は、ふじせ労組及びふじせ支援共が争議行為・組合活動の一環としておこなったものであり、被告國分らが個人として行ったものではない。責任の帰属主体は被告労組及び被告支援共であり、原告らが、被告労組及び被告支援共のほかに、被告國分ら個人に対しても訴えを提起したことは、上記の東京高裁判決の判示した「もっぱら相手方当事者を被告の立場に置き、審理に対応することを余儀なくさせる」、「著しく相当性を欠き、信義に反すると認められた場合」に該当する訴権の濫用で却下対象になる。
第2 請求の原因に対する認否・反論
 被告らは、原告学研HDに対して「長年にわたり、数々の嫌がらせ行為を継続的に行ってきた」という事実はない。被告労組及び被告支援共の活動は、正当な争議行為ないし組合活動であり、「嫌がらせ」などと評価することはできない。
 被告らは、「虚偽の事実」を前提としたことはなく、原告学研HDらを誹謗中傷したこともない。また、被告國分らの株主総会での発言は、「株主総会の目的事項と何ら関係ない」ものではないし、団体交渉の点のみの発言ではない。被告國分らは「ヤジ」と評価されるような発言もしたことはない。
また、原告学研HDらの「社会的評価が低下」「事業に大きな悪影響が生じている」という事態も発生していない。
原告らは「被告らは、最高裁判所まで争って自らの敗訴判決が確定したにもかかわらず、上記@事件(ココファン損賠)の判決主文に記載の削除義務を任意に履行せず」と主張するが、被告労組及び被告支援共が削除義務の何時履行するかについては、それこそ「任意」である。ちなみに、B事件(ココファン新損賠)の控訴審判決は、原告らの請求認容額を大幅に減じている。このようにB事件につき、原告らが著しく過大な請求を行ったことこそ「嫌がらせ行為」というべきである。
第3 被告らの主張−名誉毀損は成立しない
 名誉毀損の成否の判断にあたっては、当該記事についての一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って、当該記事が人の人格的価値に対する客観的な社会的評価(社会的名誉)を低下させるものであるか否かを判断すべきであるとされている(最高裁1956年7月20日判決:民集10巻8号1059頁)。
 上記判例における「一般読者」とは抽象的な「一般読者」ではなく、原告学研HDと係争中の組合員をかかえる被告労組ないしその争議を支援する被告支援共が、本件ビラや本件ウェブサイトが経営の問題点を指摘するものであることを知り、そのような記事として、本件記載@(学研株主総会においてふじせ側株主を誹謗する翼賛的発言をした株主の存在に対する論評)に接する者と解すべきである。そのような読者にとっては、本件記載@を「普通の注意と読み方」をもって接したとしても、原告学研HDの社会的評価には何ら影響を与えるものではない。
本件記載A、Bで、一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事=清原晃氏のブログの記事に対して書き込みが匿名でされているものの一部を紹介している件について。
同ブログの2018年10月8日の記事は、「町田市高齢者住宅殺人事件の報道がなされないのは何故?」と題し、「東京都町田市の高齢者施設『ココファンまちだ鶴川』で、入居者の無職、関初枝さん(69)が9月21日に自室で殺害された事件が起きてから既に17日、もうまもなく20日になろうとしているのに、一切の報道がありません。・・・少なくともこのような事件が施設内で起きてしまった施設運営者である学研ココファンは記者会見を行うべきではないでしょうか。施設側のコメントも発表も全くないことの不自然さを感じます。」と記載されている。
学研経営の適切な対応を求めた総会宛質問書と当日配布ビラ
 この清原氏の記事に対して、匿名で、憶測を交えた学研ココファンに対する批判的な書き込みがされている。本件記載A、Bは、ブログの読者コメント欄に匿名人の感想として掲載されたものにすぎず、しかも、被告労組及び被告支援共らは「読者によるコメント」であることを明示している。そして、これら記載は、株主総会宛に提出した「通知書」で質問している点を掲載し、関連してブログのコメント欄の感想を紹介している。
「4、ココファンまちだ鶴川での殺人事件、サ高住の事故多発について
 昨年、サ高住で多発している事故につき、昨年も質したが、『事故は少ない』などとの答弁に終始した。昨年5月7日の朝日新聞朝刊の記事によると、安否確認が義務づけられたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で、2015年1月から1年半の間に、死亡や骨折など少なくとも3千件以上の事故が報告されている。そして、ここへ来て、9月にココファンまちだ鶴川で殺人事件が起きた。ココファンあすみが丘でも居住者から指摘された夜間の勤務態勢など、どうなっていたのか、居住者の方たちの受け止めはどうか、また貴社としての見解と対処方針を示されたい。
 医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事清原晃氏も10月8日付のブログで、『事件が起きてから既に17日、・・・(上記と同文)』と述べている(ここまで質問書)。これにつき、読者から『本当に言わないの不思議。・・・中略・・・』との非難の声もブログで掲載されています。」とビラで記載。
以上のように、株主として株主総会で質問権を行使する内容として、「サ高住での事故多発」という客観的な事実を前提として、「ココファンまちだ鶴川」で発生した殺人事件に対する原告らの事後的な対応に問題があるのではないかという指摘が行われている。問題があると指摘しているのは株主だけではなく、介護問題について発信をしているブログで取り上げられ、またその上で、ブログの読者から非難の声があがっているということを、「原告らが適切な対応をとらないと問題が拡大し、株主の利益を害しかねない」という観点からの質問をするため、事実として摘示したものであることは明らかである。
 組合側が摘示したのは、このようなコメントがブログに書き込まれて存在しているという事実であり、原告学研HDとココファンが「本件摘示事実」などと言いなしている
「原告らの従業員その他原告らの関係者が当該殺人事件の犯人であるとの事実」「原告が、警察若しくは報道機関又は原告の従業員ら等の当該殺人事件の詳細を知る者にたいして、金銭を公布し、その見返りとして、報道規制又は口止め等を行い、当該殺人事件の詳細についての情報を隠蔽しているとの事実」などではあり得ない。
 組合ニュースに対しては、このような曲解を行って、「引用という形を取って学研とココファンの社会的地位を低下させようとしたもの」というような主張を行っておきながら、原告らは、引用元の清原氏あるいはロングライフサポート協会に対して、ブログ上の記事の掲載について何らの抗議も行っていない。
ココファンまちだ鶴川などのサービス付き高齢者向け住宅運営は高齢者福祉事業の一環であって、広く国民の生活とりわけ高齢者の生活に関係することから、公共の利害に関する事実である。その運営に関して、上記ブログのような関心が寄せられ、問い質されていることに対して、株主総会で見解を表明し、施設の運営改善に活かしていくべき
であるとの意図に基づくニュースの記載は、目的の公益性も十分に認められる。
 また、本件記載A及びBを含む本件ビラ及び本件ウェブサイトの記載は、被告組合らが憲法上保障された団結権、団体行動権、争議権に基づき、本件争議解決の一環として行っているものである。本件各記載の公共性・公益目的については何ら問題はない。
 株主総会での翼賛発言
 2017年12月22日に行われた原告学研HDの定時株主総会で、冒頭、宮原社長は「質問は一人2問まで、3分をめどにしていただきたい。」と発言時間を制限し、株主Aが「毎年の株主総会の冒頭で発言される何人かのグループへの意見です。私はあなた方の発言を、学習研究社として東証第2部に上場して以来、大田区の会場から有明、そしてここ五反田と聞かされてきました。いつも株主総会の始まりで、このグループが一斉に挙手をしまして、議長の指名を受けるという方法に嫌気がして、総会を3度ほど即退席した経験があります。グループの発言は聞き飽きました。発言の内容は、古くは古岡さんという人への恨み言であり、あるいは裁判で負けたことへのこれまた恨み言であったり、最近では目的事項にも審議事項にもなっていない発言に終始しています。いずれも株主総会に相応しくない発言と私は考えています。私は学研HDの発展を願って株主となりました。何人かのグループの人が従来のようなやり方での発言を今回から差し控えていただきたい」と発言をした。この発言は明らかに「ふじせ関係者」を意識した発言であり、「ふじせ関係者」を「誹謗中傷」するものであった。これに対して、従業員株主が拍手をしている。
 そして株主Dが、学研・ふじせ争議に関し、これを「社の発展を願えばこそ解決すべき問題」「学研のこれからの健全な発展にとって、労働問題の解決が不可欠である」と発言したのを宮原社長が制し、マイクが切られる。社員株主から「もうやめろ」「長いぞ」などとの発言があり、宮原社長は「退場を命じることになりますよ」と発言を静止する。宮原社長は「それでは他の人。ふじせグループの挙手ばかりですから」と発言し、「ふじせ関係者」の株主を排除しようとする。そして、宮原社長は、原告学研HDの担当者から促されて挙手をした「ふじせ関係者」以外の株主を指名する。宮原社長は、株主が挙手をしているにもかかわらず、「そろそろ審議も尽くされていまいりましたので、あと2名の方でお願いします」と発言、その後、宮原社長は「ふじせ関係者」の株主4名ほどが挙手をしていたにかかわらず、その後に挙手をした別の株主を指名する(34項、35項)。株主4〜5名が挙手をしていたが、質疑が打ち切られ、約1時間で定時株主総会が終了する。
 以上、株主Aは原告学研HDの意向に従い、「ふじせ関係者」の株主に対する誹謗中傷を行っていること、宮原社長は被告労組及び被告支援共が「嫌がらせ」を行っている旨虚偽の発言をし、まともな回答をしようとしなかった。本件記載@−1は、これらを前提事実とする意見ないし論評(翼賛的株主の存在を指摘)である。前提事実は真実と認められることから、本件記載の違法性は阻却される。
 労働組合による情宣活動は、通常、組合活動・争議行為として行われ、憲法28条で保護される。その性格は「労働組合として団結権、団体交渉権が法的権利として保障されていることが認められ、その目的とする組合員の労働条件の維持、改善を図るために必要かつ相当な行為は、正当な組合活動として、不法行為に該当する場合でも、その違法性を阻却する」(東京地裁2007年3月16日判決:労働判例945号76頁)とされている。そして、正当性判断にあたっては、対抗的関係にある労使関係の実情や流動性、使用者に非難されるような事情(例えば、悪質な不当労働行為の存在など)などが十分に勘案されるとともに、労使紛争全体の中に位置付けて検討する必要がある。
 学研・ふじせ争議の実態について、ふじせ労組結成に直ちに学研が委託編集業務の組引き上げ、そして会社解散=全員解雇の攻撃を仕掛けた争議責任、並びに東京ふじせ企画の労働者が学研本社に派遣され、あるいは五反田事務所で学研の管理職の指揮・監督の下で業務を行ってきた経過=学研の使用者実態は1985年に破産管財人が学研を相手に提訴した損害賠償訴訟でも明確に認定されている。
被告東京ふじせ企画労組及び支援共闘会議の行った本件情宣活動(ビラ配布、ウェブサイト記事発信)は上記経過に即した正当な争議行為である。
 原告学研HDらの「損害発生」の主張も架空で虚偽である。