PΛl s 2019年5月14日号
4・22請求異議審判決

学研の法外な請求を認めず
間接強制違反金は160万円と認定
 学研がネット記事削除の間接強制決定違反金1340万円を言い立てて組合員自宅差し押さえ=強制競売攻撃を仕掛けてきたことに対して組合側が、2017年6月に起こした請求異議訴訟の一審判決が4月22日にありました。東京地裁7部、三木素子裁判長は4月の異動で地裁労働部に移ったため、新任の小川理津子裁判長が判決を代読しました。
 判決主文は、学研HDと学研ココファンに、各80万円の違反金支払いは認め、それを超える額は認めない判決でした。「学研HD申立の・・・間接強制決定に基づく強制執行は80万円を超える部分についてはこれを許さない」との表現(ココファンも同様)。
学研による間接強制制度の悪用は認定しなかったが
過酷な請求を行っていることは「権利の濫用」とした判決

 当日は判決文が印刷されておらず、主文のみ読み上げでした。私たちは「9日目に誤りのあった元になる一審損賠判決の更生を行った後、間接強制決定文の更正を学研は申請していますが、ネット記事の削除漏れに気が付いたこの時点で、組合側に告知すべきところを、知らせずに、以降、意図的に日数を稼いで67日分=1340万円を債権として自宅差し押さえを行ったことについて、間接強制制度の悪用だと主張してきました。 しかし、判決理由は、更正決定が出されるまでの27日分について、学研も記事特定を誤って間接強制を申請していたので請求の権利はない、としています。更生決定後の40日間については間接強制決定違反金発生は組合も認識できたことで責任がある。但し、記事に対する損害賠償金は既に支払われていること、4本の記事は削除済みで1本が削除漏れ、「競売申立ては原告國分の生活の本拠である自宅不動産を対象にしており、國分に及ぼす影響を総合考慮すると、本件間接強制決定に表示された請求権(各被告につき670万円)をそのまま、請求債権として強制執行することは、債権者である被告(学研HD)らを保護する必要性を考慮してもなお、債務者である原告らに対して過酷な結果をもたらすものであって、正当な権利行使とは言い難く、本件間接強制決定のうち、各被告につき80万円を超える部分の権利行使は、権利の濫用になると認めるのが相当である」との内容でした。
一部間接強制決定違反を認めたことは不当で、控訴
 以上のような認定で、40日×20万円×1/5の記事=160万円との算定にしたものでした。大幅減額したとはいえ、間接強制違反金を認めたのは不当です。
 組合が5本の記事のうち1本だけ削除漏れとなったことを招いた判決・決定の誤記につき、自分たち裁判所(地裁・高裁・最高裁・地裁民事21部)の責任は不問にしていますし、権利濫用の学研の請求は完全に無効と認めるべきである、と考え控訴しました。判決文での組合側の訴訟費用は1/8。学研経営側が7/8ですから、形式的には、 7:1で組合側に分がある判決でしたが、ひき続き敗訴部分につき争っていく予定です。
執行停止申立てを行う
 また仮執行付きの判決に対し、また学研経営が嫌がらせの組合員自宅差し押さえ等を行うことが想定されるため、執行停止の申立てを行いました。5月10日、東京高裁から執行停止が認められました。
「新損賠」の高裁判決に続き学研の法外な請求方式による訴訟攻撃は破綻へ 焦る学研経営の「新新損倍」 既にお知らせしているように、学研が2017年に起こした新たな損害賠償請求訴訟
では、弁護士費用95万円を主張していた学研の請求を容認した地裁判決が、昨年12月の高裁判決で覆り、法外な請求は容認されませんでした。そして、今回の請求異議審の判決でも同様の傾向となり、学研の法外請求方式での訴訟攻撃は破綻しつつあります。
 ここまでの現場ー法廷を貫く反撃の闘いで学研の民事手段を使った争議潰し・弾圧を一定押し返すことができました。過酷請求を招く間接強制制度の問題を扱った論文や判例を援用した準備書面も裁判所に迫る説得力を持ちました。
 そのような状況に陥りつつある学研経営ですが、苦し紛れの「新新損賠」請求訴訟を起こしてきていることは前号で報告しました。
本日、現場ー法廷を貫き
学研の民事弾圧への抗議行動を展開します

 
いま、争議・労働運動潰しの弾圧が強まっています。一つは関西生コン支部への刑事弾圧で、共謀罪の大衆運動への適用を見据えた攻撃となっています。同時に、近年非常にエスカレートしているのが、争議行為に対する経営側からの仮処分・間接強制・損害賠償請求攻撃等の民事弾圧です。不当解雇に抗議する労組・争議団の社前集会、経営者への団体交渉要求等の行為に対して、「営業妨害」「経営者の人格権侵害」等を主張して行動の差し止めを求める仮処分、仮処分決定に違反したらその都度金の支払いを命じる間接強制、さらに「業務妨害による損害」、組合のビラの内容や街頭宣伝活動に対しても「会社の名誉・信用毀損」等を言い立てての損害賠償請求訴訟を起こしてきています。そして、損賠金を債権として、組合員の預金口座を差し押さえ、さらに組合員の自宅不動産まで差し押さえる攻撃が仕掛けられてきているのです。

超巨額損害賠償請求等の民事弾圧と闘っている
             韓国労働運動の闘う仲間が来日

 
このような悪質な金の取り立てにまで至っている民事弾圧は、韓国の労働運動でもさらに過酷・熾烈に仕掛けられています。争議現場に機動隊を導入し、その費用まで加算して数十億円もの損害賠償金を組合員個人に請求し、自宅を差し押さえる等の攻撃が連続して仕掛けられています。こうした弾圧との激しい攻防を闘い抜いてきた大争議=双竜自動車の仲間、反弾圧の闘いを支援している市民団体=ソンチャッコの仲間、そして民主労総でGM争議等を手がけてきたキム・チャンゴン氏が来日しました。
 民事弾圧に対して闘う韓国・日本の争議団・労働組合同士の交流を深め、連帯して共に闘っていきたいと考えます。
争議・労働運動潰しの弾圧を打ち破れ!
民事弾圧の拡大、民事執行法改悪を許さない
5・14 日韓労働者国際連帯の集いと行動

@院内集会 「労働争議と民事執行法改訂」 
                  参議院会館=地下鉄「永田町」1番出口すぐ

5月14日(火)11:00〜13:30 参議院会館一階101号室
報告@キム・ドクチュンさん(金属労組双竜自動車支部・支部長)
「双竜自動車における損害賠償・仮差し押さえの実態とそれに対する闘いの現状」
報告Aユン・ジソンさん(市民団体「ソンチャッコ(手を取り合って)」幹事)
「韓国における損害賠償・仮差し押さえの実態とそれに対する闘いの現状」
※キム・チャンゴンさん(民主労総仁川本部・元本部長、韓国GM労組所属)は、夜の交流集会での発言を予定しています。
A日韓労働者交流集会
巨額損賠攻撃等、韓国労働運動への民事弾圧との攻防の実態につき詳しい報告を受けて、質疑・応答も交えた日本の争議・労働運動との交流を深めていきたいと考えます。
 18:00〜20:30 中野産業振興センター  (中野駅南口改札出て左へ線路添い250mファミマ手前右折)
B現場闘争&裁判所行動   現場行動も韓国の仲間と共に
8:00〜10:00 学研社前行動
昨秋、韓国を訪問した争団連ですが、 相次ぐ損賠攻撃、「間接強制決定違反金」1340万円を言い立てての自宅差し押さえ等と闘っている東京ふじせ企画労組の学研社前抗議行動を共に闘います。
14:30〜16:00 裁判所行動    地下鉄「霞ヶ関」A1出口すぐ
労働基本権を否定する不当判決、決定を濫発し民事弾圧に加担している裁判所への抗議行動を展開します。
<集会を含む5月14日終日の行動を争団連統一行動として闘います>
主催 争議団連絡会議
           千代田区神田猿楽町1−2−3−301 03(5577)6705
 間接強制・損害賠償攻撃に反対する署名運動
 協賛 日韓民衆連帯委員会

5・10民事執行法改悪案が可決成立
 5月10日、民事執行法改悪案が参議院本会議で可決・成立となりました。私たちは
以下のような視点から今次民事執行法改定の危険性を捉え、法制審議会段階から法務省に抗議・申入れをしてきました。残念ながら成立となってしまいましたが、今後の適用阻止、改悪部分の廃止を視野に、国会議員の皆さんにも働きかけ、予定どおり韓国の仲間たちと共に院内集会を開催します。
民事執行法改悪のポイント
今次改定案は、@債務者財産開示制度の強化、A暴力団の競売からの排除、Bシングルマザーの親権の保護という3つの柱で構成されており、メディア向けにはBの子どもの引き渡し(ハーグ条約)や養育費の取り立て確保、がキャンペーンとして行われてきましたが、一番の眼目は、@の債務者財産の開示で、裁判所の権限で行政機関や金融機関に照会行為を行うことができるようにして、債務者の預金、所得等の実態=個人情報を丸裸にして債権の取り立てを強化することにあります。 確かに債権者にも債務者にもいろいろあり、債権が法的に認められても取り立てが難しいケースがあることで、要請の声や立法事実もあるとされてきたのですが、債務者とされる人の多くが、消費者ローンや奨学金のローン返済に窮している経済的弱者であり、私たちのような悪質な民事弾圧で金を奪われようとしている労組・争議団もその中に入ります。 また、仮執行付きの一審判決段階でも、本人が財産開示義務に従わない場合に懲役刑まで課す、という認めがたい内容も含まれています。
 Aの「反社会的勢力の定義づけ」、Bの親権が片親にしか認められない戸籍制度との関係を前提にした「親権保護」等の問題もあるかと思いますが、@は、明らかに経済的弱者の生活・生存・プライバシーを侵害するものです。悪質金融がやってきた「追い込み」・取り立てを、大手企業・金融業者らが裁判所と一体になって強行する仕組みを作ろうとするものです(昨年10月4日の法制審最終報告では、給与債権への強制執行は債権者の生命・安全が脅かされている火急の事態に限る趣旨の修正がされていますが、このようなごく一部の修正で法案の本質は変わりません)。どう考えても問題がある法改悪で、強く弾劾するものです。
3・28入社式当日社前行動
 4・12学研社前座りこみ抗議行動を展開

 
学研HDは代理人名で、社前での「役員へのつきまとい、妨害行為」、旗・幟・横断幕の括り付け=「会社所有物の無断使用行為」を取りやめろ、との「通知書」を2月1日付で送付してきていましたが、組合・支援共は2・20社前に続き、3・28入社式当日の学研社前行動を朝から打ち抜きました。組合の抗議に供え、入社式遂行のため役員たちは早朝出社し社内に入っており、宮原社長の車も早くから出社。9時集合の新人たちへビラ配布、マイクでの訴えを行いました。3月20日に訴状が送達されてきた組合の昨年12月のニュース記事に対する1650万
円請求の不当な新新損賠攻撃に対しても、多くの仲間が結集し、共に怒りの声を上げました。
 4月12日には12時〜14時の座りこみ・抗議行動を打ち抜きました。


                      3・28学研本社前