悪質な学研経営の組合員自宅差し押さえを許さず
10・19請求異議審で間接強制適用の不当性証言
10月19日、裁判所の間接強制決定文の誤記から発生したネット記事の削除漏れを奇貨として学研経営が「(ネット記事削除の)間接強制決定違反」を言い立てて、1340万円の債権発生を理由として、ふじせ労組の組合員自宅を差し押さえてきたことに対して、組合側が起こした請求異議の訴訟で、証人尋問が行われました。証人は自宅差し押さえを受けた組合代表の國分氏。争団連統一行動、南部交流会集中闘争として、全都の争議団や南部地域を初めとした各地域共闘の仲間が傍聴席を埋め尽くして結集しました。以下、当日の証言を主尋問を中心に報告します(内容を一部、省略・割愛)。
争団連統一行動=武蔵学園理事長宅 請求異議審前に裁判所前で抗議行動
<主尋問>
●【甲31、甲35、甲37を示す】國分組合員の「陳述書」の内容について間違いがないことを確認。
●ホームページの作成・管理の方法、等 (略)
●ホームページ記事の削除
・【甲1を示す】この決定に従って、國分さんが本件記事の削除を行ったのはいつですか。
「2017年3月30日です」
・どうしてその時期に行ったのですか。
「間接強制決定の決定書が届いたので、当日すぐに行ないました。」
・判決の内容に納得はしていないと思いますが、記事を削除したのはなぜですか。
「ココファンあすみが丘の居住者の方たちの切実な声を削除するのは心が痛みました が、判決が確定しており、履行を強制するための間接強制決定も出ていたからです」
・2013年12月に仮処分で一部の記事の掲載差し止めることを命ずる決定が出てい ますが、これにも従っていますね。
「記事の削除を行っています」
・そのようにこれまでも対処してきたということですね。
「はい。」
・削除の作業をしたのは國分さんということですが、記事の削除は簡単に言うとどうい う方法でするのでしょうか。
「決定を見て、URLでファイルを特定し、そのページにある記事を削除しました」
・どうしてまずファイルを特定するような方法をとるんですか
単に記事を確認するだけでは漏れが生じたり、間違えたりする危険があるから。記事 は類似する表現もあり、どのページにある記載かをまず特定するのが当然でした。
(一部、略)
・【甲30の1を示す】これは何ですか。
「ネット側のサーバーであるFTP、ファイルトランスファープロトコルの画面です。
左側が組合の側のマイドキュメント、右側がネット側のサーバーです」
・【甲30の2を示す】名前がファイル名ですが、たとえばfj120926というのは何をさ しますか。
「2012年9月26日のビラ、ということです。」
・「更新日時」というのは何を示しますか。
「最後に更新した時を示し、ファイル名と近いものは掲載日ですが、2017年とな っているのが、削除作業してアップしたものです。」
・【甲1を示す】実際にはこの決定を見ながら、どんな手順で削除を行いましたか。
「@ホームページ作成ソフトを開く
A「FTPツールの起動」という操作を行いネット側のサーバーに接続する
Bサーバー側にある削除対象記事のあるファイルを削除する。
C決定の中のURLを見て、マイドキュメントのファイルから特定された表現を探し 出し、そこを伏せ字にする
D伏せ字にしたものを上書き保存した上で、サーバー側に転送する、というもので す。
・確認作業を進めて行く中で、同じURLが2つ出てくるということになったわけですね。 2つあることについてどう思いましたか
「重ねて指摘しているものと勘違いしました。別紙2に記載されている順序で各URL の頁を開き削除。ニュース発行日の時系列が逆 になっており、その後、別紙3の URLを見たので誤記と思わず、その頁を開いて削除済みだったので、重ねての指摘、 くらいに受け止めたように記憶しています。
・別紙2@と別紙3は記事が似ていますね。どうしてこういうことになっているのでし ょうか。
「別紙3の記事は、提訴を報告した記事なので自然と重なっています」
・記事が共通していたことも、別紙2@と別紙3が異なることに気付かなかった理由で しょうか。
「そうです」
●更正決定を受け取ったときの認識
・「更正決定」という言葉、本件で受け取るまで知っていましたか。
「聞いたこともなく知りませんでした」
・【甲3、甲4示す】URLが書いてあるだけですね。
「そうです」
・何かをしなければならないということが書かれていますか。
「書かれていません」
・受領した時、どう理解したのですか。
「単なる誤植の訂正と受け止めました。<更正>という言葉が<校正>と同じ読み方 なので、同じニュアンスで書き間違いの訂正だと思いました」
・本件間接強制決定や基本訴訟の判決を持ち出して確認するということはしましたか。
「いいえ」
・なぜですか。
「履行範囲が異なるというような効果が生じるとは全く思っていなかったからです」
・履行の範囲が異なるようになった場合にはどのような手続がとられると考えていたか
「裁判所において書記官、裁判官が確認するもの。判決の効力に係る裁判所としては ミスの許されない領域で、変更が生じるというようなことはそもそも想定していま せん。こういう問題になって、義務の範囲が変わるのだから、それを特定し知らせ るような新たな行為があるのが当然と思いました」
・本件においてはどういう意味だと考えましたか。
「既に削除してある記事についての単なるURLの記載のミスとしか思いませんでした」
・何かしなければならないことが生じるとは思っていなかったわけですね。
「考えていませんでした」
・更正決定が届いたことについて、代理人に相談しなかったのでしょうか。
「私はしなかったし、他に届いた鈴木さん、山田さんも、相談はしませんでした。
裁判所がこんな一片の紙切れで、義務の範囲を異ならせてくるようなことをするとは 全く思わなかったので、相談する必要があるとも思いませんでした」
・そして被告会社からも、たとえば「記事が抹消されていない」とか「ここを抹消しな いのか」など何の連絡もなかったのですね。
「全く連絡がありませんでした」
・一刻も早く記事を抹消してほしい、と考えたら、被告らはどうすべきだったと思いま すか。
「組合側代理人に連絡するなどして、抹消されていない記事があることを指摘すれば よかった、そうすればすぐに削除しました」
●2度目の削除について
・判決の範囲に間違いがあったことを知ったのはいつですか。
「2度目の強制競売開始決定が送られてきたときです」
・【甲5を示す】これですね。
・債権額を見て驚かれたでしょう。
「思い当たるところもなく驚きました」
・どこを見て、債権が間接強制金だということが分かったのですか
「1日あたり10万円というところです」
・そしてどうしましたか。
「ようやく更正決定が関係しているかもしれないと思いました」
・【甲30を示す】実際には記事の抹消を2017年6月24日に行っているようですが。
「その時に行いました」
・2度目の削除も1度目と同様の方法で行いましたか。
「はい」
・1度目の削除時に認識することができれば、全部まとめてやっていたはずですね。
「もちろんです。日々20万円が発生するとしたら大変ですし、それだけ残すことに 何の意味もありません」
・更正決定で判決での義務の内容が変更されてしまったわけですが、その点についてどう思いますか。
「地裁3人、高裁3人、最高裁5人、間接強制決定を出した裁判官1人、合計12人 の裁判官が見て、ミスに気づかなかった。こんなことがおこりうるとは思いもより ませんでした。そして、被害者と称する学研がそもそも気付かなかったのであり、 そのことによって私たちが巨額な請求を受けるのはおかしいと思います」
●自宅が競売にかけられることにより生じる不利益、損害
・前訴(ココファン損賠訴訟)の判決確定後、自宅に競売をかけてきて、今回2度目の 自宅の競売決定をしてきました。自宅が競売の対象になったことについてどう思いま すか。
「前訴の仮執行判決後に、銀行口座の差押えをしてきたことがあり、銀行口座がある ことなど承知していたはずなのに、あえて自宅を対象にしてきたものです」
・あえて自宅を対象にされたことによってどんな損害が生じましたか。
「不動産関係の会社の人たちが連日、次々と押しかけて任意売却の勧誘等を行い、対 応に追われました。事情を話し帰ってもらったが、学研のやり口の悪どさにあきれ ていました。執行官の住居への立ち入り調査が行われ、家族は不安に陥れられ、傷 つきました。学研の嫌がらせと感じ、腹立たしかったです」
・1日20万円。どのように思うか。
「1日20万円は、実際に生じる損害とはバランスを失していると考えるが、間接強 制金で作為義務を直ちに履行させるための高額になっている。履行されることを想 定しており、履行されなければすぐに執行を求めるか、あるいは新たに裁判所に働 きかけ間接強制金を引き上げるなどで、履行を迫るのが通常の方法ですが、学研の ように何日も放置してその期間の違反金を積み上げて取り立てようとするなどとい うのは、間接強制の適用の仕方として裁判所から見ても認められないのではないか と考えます」
●総括
・記事の削除を優先させていないことについてどう思いますか。
「被告は仮に損害あると言うのであれば、削除を求めればよかったと思います」
・被告らが基本事件について更正決定の申立てをしたのが2017年4月10日、本件強制競売申立が同年6月7日、2ヶ月経過してから申立てをしたことについてどう受け取っていますか。
「被告も10日間近く経ってから判決・決定の誤りに気づいたのだが、4月10日更 生決定の申請をする段階で組合にも知らせ、削除要求すべきだった。日数を稼ぎ、 間接強制違反金を増やして莫大な金額を請求しているものです。」
・そもそも基本事件の判決によって、今回の強制競売申立てに至ったわけですが、基本事件の判決についてどのように考えますか。
「学研が信用できると思って入ったら、実態はひどかった、としてココファンあすみが丘の入居者の方たちも相談を寄せてきました。改善させたいということで、その声をそのまま取り上げて、ずっとやってきました。
裁判所も、証拠で提出したような労組員に連日、暴行を振るっているような実態を大企業の学研に対してイメージしていないのかも知れないと感じました。そして反対に、小さな私たちの組合に予断と偏見に満ちた判決を出していると思わざるを得ません。使用者性の有無にかかわらず、倒産攻撃を仕掛けた争議責任というものは存在します。背景資本追及の労働運動の歴史も厳然としてある。学研の倒産攻撃の責任を追及する行為=争議権を「正当性なし」などと絶対に言えないのに、これを否定する予断と偏見にみちた判決が出された、と考えます」
<反対尋問>
学研側代理人からの反対尋問の中心は、「パルス」2013年6月25日号のネット記事が削除漏れとなった点について、この記事はかつて、ココファン損賠提訴に対して抗議し、損賠訴訟の対象になった以前の記事を引用して書いたことに触れ、それが追加提訴の対象になったことを考えれば、URLの記載の間違いがあっても、この日付の記事を削除漏れにすることはなかったのではないか、という趣旨のものでした。しかし、間接強制決定文に指定されたURLが全ての削除対象と考えれば、削除漏れは起きてしまう、というほかないことを、國分組合員は述べました。
請求異議の審理は、次回1月25日に結審期日が入りました。それまでに最終準備書面を提出することになります。その内容については、また「パルス」2019年1月号
等にて報告します。
11・1新損賠控訴審 一度で結審、判決は12月27日
6月25日に不当判決が出された新損賠の控訴審が11月1日に東京高裁で開かれました。「新損賠」については既にお知らせしているように「ココファン損賠の最高裁での確定後も組合が判決をすぐに履行しなかったために360万円の損害が発生した」などとして学研経営側が新たに起こしてきた訴訟ですが、民事28部担当裁判官からも、
「何をもって損害が発生する不法行為とするのか」等の疑義が示され、学研側も一部損賠請求を取り下げるほどの無理筋の訴訟攻撃でした。しかし、今春、判決直前に京都簡裁から異動してきた信夫絵里子裁判官が、「124万円の支払い」を命じる判決(そのうち弁護士費用が95万円という信じがたい判断)を出したために私たちが控訴していたものです。東京高裁、後藤博裁判長は、こtらの控訴理由書と学研側の答弁書で、双方の主張は出ており、事実関係に争いはないので、としてこの日で結審として、判決日を12月27日、11時〜(824号法廷)と指定しました。私たちは人証の申請を含め
まだ主張したいことがあることを述べましたが却下されました。最近の高裁はいつもこのように口頭弁論を殆ど行わず、実質的に審理を行ないません。「三審制」などというものは今の裁判の実態には存在しません。いずれにしても12・27判決に注目を!