6・25新損賠、極悪判決出される!

「124万円を支払え、うち弁護士費用95万円」!の認定
 6月25日、学研が昨年6月1日付で起こしてきた新たな損害賠償訴訟(「ココファン新損賠」)の判決が6月25日に出されました。これは、私たち組合側が、昨年2月に最高裁決定で確定した「ココファン損賠」の判決(学研HDと学研ココファンに計99万円の支払いとネット記事の削除を命じた。なお請求は1320万円)に直ちに従って金の支払いとネット記事の削除を行わなかった、として、そのためにネット記事の削除を求める間接強制、さらに組合員自宅への差し押さえ=強制競売をせざるを得なかった、として、
「損害の発生」を主張して起こしてきたものです。
 このかん、本紙でも報告してきたように、東京地裁民事28部は、学研側に対して「何を不法行為として損害を主張するのか」を再三問い質し、学研側代理人は返答に窮してしまう、ということが続き、予納金約60万を払って自宅差し押さえを行った際の戻らなかった分、約36万7千円の強制執行の費用請求等は取り下げざるを得ませんでした。しかし、「ネット記事の削除義務を果たさず掲載を継続したことによる損害が発生した」との主張は維持し、当初の360万円から317万8千円に減額しての損害賠償請求訴訟となりました。
京都簡裁から栄転の新任裁判官、いきなり学研経営に全面加担
 1年を経て判決日を迎えたわけですが、4月23日、突然、京都簡裁から異動してきた信夫絵里子裁判官に替わりました。緻密に学研の訴訟提起に疑義を呈していた前任裁判官とは変わった対応でした。6月25日の判決は、その不安が的中、信夫裁判官は、「被告らは、学研HDに対し、103万円、及びこれに対する平成29年6月23日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」「学研ココファンに対し、金21万円及びこれに対する平成29年6月23日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」
との不当判決を出してきました。そして、これら総計124万円のうち、学研側が主張していた間接強制手続きに要した弁護士費用88万円を認容する驚くべき不当な判断をしています。その他の弁護士費用を入れて95万円です。ネット記事の存続による損害は29万円、ということになります。
 元々のココファン損賠不当判決(2016年2月)でも、99万円の支払いを命じたうち、弁護士費用は9万円、仙台の東北ベストスタディ損賠不当判決でも、55万円のうち5万円でした。学研経営側は、間接強制は専門的な手続きが必要だから、などとして88万円の高額な報酬が支払われたとしています。私たちは債務者側から仮処分や間接強制の申立てに幾度も向き合ってきましたが、そんなことは全くありません。東京地裁保全部(9部)、執行担当の21部がいかに易々と機械的に経営の申立てを認めて、あっという間に決定を出すか、いやと言うほど経験してきました。88万円?冗談ではありません!
 もともと、弁護士費用を支払ったツケを訴訟相手に回すようなことは認められていませんが、違法行為に基づく損害賠償請求ではそれが例外的に認められています。であれば、損賠本訴の相場、10%基準に従うのが法律家の常識ではないか、と思いますが、信夫裁判官は、「(この)弁護士費用が不適切であると窺われるような事情はないから、88万円が本件不法行為と因果関係のある損害であると認められる」などとしています。度しがたい判断です。
ネット記事の存続による損害を不当に認定 
 今回の新損賠の請求は2017年6月1日付ですが、これらの請求の基準日は、ココファン損賠控訴審弁論終結の2016年6月15日とされています。私たちは、その後の9月の高裁判決を受けて、さらに上告して最高裁決定が出された2017年2月3日まで争い、その後、ネット記事については間接強制決定を受けて3月30日に削除、損害賠償金については不当な組合員自宅差し押さえ後の4月2日に弁済しました。
後者の自宅差し押さえに関わる学研側の損害の主張は、前任の裁判官の厳しい指摘を受けて、学研側は取り下げました。間接強制についての上記の法外な弁護士費用は論外ですが、ネット記事の存続自体による「損害」の主張は、どうでしょうか?
 私たちは「名誉毀損」の判決を受けた新聞・雑誌等の記事、図書について、判決時以降、新たに発刊され続けなくても、図書館等において残存した対象物が人々の耳目に触れるものであり、それを不法行為が継続するものと評価されるのは相当でないこと、現にそうしたことを見込んだ上で出されているのが損賠判決の実情である、ことを述べてきました。
 しかし、信夫裁判官は、図書等は第3者に閲読させる行為につき当該表現行為を行った者の行為は介在せず、その者にコントロールすることは不可能であるという意味で不法行為が継続しているとは評価できないが、ネット記事については、自ら管理し、掲載を続けている以上、不法行為自体が継続しているとみるべきである、としています。
 一見、もっともらしいことを言っていますが、裁判官も指摘している「名誉毀損に当たる表現の社会的な伝播の程度や影響力が損害の範囲、損害との因果関係として考慮される」のは、掲載者のコントロールを超えて、表現が拡散するネット記事も変わりません。むしろ、その点を考慮して損害の認定がされているはずであり、存続している当該ネット記事の態様、人々に直接伝播させるものになっているか等の実態に即して判断されるべきなのは当然です。そして、学研・ふじせ闘争のウエブサイトを見れば、対象記事は事実上「過去ログ」に格納されており、一般の閲覧者が新しく触れる機会は非常に少ないものです。新たな「損害」など発生しておらず、過去ログを検索するのは、損賠の係争事情も知っている労組関係者です。そして、記事の管理については、間接強制決定を受けた直後とは言え、最高裁での確定と原告の削除請求の通知から、さほど遠くない時期に削除を行っています。間接強制の決定文に誤記があったことからごく一部の削除漏れがありましたが、信夫裁判官が、切実な理由に基づく間接強制、と認定したとおりなら、削除漏れを67日間も放置して、決定違反金を積み上げて請求してくるような学研の対応は、あり得ないものであり、実態は損害など生じていなかったことを物語っているものです。
 信夫絵里子
 これは何でしょうか?判決文の最後に直筆(これはときどきありますが)で2センチ角ほどのデカ文字で墨書してありました。「ただいま売り出し中」ということでしょうか?こんなのは初めて見るめずらしい判決書でした。法廷で判決主文を読み上げ、「おかしいじゃないか」「分かっているのか」と抗議を浴びて、法廷から逃げるように退出して行った信夫絵里子裁判官でした。
6・17請求異議審
 6月17日、請求異議の口頭弁論が行われました。この日は、ふじせ労組執行委員長とふじせ闘争支援共闘会議の事務局長の陳述書を提出しました。併せて事前提出していた人証申請では、この両者と敵性証人とし申請した宮原学研社長(長い争議経過につき真摯に受け止めることなく、株主総会でも悪質な運営を行って組合敵視の姿勢を露わにしている)、五郎丸ココファン社長(学研HDと共に損害賠償訴訟攻撃を仕掛けて、あすみが丘の居住者の声を押しつぶし、組合の争議行為も圧殺しようと図った)につき裁判長が学研側代理人に意見を求めると、「いずれも必要なし、と考えます」との答え。間接強制決定違反を理由に1340万円もの債権を言い立てて、組合委員長自宅への第2次差し押さえを行っておきながら、十分な審理も行おうとしない学研経営の態度は許しがたいものです。
 次回、人証の採用につき、裁判所としての判断が出されます。次回期日は7月13日、
10時〜806号法廷での開廷です。
 組合委員長の陳述書では、「間接強制制度の趣旨は、金の取り立てが目的でなく、字義通りそれを間接的な圧力として、作為もしくは不作為義務を履行させることにあります。今回の学研側のやり方は、この趣旨を転倒させ、巨額な金の取り立てを行って当労組を潰そうと狙った極めて悪質なものであり、当労組は、請求の無効確認を求める本件訴訟を起こした次第です。学研と学研ココファンの間接強制悪用により生じた異常事態がこのような係争となり、前例を見ないものになっていると思います。
 当労組は、これまでも争議潰しを狙った学研の仮処分・間接強制の申請に向き合ってきました。当労組の争議行為の本質を正しく汲むことのない決定が出された場合でも、保全異議で争うなどしたものの、最終的に出された決定を無視したことはなく、上記の2013年の損賠本訴提起と並行して、同年12月に申請されたネット記事の主要部分に絞った仮処分決定とこれに基づく2014年2月の間接強制決定につても、これに従って、対象のネット記事の削除を履行してきています。削除漏れを知れば、間違いなく直ちにネット記事の削除を行っていたものです。裁判所におかれては、これらのことに目を向けた理路の整った公正な判断を下していただきたい」と前置きし、 1、争議の正当性について 2、学研の訴訟攻撃の悪質さについて、で詳しく述べています。
支援共闘会議代表と共に、人証申請を認めてもらいたいものです。また、宮原社長、そして、ココファンの五郎丸代表にも出てきて尋問を受けて欲しいです。
「働き方改革関連法案」の成立を糾弾するぞ!
 多くの人々の反対の声、「今国会で成立させる必要は無い」との声も押し切り、安倍政権は、財界の意向を汲んで、高度プロフェッショナル制度を初めとした「働き方改革関連法案」を6月29日参議院本会議でも強行可決し成立させました。
 私たちは労働法連絡会の仲間と共に連日の国会前行動を闘い、反対の声を上げてきました。29日朝は、NHKで過労死した佐戸未和・記者の母、佐戸恵美子さんが脇でインタビューを受ける中、共に抗議の声を上げました。

 今後、この悪法がただ働き・長時間労働の拡大(高プロの範囲拡大、新裁量労働制の設置・拡大等)を必然化するであろうことに現場で対決し、この法の撤廃を目指していきます。また、「解雇自由化」への動きが、再び検討会を持って進められようとしていることを許さず、厚労省前行動等を闘っていきます。

7・16 間接強制・損賠攻撃に反対する第6回全国集会へ
7月16日(月)18:30〜
 南部労政会館 第6集会室 (JR大崎駅南口改札から4分)
  <集会内容> 
   基調報告=集会実行委員会
    弁護団報告
    特別報告=宇都宮健児弁護士(「全国ヤミ金融・悪質金融対策会議」代表幹事)
    各地団体報告 全日建運輸連帯労組関西生コン支部
      明治公園オリンピック追い出しを許さない国賠訴訟原告団 
      東京ふじせ企画労組、連帯労組・大道測量、明大生協労組、ほか
 経営−裁判所一体の民事弾圧・争議潰しのエスカレートを許すな
争議・労働運動に対して、とりわけ現場で声を上げて、抗議集会、団交申し入れ、街頭宣伝活動等を展開している闘いに対して、民事弾圧が前面化しています。行動を禁圧する、多額の「損害賠償金」を取り立てる等により運動・組織を解体しようとしているのです。
これに全面的に加担する裁判所の不当判決・決定も目に余ります。
 昨年7月8日には第5回目の「間接強制・損賠攻撃に反対する全国集会」を、関西生コン支部、港合同をはじめとした多くの仲間の協力で、はじめて関西の地で成功させることができました。この成功を民事弾圧を許さないさらに強力な闘いにつなげていきましょう。
民事執行法改悪!経済的弱者を追い込む
             悪質な金の取り立て強化を許すな!

 こうした傾向に拍車をかける法改悪の面でも見過ごせない動向があります。法務省で、民事執行法の改悪が進められようとしているのです。昨年9月8日法制審民事執行法部会第11回会議で取りまとめられた「民事執行法の改正に関する中間試案」は、非常に問題のある内容です。罰則を強化(懲役刑まで検討)することによって債務者とされた人に財産の情報開示を強要する制度を強化すること等をうたい、また、裁判所権限で照会行為を行って債務者の預貯金などの実態を開示させ、また、保険の実施機関、自治体、税務署などから債務者の職場に関する情報を取得し、給与債権の差押えも確実に強行することなどが狙われているのです。今回の法改悪の真の狙いは、クレジット会社などの企業や金融機関を利するものでしかないことが明らかになってきています。このため、全国ヤミ金融・悪質金融対策会議の代表幹事で宇都宮健児弁護士や関東弁護士連合会(一部反対)、などが反対の声を挙げているのです。
既に一部銀行と弁護士会の協定に基づき、学研・ふじせ闘争では組合員の預金口座が差し押さえられ金の取り立てが行われていますが、この法改悪で争議責任を居直る経営と権限拡大を得た裁判所がさらに一体化し、民事弾圧が加速することになりかねません。
今回はこの民事執行法改悪反対を大きな柱の一つに据えて、全国集会を開催することにしています。民事弾圧粉砕・民事執行法改悪阻止へ、第6回「間接強制・損賠攻撃に反対する全国集会への参加、そして集会成功へ実行委員会への参加を呼びかけます。
(翌日=7月17日には裁判所・法務省抗議等の現場行動を予定しています)
主催:間接強制・損害賠償攻撃に反対する全国集会実行委員会
連絡先:東京都千代田区神田猿楽町1-2-3錦華堂ビル302 TEL/FAX 03-5577-6705