希望退職と異動で出版危機乗り切り図った経営陣
40人削減リストラで問われる学研問題体質
 学研経営は昨年9月決算での出版部門の12億円余の赤字を受けて、出版事業を縮小し、教育図書等への絞り込みを図るとし、その中で、昨期21名の増員となっていた同事業の従業員数463名のうち、40人の人員削減を発表していました。そして、その後も、10月〜12月の今第1四半期決算で出版事業では売上げ高が前年同期比12.9%減の56億3千3百万円、営業損益は前年同期比2億8千3百万円損失増の9億9千7百万円と続けての損失となり、ついに希望退職の募集を行うに至りました。株主総会で私たちが40人の人員削減の内容は、労働者を切り捨てにするのかを問い質した際に、異動によってまかなう旨の回答をしていたのですが、一部とはいえ、労働者を退職させる道を採ったのでした。
 「学研パブリッシングが展開する学研M文庫や歴史書、女性誌のムック本などは採算割れとなっており、3月末で廃止する。同時に10月1日をメドに学研教育出版、学研パブリッシング、学研マーケティングの3社を統合する、この3社と中間持ち株会社=学研出版ホールディングスの40歳以上の正社員を対象に希望退職を募集する」との発表が2月25日にされ、10人前後の希望退職を募集し、残り約30人については、学研ココファン等への配転とされたようです。退職を余儀なくされた労働者だけでなく、異職種への配転を迫られた労働者も断れば雇用は危うかったでしょうから、犠牲強要の攻撃に不本意で納得のいかない労働者が大半なのではないでしょうか?
宮原社長の暴言はリストラ=経営責任転嫁の口実づくり?
 昨秋赤字決算に対しての宮原社長の出版部門の労働者約500人に向かっての「あなた方年収800万が作った赤字をココファンや進学塾の年収300万が穴埋めしている。暴動が起きてもおかしくない状態だ」との経営責任を棚上げしての暴言は「社長の正体」と受け止められ、出版部門の労働者の反感を増大させました。この居直り発言を行いながら社長はココファン等への配転を準備していたのではないかと考えてしまいます。この流れは、出版部門にとどまらない学研労働者全体の経営陣への不信感につながるもので、今回のリストラの経過は経営の問題体質を浮き彫りにすることになったと言えるでしょう。
学研ココファンで「限定正社員」制度を導入
 「出版不況の中で経営陣が方向も示さず、責任もとらずに労働者にしわ寄せをする発言をして居直り、賃金格差を承知して買収・グループ企業化した労働者の相対的低賃金をだしに使うなど、信じがたい話です。」と私たちは批判の声を上げ、「格差ある現実を認めるなら、グループ会社労働者の低賃金使い捨てをせずに、賃金を上げてはどうか?」と問い質しました。
これに関して、ここへ来て「学研ココファン、契約社員を全て正社員に」との報道が3月21日にされました。4月から「引っ越しを伴う転勤がない地域限定の正社員制度を導入する。契約社員の雇用形態は廃止し、介護や保育の現場で働くすべての契約社員700人を正社員にする。対象者は月額5000円程度給料が上がる。正社員化を進めて人材を囲い込み、人手不足に対応する。」と書かれていました。ココファンは保育部門のナーサリーを含めて現在約3000人の従業員がおり、800人が正社員、700人がフルタイムの契約社員、1500人がパート・アルバイトだそうです。「4月からの介護報酬の改定により、非正規雇用も含め、介護職員は月額平均で1万2000円相当が賃上げされることに加え、学研ココファンでは契約社員から正社員になった介護職員はさらに5000円増え、月額平均1万7000円相当給料が上がる計算だ」としています。
 これは格差を改めて賃上げを図る、という姿勢なのでしょうか?そうならパート・アルバイトの賃金も上げるべきですが、実態は新聞の記事にもあるように人材の囲い込み確保が急務になっているということで、人出不足に悩むこの業界で大手の介護各社も既に正社員化を進めているとのことです。
解雇自由化・雇用流動化のための限定正社員制度
 学研ココファンが採用した「限定正社員」制度とは何でしょうか?「転勤がないなら安心して働ける」というようなものなのでしょうか?否です。いま、安倍政権は「雇用改悪」の一環として、仕事内容や勤務地、労働時間などが限定された正社員、いわゆる「限定正社員」を増やそうとしています。 勤務地・職務が消失したら解雇される限定正社員は既に全体の約30%にのぼっていますが、まだ解雇法理の適用を受けて保護されるケースもあります。それを解雇されても仕方がない者として制度化していこうとしているのが狙いです。契約社員も更新を巡る不安定な雇用が問題ですが、正社員にせずに限定正社員にするのは、正社員をできるだけ絞り込み、雇用の流動化フレキシブル化のための身分を限定した社員にする動向にそったものです。従って正社員を限定正社員に置き換える動きも進んでいるのです。ユニクロなど、グローバルブラック企業と言われる会社でも、囲い込みのための限定正社員化を打ち出していますが、過酷な労働実態と使い捨ては知られているところです。
 いずれにしても学研のどこの職場でも経営の労働者使い捨てを許さず、今回のリストラへの過程で顕著になった経営の問題体質を改めさせていかねばなりません。学研関連の皆さんと共に、私たちも闘っていくつもりです。
 職場で困ったこと、職場の情報、ご意見などをお寄せください
 最近、学研職場から情報が寄せられています。困ったこと、問題だと感じていること、ご意見などをお寄せください。匿名でも構いません。本紙タイトルのところにある住所への手紙・電話・ファクス・メールをお寄せください。
また、地域で共に活動している東京南部労組では、いつでも無料で労働相談を受け付けています。southwind@mbr.nifty.comへ、ご連絡を。

4・23学研ココファン損賠本訴
人証につき、被告3名、ココファン居住者Iさん、
元全学研労組Tさん、小早川ココファンHD社長などを申請

 学研の新規事業であるサービス付き高齢者住宅=学研ココファンあすみが丘(千葉市)の居住者の声を取り上げた私たちの本紙掲載の記事を名誉毀損として学研HDと学研ココファンが、1320万円の損害賠償請求と対象ビラの配布禁止・ウエブサイト記事の削除を求めた訴訟が2年を経過してヤマ場に入っています。
 ホールディングス体制に移行した学研の足下で、職場労働者や消費者と結んで経営の問題体質をあばきながら展開されてきている「ふじせ闘争」に焦りを深めた学研経営は、自ら仕掛けた下請け組合潰しの業務総引き上げ=倒産・解雇の争議責任を居直って責任追及の行動を潰そうとしています。またココファン居住者の声をも潰そうとしているものです。こんな悪質な狙いの下で仕掛けられた民事弾圧の訴訟攻撃を許すわけにはいきません。
 4月23日の口頭弁論では、ふじせ労組と支援共の代表として被告とされた3名と陳述書を書いてくれ、今もココファンあすみが丘に居住しているIさん、元全学研労組Tさん、さらに敵性証人として尾崎ココファンあすみが丘元所長(現ココファン蘇我所長)と小早川仁学研ココファンホールディングス社長(学研HD取締役)を申請しました。  学研経営側は、尾崎所長のみの申請
 この日の法廷で裁判所が、どこまでの証人を認めるか、注目されました。この点につき全ての結論は出されませんでした。次回、7月2日(13:30〜)の証人調べで、ココファンあすみが丘居住者のIさんと尾崎元所長の証言が行われることまでは決まりました。被告とされた3人の本人尋問はやらないわけにはいきませんので、裁判所は、次々回の期日=8月27日(13:30〜)も入れることにしました。しかし、裁判所はこれら証人、被告人の全ての尋問時間をできるだけ削ろうとしてきました。
 私たちは、それぞれの尋問内容として何を聞き、何を明らかにするつもりかを、裁判所に本人の陳述書を含めて書面で提出し明らかにしてきました。居住者のIさんは、ココファンあすみが丘の運営の中でいかに沢山の問題が生じたか、その改善要請に学研ココファンが誠実に答えてこなかったこと、千葉市にも陳情を行い立入調査も行われたこと、ふじせ労組に相談し、情報提供した事実が組合のビラで掲載され、その内容に間違いがないこと、等々具体的に証言することが多くあります。ふじせ労組委員長はこの事件の背景事実である長い争議経過やビラ配布情宣行動の意義、そして居住者の方の相談を受けて、同じ学研関連の人々が抱えている問題についての責任ある関わりを志して、真実の掲載を行なったことなど、同じく多くの重要な事柄を立証していく予定です。支援共闘会議の事務局長Yさんも長くふじせ争議支援を行ってきた中で起こされた損賠請求訴訟の不当性につき、他の争議事例も含めて広い視点から明らかにすべきことを有しています。最初、学研が事務局長の特定を間違えてYさんの実名がSさんだと勝手な解釈をしてSさんを事務局長として被告にしたところ、これが誤りであることが分かって、なお学研が居直って被告にすえ続けていることに対して、Sさんも個人攻撃の不当性、株主総会での小早川社長への質問の経過等も含めて、ココファンの経営姿勢などをこれまた広く多岐にわたる視点から明らかにする用意をしています。
 このことを弁護士さんからも強く訴えましたが、裁判所は聞く耳を持たず、岩井さんの証言時間(学研側が唯一申請した尾崎所長への反対尋問も)は、大幅に削られてしまいました。多くの仲間が傍聴席を埋めていましたが、思わずブーイングがおきました。
 最近の裁判所は、証人尋問を行う法廷の開催時間を、たった1日か、2回程度で終わらせようとします。主尋問と反対尋問もかつては別の日に行われていましたが、すべて同日中に開催することを強要しています。事件の真相を明らかにするためにじっくりと深く審理しようという姿勢がなくなり、「迅速な事件処理」を至上命題として実態は拙速裁判が次々と行われています。その結果、被告とされた側の防御権は損なわれ刑事事件では冤罪が生まれ、民事事件ではほんとうは被害者なのに加害者扱いされて不当な損害賠償金の支払いを命じられたり、組合の正当な抗議行動や情宣活動を禁じられるというような誤審判決・不当判決が多発することになっています。『絶望の裁判所』(講談社現代新書 瀬木比呂志)という元裁判官の本が書かれていますが、驚くような司法の実態になり果てています。
 こうした現状にめげずに、私たちは法廷でも奮闘していくつもりです。
東北ベストスタデイ損賠裁判5月25日に開催と決まる
 ココファン同様に、学研HDと東北ベストスタディが、組合と支援共闘会議に対して起こした660万円の損害賠償請求訴訟は、私たちが「裁判は被告の居住地である東京で行うべき」との民事訴訟法の大原則にそって移送請求したにもかかわらず、仙台の裁判所はこれを却下。仙台まで呼び出す嫌がらせ訴訟を起こした学研経営側の思惑に加担する結果になって仙台地裁での開催が決まりました。しかし、両方の代理人弁護士も東京在住、東北ベストスタディの当時の役員も東京本社に戻っているなどで、不便さは双方に働き、長時間を割いての出廷の期日がなかなか決まらず、ようやく事実上第1回(3月の先回は出廷なしの「擬制陳述」のみ)が5月25日 16時〜となりました。
 2年半も前のビラの記事を、ココファン損賠のついでに思いついて「名誉毀損」にでっちあげた不当な訴訟をはね返していきます。東京−仙台貫き闘うぞ!
4・1学研社前闘争宮原社長らに抗議!
 4月1日、学研本社前行動を展開しました。早朝7時半からの行動を行いましたが、この日は入社式当日で、新入社員の人たちを含め朝ビラを学研び地域の労働者に配布しました。先回に続き、出社してきた中森常務、小早川取締役に抗議・団交申し入れを行いました。宮原社長はなかなか出社せず、座り込みに移って、9時半過ぎにやっと出社。地下駐車場に走り込んでいく社長の車に抗議のシュプレヒコールを浴びせました。