学研第一四半期決算、最終赤字9億3千8百万
学研ホールディングスが2月13日に発表した2014年10〜12月期の連結決算は、売上げ高209億6千万円(前年同期比0.4%減)、営業損失8億3千9百万円、最終損益が9億3800万円の赤字(前年同期は12億円の赤字)でした。
出版事業では、売上げ高が前年同期比12.9%減の56億3千3百万円、営業損益は前年同期比2億8千3百万円損失増の9億9千7百万円の損失でした。児童向け読み物等の販売部数が伸び悩んだほか、不採算分野の段階的な事業見直しに伴って、ムックや定期誌の送品部数を抑えた結果、減収となり、不採算分野の在庫整理などによる損失が膨らんだ、としています。
高齢者福祉・子育て支援事業では、サービス付き高齢者向け住宅6施設と保育園5園の新規開業などで売上げ高が4割超伸び、33億7千万円となったそうです(営業損益は2億3千5百万円損失減の1千百万円の損失)。
教室・塾事業は、売上げが前期比1.3%増の67億9千万、営業利益は前期比1億2千百万円増の6億2千3百万円。
会社は「平成27年9月期の連結業績予想」は1月に行った文理の買収・子会社化による連結決算への加算されることなどで、今後の業績見込みを精査中として昨年9月期決算発表時の業績予想数値をそのまま据え置いていますが、日経新聞に流した「増収増益」との発表どおり順調に行くかどうか不明です。
影を落とす宮原社長の
「あなたたちが作った赤字」発言
前記から続く出版部門の不振を打開できるか、が問われていますが、前号でも紹介した宮原社長の出版部門の労働者500人に対する「あなた方年収800万が作った赤字をココファンや進学塾の年収300万が穴埋めしている。暴動が起きてもおかしくない状態だ」との経営責任を棚上げしての暴言は「社長の正体」と受け止められ、出版部門で働く人々の心に大きな影を落としていることでしょう。そしてそれは出版部門にとどまらない経営陣への不信感につながるものです。
出版不況の中で経営陣が方向も示さず、責任もとらずに労働者にしわ寄せをする発言をして居直り、賃金格差を承知して買収・グループ企業化した労働者の相対的低賃金をだしにつかうなど、信じがたい話です。本当にそんなことをやったのかと疑いますが、一時的なボーナスカット(次期への付け替え)などの姑息なことも理解を超えます。また、格差ある現実を認めるなら、グループ会社労働者の低賃金使い捨てをせずに、賃金を上げてはどうでしょうか?
キャリアスタッフ制度を撤廃しろ!
新人事制度も透明化し見直しすべきだ!
労働者への明らかな不利益扱いである選択定年制=キャリアスタッフ制度について学研経営は居直っています。毎年応募者は少なく、68期は対象者27名中1名、69期は32名の対象者がいましたが、ついに応募はゼロとなりました。木村常務は、昨年12月の株主総会で、「廃止するべき制度ではないか」との株主の質問に対して、「たまたま今回応募がなかったということです」などとあきれる答弁を行っています。「現状で廃止の予定はございません」と述べています。一方で「必要な場合には見直しはしていく」
と言っているのですが、この応募者の現状を見れば、すぐに見直しを行い、65歳まで安心して働くことができるようにという「高齢者雇用安定法」の趣旨に反するこのような制度を廃止すべきです。
また、新人事制度についても、先日の株主総会で会社は「社員全員が同様に制度適用が受けられる福利厚生カフェテリアプランに変更したものであり、総額では変更はありません。」と問題はないかのような答弁でした。手当カットにより大幅年収ダウンになっている学研社員がいる実態が告発されていることは既にお知らせしました。福利厚生選択制(カフェテリアプラン)は米国から輸入された制度で、多くは外部委託して多様な福利厚生の中からポイント制で従業員が選択できるものですが、企業側のメリット追求が動機として先行して導入されています。選択肢があって一見、労働者の自由意思や生活条件が尊重されるように見えますが、企業側の提供にも重点の選択があり、労働者のニーズとのギャップがあるのは自明です。そして、労働者の求めるものはかつてと代わらずに生活に根ざした恒久的なものが大きく、家計での負担感の大きい「住宅」や, 高齢化社会、社会保障削減への不安から「生活保障(医療, 年金, 介護)」に関わるものが切実です。住宅手当のカットなど、経営側の都合で強行して企業に好都合の選択プランを示されるなどの問題が起こります。学研の新人事制度が労働者に不利益を生んでいる問題点を洗い直し、見直しをさせるべく共に声を上げていきましょう。
職場で困ったこと、職場の情報、ご意見などをお寄せください
最近、学研職場から情報が寄せられています。困ったこと、問題だと感じていること、ご意見などをお寄せください。匿名でも構いません。本紙タイトルのところにある住所への手紙・電話・ファクスや h25cap@mbh.nifty.comへのメールを。
また、地域で共に活動している東京南部労組では、いつでも無料で労働相談を受け付けています。southwind@mbr.nifty.comへ
労働法制改悪とリンクした学研の社内制度改悪
関連を見据え労働者への不利益扱いを許さない声を上げよう
選択定年制導入や新人事制度など学研経営の行っている社内制度改悪は、いま進められれつつある労働法制の改悪=労働法制の解体・企業法制への大転換と連動している面を見過ごせません。
安倍政権は、民間投資を喚起する成長戦略として、「雇用流動化」「規制緩和」をキーワードに様々な政策提言を、産業競争力会議、規制改革会議などの重層的組織を通じて、次々と発表、その実現を強行しようとしてきています。そのキャッチフレーズが「世界で一番企業が活動しやすい国」です。普通、政治家は「国民が暮らしやすい国を創る」という言い方を嘘でも言うものですが、安倍政権はあけすけに、企業利益のための国作りを標榜しています。そのための労働法制の大改悪として、いま、「限定正社員制度」、「ホワイトカラーエグゼンプション」、「派遣労働の期間制限撤廃」などが前面に押し出されてきています。
「解雇自由」・「雇用流動化」と限定正社員制度
「産業競争力会議」で2013年に竹中平蔵、長谷川閑史らが、労働契約法に「解雇自由」の原則を規定し、再就職支援金を払えば解雇できる「事前型の金銭解決制度」とする提案を行いました。労働側、法曹界をはじめ多くの批判を浴びましたが、その後も解雇無効の判決が出た場合に、労働者に補償金を支払って雇用契約を終える選択肢をつくる「事後型の金銭解決」などが産業競争力会議内で議論を続けられています。そこにあるのは「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へ」の政策転換が必要だ、というところにあります。労働者の首切りを自由にして、労働者を成長の止まった分野から成長分野に移動させれば経済が活性化するというもので、労働移動支援型制度で解雇をやりやすくするものです。労働移動支援助成金を大幅に増やし、再就職支援会社に払うお金を、大企業の場合は、今までは企業が全額負担してきましたが、今政府は、労働移動支援助成金を大企業も使えるようにする、としています。これらの結果は解雇自由で職場から追い出され、再就職はあくまで支援で自己責任だから、就業困難あるいはより劣悪な不安定雇用に追い込まれることにしかなりません。
また、安倍雇用改革では、仕事内容や勤務地、労働時間などが限定された正社員、いわゆる「限定正社員」を増やそうとしています。 勤務地・職務が消失したら解雇される限定正社員は既に全体の約30%にのぼっていますが、まだ解雇法理の適用を受けて保護されるケースもあります。それを解雇されても仕方がない者として制度化していこうとしているのです。
労働時間規制解体の画段階的攻撃
労政審で労働側の反対押し切り2・17「残業代ゼロ」労基法改悪法律案要綱作成
厚労省から2月17日労働基準法改悪案がまとめられました。これについての答申を労政審が出し、今通常国会に提出されようとしています。
今次労働基準法改悪案は、@「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)=ホワイトカラー・エグゼンプションの導入=全労働者の平均年収の3倍を超え、高度で専門的な業務(具体的には、「研究開発業務、金融商品の開発業務・ディーリング業務、企業や市場のアナリストの業務、コンサルタントの業務、などを念頭に省令で規定する」としています。省令でいくらでも増やせるという意味です)に従事する労働者には、労働協定のうち、時間外・休日労働協定の締結がなくなり、企業は労働者に時間外・休日・深夜割増賃金を払わなくてよくなります。
時間ではなく成果で評価される働き方とは
働き手を労働時間規制による保護から外す制度は日本版ホワイトカラーエグゼンプションとして、2005年6月に経団連が「提言」を公表、この時はその対象者は年収400万円以上でした。「ただ働きと過労死促進の法案」との批判が高まり、引っ込められていましたが、いま復活し、まずは、年収が1000万円を超える労働者を対象に、「残業代ゼロ」法案が導入されようとしています。
「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え」ることを目的に、「一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」を対象として「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)」を設けるとしています。賃金を労働時間から切り離し、「残業」(時間外労働)という概念を解体する大転換の攻撃です。「効率的に働いて成果を上げ、早く帰宅できる」などというキャンペーンもはられていますが、今後、「高い職業能力を持つ労働者」に限らず働く者には、求める「成果」のハードルは自由に上げることができる経営者の下で、恣意的な評価と分断が持ち込まれ、「成果を出す」ために実質長時間労働を時間外手当もなく強いられる結果が目に見えるものです。8時間労働は生活や睡眠の時間を確保する規定で19世紀の工場法以来かち取り、積み重ねられてきた労働者の権利で、生存を保障する不可欠のものです。これが破壊されれば、今以上に過労死、健康被害が増大するのは目に見えています。
また、今次労基法改悪案では、企画業務型裁量労働制の適用を企画や課題解決型の営業業務に拡大することも盛り込まれています。「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を行い、これらの成果を活用した商品の販売又は役務の提供に係る当該顧客との契約の締結に向けた業務」と規定されています。
派遣労働の拡大・恒常化を狙った「改正案」
安倍暴走政権が衆議院解散・総選挙に撃って出る中、昨年11月21日、上程されていた労働者派遣法改悪案はいったん「廃案」となり成立が先送りされました。その「労働者派遣法改正案」を、骨格部分を維持したまま 今国会に再々上程する意向を示しています。@専門26業務の区分廃止、A人によらず業務をもとに3年以上の派遣を認める(従業員過半数代表の意見聴取、説明義務)B日雇い派遣の原則廃止を緩和する、というものですが、派遣先企業は3年ごとに働き手を替えれば、派遣労働が可能な全ての業務に対し、ずっと派遣労働者を受け入れることが可能となります。これらは、労働者保護よりも企業の使い勝手を優先し、派遣労働を拡大・恒常化する内容というほかありません。
今次改正案は、法の表向きの趣旨であった「常用代替防止」「臨時的・一時的業務に限定」の原則を放棄したもので、派遣法の本質が露わになっています。本来、企業が雇用責任を果たすためにも直接雇用という基本原則があったわけですが、これを破壊する労働者派遣制度そのものが問題でした。元々職安法44条は「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」とし、法定の理由に基づく場合以外の“労働者供給事業”を禁止していました。85年派遣法制定で、派遣法に基づく労働は職安法の例外とされ、そのために間接雇用を例外とする趣旨から派遣法では様々な制約を定めていました。それが次々と解禁され、今日に至っています。労働者を雇う派遣会社と、実際に働く派遣先の企業が違う「間接雇用」の下では、派遣会社と派遣先企業の関係は、企業間の商取引だから、派遣労働者の権利・労働条件は二の次にされるどころか、実際にはないがしろにされ安上がり使い捨てが横行してきました。
学研・ふじせ争議には、この派遣法制定(1985年)が深く関わっています。
1977年12月、学研の下請編集プロダクション「東京ふじせ企画」に勤め、「○年の科学」「マイコーチ」などの編集業務を行っていた私たちが無給長時間残業・低賃金などの超劣悪な労働条件の改善のために組合を結成すると、わずか一週間後、学研は私たち35名に行わせていた業務の一切を引き上げ、会社を倒産させて全員の首を切りました。
下請けの経営者も後に「組合潰しは学研の指揮・命令」と事実を明かしています。 85年には東京地裁が「組合を解散に追い込む目的で学研が業務を引き上げた」との事実を認定、学研の使用者責任も認める損害賠償判決を出しました。しかし、学研は 私たちの話し合い解決の要求に、「使用者ではない」と開き直って話合い解決を拒んでいます。
学研が唯一、居直りの口実にしているのが、学研の使用者性を認定しなかった87年の労働委員会の命令です(後に行政訴訟で確定)。上の損賠判決とは逆の判断です。これは、リーマンショック後、この法制度の下の過酷な労働実態が社会問題化している労働者派遣法が1985年に制定された流れで出されたものです。直接の雇用者と派遣先経営者を分離して、派遣先の使用者責任を免罪する悪法が親会社や派遣先の労働者使い捨てと今日の派遣切りを生み出しました。ふじせの労働者は業務委託という「請負」の形式で実質は学研に派遣されて使用され働いていた(今日の「偽装請負」)のです。
正社員も非正規の労働者もますます過酷な労働実態に追い込まれて使い捨てにされる
労働法制の大改悪を阻止しましょう!