学研、アマゾンとの契約は本当か?
 4月17日の朝日新聞朝刊1面に『出版大手の学研ホールディングスと、主婦の友社、PHP研究所など複数の中堅出版社が、インターネット通販最大手のアマゾンと電子書籍サービス「キンドル」日本版の配信契約で合意した。3社より小規模な出版社を含めると合意は40社以上に上る模様だ。キンドルを巡って大手・中堅出版社の契約合意が明らかになったのは初めて。』との記事が掲載されました。記事では、「学研は昨年、アマゾンの紙の本の年間売り上げランキング5位。・・・学研は自社の電子書籍を販売するサイトを運営し、紙と電子の同時発売にも積極的で、約千点の電子書籍データを保有する。」との記載も続いており、これを受けて、同日より170円前後だった学研の株価が急伸し、4月25日現在で210円となりました(学研の書籍がランキングに上がることなど皆無だったが、カーヴィダンスと骨盤枕ダイエットのムック本のベストセラーで起こった椿事であることは前に触れました)。
 しかし、この「朝日」の記事は正確でなく、上記3社サイドからは契約が合意に達した事実は発表されていません(学研の広報も否定)。「黒船の到来」と騒がれたアマゾンの日本の電子書籍市場参入には、アマゾンの提示してきた「販売価格の決定権はアマゾン側が握る」等の契約条項に日本の出版各社が反発し、交渉が難航してきました。しかし、アマゾンのベゾスCEOは国内主要メディアの取材に対して14日、2012年中の電子書籍サービス開始についても初めて明言しており、アマゾン側の譲歩も示しながら交渉の進展のメドを立てることができたとの判断で、今回の「配信契約合意」との情報をリークしたものと考えられます。宮原新体制発足以降、「バスに乗り遅れるな」とばかりに電子書籍化に飛びついている学研ですが、他社に先駆けたい焦りで、アマゾンの主導権争いの宣伝に利用された、ということではないでしょうか。それでもよし、として学研経営陣は、争議を抱えた実態をおし隠しての提携等に血道を上げ(ふじせ争議の実態を知られることを恐れていることが最近の動きからも判明)、現状では虚名になり果てている学研ブランドを取り繕おうと必死のようです。争議を解決する度量や才覚を示す方が、よほど評価されるに違いないのですが、分かっていないようです。
アマゾンの動向の一方で、出版デジタル機構が発足
 他方、講談社、小学館、集英社の大手3社を中心とする複数の出版社と、大日本印刷、凸版印刷が、計約20億円の出資をするなどして、出版デジタル機構が4月2日に発足しました。これに、官民ファンドの産業革新機構が、総額150億円を出資することがわかりました。「出版デジタル機構は、書籍100万点の電子化を目指している。出版社から提供を受けた本を電子化して保管。ブックライブのような電子書店などに卸売りする。データを卸売りした利益で各出版社の初期費用を相殺できる仕組みを作り、中小出版社も電子化できるように計画している。産業革新機構も、中小がさまざまな電子書籍を出せるようにすることが、市場全体の発展につながるとみる。国内の業界がまとまることで、外資企業との対等な交渉もしやすくなりそうだ。」と言われています。
 また、他にも、日本政策投資銀行が3月28日、三井物産と東芝、NECとともに、電子書籍配信サービス会社「ブックライブ」と資本提携すると発表しています。書店関係でも、キンドル上陸に備え、紀伊國屋書店は今年中に電子書籍10万タイトルを揃え、また日書連もウェイズジャパンとタイアップし、マンガ閲覧専門電子書籍「イストリア」を発売。紀伊國屋書店、ソニー、パナソニック、楽天の4社は、電子書籍サービスにおける利用者の利便性向上を図るため、共同で環境整備を行うと発表。各社の電子書籍ストアや端末を、横断的に接続できるようにする。また、各ストアから購入した電子コンテンツを一元管理できる仕組みも作る、といった動きが起きています。
 「限界産業」とまでささやかれてきた出版業界を越えて、 電子書籍という新しい産業を興すことで需要を呼び起こそうとの狙いも含めて、大変活発な様相ですが、問題は山積しています。4月13日に出版関連労組交流会議が開催した春季集会の中で、電子書籍化の動向につき、私たちは以下のような基調を確認しています。少し長い引用ですが、一部省略し紹介をしておきます。
 インプレスによれば、昨年度の日本の電子書籍市場規模は650億円で、前年比13.2%増。内訳は、パソコン向けが53億円で前年比3.6%減、ケータイ向け572億円で同11.5%増。脚光を浴びたスマートフォン、タブレット端末、電子リーダー等のプラットフォーム市場は24億円、電子雑誌市場は6億円でした。書籍の総売上は8198億円でしたから、大騒ぎされたプラットフォーム市場はその3%にも満たなかったのです。またこの1年で最も売れた電子書籍は、講談社の『スティーブ・ジョブズ1、2』でした。その発行部数と電子書籍のダウンロード数が公表されました。紙版は1が55万部、2が47万部、電子版は1、2合わせて4万1000ダウンロードです。すなわち電子書籍の売れ行きは紙版の4%にすぎません。電子書籍市場は、騒がれているわりに活性化してはいないのです。三井物産や東芝は、電子書籍市場は3年後には2〜3千億円に急成長すると皮算用しているようですが、にわかには信じがたい数字です。
 そもそも紙の本が読まれなくなっているときに、電子書籍化すれば読者は増えるのでしょうか。現在展開されている大騒ぎは、「電子書籍という夢想の市場をあてこんだ空騒ぎ」と言えなくもありません。
 電子書籍端末も、東芝「ブックプレイス」、ソニー「リーダー」、パナソニック「UT−PB1」と出揃い、スマートフォンやタブレットPCと競合し、活況を呈しているように見えます。しかし、一方でシャープが「ガラパゴス」から撤退しました。ガラパゴスのコンテンツはCCCが提供し、100万台を販売目標として掲げていました。ところが、わずか10か月で消滅です。アスキー総研の調査では、小学生男子の65%、同女子の71%が「電子雑誌・書籍を知らない」と回答、小学生男子の保護者の56%、同女子の保護者の63%が「電子雑誌・書籍を自分の子どもに読ませたくない」と答えています。現行の日本の電子書籍は、9割以上がケータイ向けのもので、さらにその8割以上がコミックです。そのコミックも「アダルト」、「ボーイズラブ」、「ティーンズラブ」で占められており、日本独特の市場です。それを書籍全体に拓くには、フォーマット(良い解決方法なし)、端末(互換性なし。端末は絶えず進化してゆくため、購入した電子書籍が将来読める保証なし)、コンテンツ(著作権の問題等があって、売れ筋の本はなかなか電子書籍化されず)、価格決定(文庫本が出る時期になった場合、文庫より電子書籍のほうが高値になる可能性。さらに安価販売をする中古書店の存在。デジタルだからコストが圧縮できるわけではない構造(課金の仕組みが未定)、権利(出版契約の標準的ルール自体が未整備)、クオリティを維持する専門職(安定的な出版市場があってはじめて著者が育ち、著者を支える編集者・校閲者といった一人前になるにはかなりの時間を要する専門職も養成できる。ユーザー・オリエンテッド〔読者の経済的利益〕を最優先する市場原理主義は出版界を殺す。環境も有能な人材も、一度失ってしまったら元には戻らない)といった問題を解決しなければなりません。越えるべきハードルはまだまだ高いと言わざるをえません。
 加えて、配信事業者による検閲の問題があります。配信事業者の一方的な意思で検閲や回収が行われれば、流通が寡占状態になったときに、言論活動を1私企業が操れることになります。これは決して杞憂ではなく、アメリカでアマゾンがジョージ・オーウェル『1984年』の配信を拒否し、風刺アニメを中傷的内容だとして拒絶するなど、現実に起こっている事態です。日本でもアップルが講談社のコミックの約3割のタイトルを配信拒否していますし、ドコモは配信説明会で「当然内容については確認させていただく」と明言しています。
一方、ネット書店の分野で圧勝しているアマゾンですが、日本での売上から得た所得を日本で申告していないとして、国税局から140億円の追徴課税処分を受けたのは記憶に新しいところです。今度はカリフォルニア州で、ネット新税を定めた州法の撤廃をめざし500万ドルを投じた署名運動等を展開し、州小売業協会や社会福祉団体の猛反発を受けて、不買運動が起きています。利潤追求第一主義での展開で未来は拓けるのでしょうか。
メディカル秀潤社でのパワハラに続き、
        学研マーケティングでも問題が・・
              先号でも、学研マーケティングのI取締役の異様な通達につき掲載しましたが、こような会社側の姿勢が、さらに問題を引き起こしているようです。内容は追って・・。
職場で困ったこと、職場の情報、ご意見などをお寄せください
最近、学研職場から情報が寄せられています。困ったこと、問題だと感じていること、意見などをお寄せください。匿名でも構いません。
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3・29学研社前闘争
   宮原社長に抗議の声を浴びせる


 
宮原社長の乗った車に抗議

 3月29日、 朝7時半からの社前行動を展開しまいた。旗・横断幕を設営している間に社長の車が地下駐車場から出てきて自宅へ迎えに行きました。朝ビラ(社内から学研マーケッティング取締役の「だらだら残業をするな。損益面で会社も迷惑。部門長の管理実態を査定する」という通達への内部告発が寄せられたことなど記載)を配布。8時20分頃、宮原社長の乗った車が社屋裏手から回って到着しました。宮原サンは、抗議をかわして地下駐車場へすり抜ける、かわせないまでもシュプレヒコールを浴る時間を短くしたいのでしょう。しかし、多くの仲間が車の周囲にかけ寄り、「話し合いに応じて争議を解決しなさい」と抗議の声を浴びせました。他の役員の出社の動きはなく、この日も受け取りの良かった朝ビラの配布に続き、9時過ぎから社前に座り込み、途中、来客の乗った黒塗りの車が2台、正面玄関前に乗り付け、社内に入っていきましたが、帰りは私たちの学研経営への抗議の声を聞かせたくないとの配慮からか、車を地下駐車場に誘導し、そちらから帰ってもらうという気の使いようでした。しかし、地下から車が上がってきた時にちょうど、力強いシュプレを社屋に浴びせていたのですが。その後も、最後まで抗議行動を展開しました。

4・9学研社前行動
 4月9日には、午後からの社前座り込みと抗議・情宣行動を展開しました。マイクで学研及び地域の人々へ訴えている途中、カップルの通行人の方が、争議のこと、建物のことなどにつき質問を寄せてきたので、学研の倒産・解雇攻撃のこと、自社ビルでないことなどを説明しました。「頑張ってください」との激励をいただきました。学研に出入りする来客、関係者にも争議実態を伝えるビラを配布することができました。

                          学研社前で座り込み         関心を寄せてくれた通行人の方に説明
株主
から学研サイトの争議ごまかし説明抗議の声

 ふじせ争議への弁解を載せた学研の公式サイトに株主から抗議の声があがっていることが分かりました。「照会状」として、株主から出された抗議文では、学研が身内の恥とも言うべき事実をわざわざ公式のホームページに掲載(「株主・投資家の皆様へ」として)し、いつまでも東京ふじせ企画労組から抗議を浴び続けても構わない、株主総会でふじせ争議の質問が出続けても構わない、という居直り姿勢を指弾しています。このサイトを掲載している担当取締役の名前も示すように求めているようです。
 しかし、学研経営は、株主のこうした声を無視し続けているらしく、未だに公式サイトでの「ふじせ問題」弁解コーナーは削除されていません。
 よほど、「よくある質問」なのでしょうが、東京ふじせが「経営破綻」したのは、学研が組合潰しを狙って委託業務総引き上げ=倒産・解雇を仕掛けたからであることに一切触れずに、「関係のない別会社の組合が押しかけてきて、迷惑だ」などと説明しても説得力はありません。
<共闘報告>
3・30南部交流会春季集会、4・19南部統一行動を打ち抜く!
 大崎第一区民集会所で春季集会を開催。1年間の活動をふり返り、2012年度の闘い、争議団闘争・職場闘争勝利、南部労組の強化、地域共闘の飛躍を確認。4・19南部統一行動では、エクソンモービルの日本市場撤退表明の中、品川本社闘争を展開、続いて北品川の日広通信社の解雇攻撃を許さず、抗議・申し入れと昼集会を打ち抜いた。
4・12出版関連労組交流会議春季集会を開催
 東京しごとセンターで春季集会を開催。弱肉強食の業界再編、過酷さます出版の職場状況につき、職場闘争創成、争議団闘争勝利、未組織の仲間との結合などを確認、懇親会も含め、盛り上がった。