学研、中間決算35億円の営業赤字
期首の業績予想より大幅に悪化 
 学研は、11月14日に第2四半期での業績(中間決算)を発表しました。会社は、直前の11月12日に急遽、「業績予想の修正に関するお知らせ」を発表しましたが、前回の5月16日の業績予想を大幅に下方修正せざるを得なくなっての今次中間決算発表です。 
 連結売上高は330億円(期首予想336億円、前期中間333億円)、同営業損失は35億6千万円(期首予想22億円、前期中間31億円)、同純利益26億6千万円(期首予想56億円、前期中間74億円純損失)です。
 売上げは低迷し、営業損失は予想より13億円も悪化しての赤字増大です。入居を前にしての新本社ビル・土地の売却により約90億円の売却益を計上した結果、純利益は26億円を出して最終赤字は免れていますが、これも予想より30億円も悪化する業績結果となりました。「本業の不振」が日経新聞などでも指摘されているとおりで、「中間黒字」の実態は深刻なものがあります。
 会社は、予想の下方修正に関しては、ムック・書籍の新刊予定を下期に延期したこと、ムックを中心とする在庫圧縮を行ったこと、園事業における新学期用品の返品増、月刊誌の材料費アップ、及び教室・塾事業における会員募集費の前倒し等により営業損益が計画より悪化した、また投資有価証券評価損と事業整理損による特別損失を計上した、ということを理由として説明しています。
3月決算の営業赤字と経営計画破綻の可能性増大
 特別損失関係の数字内訳は今回発表で明らかになっています。有価証券評価損は10月1日に発表されたとおり7億9千万円ですが、これは先月号でも指摘したように、米国発世界同時株安に加えて、エフィッシモに対する買収防衛策を構えて無定見な株式持ち合いをくり返したことの影響があると言えます。事業整理損は、家庭訪問販売で提供する小・中学校生向け教材事業「アクセル1(ワン)」と「マイコーチ」からの撤退で、7億6千万円が引き当てられました。この他、4月の希望退職募集による特別退職金(5億2千万円)、固定資産除売却損(2億4千万円)と本社移転費用(1億8千万円)、等を加えて、特別損失の総計は、27億5千万円に達しています。
「クロスメディア事業」区分消滅の示す遠藤体制の経営戦略破綻
 他方、営業損失の実態は上記下方修正理由の説明では不明確です。今年度から会社は、学研グループの事業区分をこれまでの「直販」「市販」「能力開発」「クロスメディア」「その他」から、「教室・塾」「園」「学校」「家庭訪問販売」「学び・児童出版」「暮らし・教養・エンタメ出版」「その他」の7事業区分に変更したことを発表しています。
 この事業区分変更の中で「クロスメディア」事業は消滅していますが、6月の株主総会の報告特集で指摘したように、会社は「本来、クロスメディアは独立した事業ではなく、各事業のツールである」などと言い換えて、あれだけ遠藤社長が先頭になって号令をかけてきたクロスメディアコンテンツ戦略の破綻を押し隠していました。「62期は9億円の投資が先行するが、63期からは収支が均衡する」と昨年の株主総会答弁で述べていた事業計画でしたが、それが破綻していることが、数字の上でも示されているのが、今回の中間決算短信の中の従来の区分に従った今年4月1日〜9月30日(63期)のセグメント情報です。クロスメディア事業の売上げ7千万円、赤字2億円と収支均衡とは程遠いものとなっています。仮に各事業のツールとして他事業区分に振り分けた部分があるとしたとしてもその割合が多い市販事業の営業赤字も16億円(直販も約17億円)です。
 因みに、新規分類に従った事業ごとの業績は、好調とされている「教室・塾事業」が売上高74億円(前期比26・9%増)、営業利益3百万円(同98・7%減)、「園事業」が売上高49億(同0・1%増)、営業赤字6億1千万円(同約3億円損失増)、「学校事業」が売上高19億円(同17%減)、営業赤字3億5千万円(同約2億円損失増)、
「家庭訪問販売事業」が売上高約15億円(同15・1%減)、営業赤字5億7千万円(5千7百万円損失増)、「学び・児童出版事業」が売上高41億円(同7・8%減)、営業赤字3億5千万円(同4千3百万円損失増)、「暮らし・教養・エンタメ出版事業」が売上高80億(同3・1%減)、営業赤字11億9千万円(同1億6千万円損失減)、「その他事業」が売上高50億円(同9・7%減)、営業赤字5億円(同2億円損失減)となっています。
基準値を超える鉛含有で教具商品回収の会計処理は?
 園事業における新学期用品の返品増については、「営業施策上新学期用品の返品枠を拡大した」とされています。これに関連して、11月7日に会社は、「オランダ・ニーホイス社が2007年2月から2008年8月に製造し、弊社が輸入したモンテッソーリ教具の塗料(黄色と緑色)に、基準値を超える鉛が含まれている可能性があることが判明いたしました。弊社では、代理店を通じて幼稚園・保育園・学校向けに販売しておりますが、安全と安心に万全を期すため、対象商品を自主回収し、良品との交換を予定しています」と発表しています。これらの回収・交換費用(返品要求もあり得る)は、期末の会計処理に回り(返品増等で)赤字は膨らむことになりそうです。
期末業績予想も下方修正
 会社は業績予想修正で「平成21年3月通期」の連結業績予想も下方修正せざるを得なくなっています。
売上高は、800億円から790億円へ、営業利益は10億円から7億円へ、そして純利益は104億円から79億円へと修正しています。新本社ビル売却益90億円でのカバーを得てさえこの数字と考えると、赤字体質からの脱却には程遠いものです。さらに3月決算では、株安での特別損失増大等、同時不況の影響も一層強まり、毎回恒例となっている下方修正の数字さえ更に重ねて下方修正ということをくり返していくことになりそうです。今春の3月決算(62期)も売上高810億円、営業利益14億円、純利益7億円という業績予想を極端に下回って、売上高784億円、営業赤字21億円、純損失56億円となったこと、これは毎回のこととなっていることを考えると、結局、2009−2010経営計画(2009年3月期売上高800億円、営業利益10億円、2010年3月期810億円、営業利益15億円)の破綻の可能性は濃厚となっている、と言ってよいでしょう。そのつけを経営陣は持ち株会社構想下のリストラ大合理化として労働者にしわ寄せしていく姿勢を強めています。
持ち株会社構想と事業分類
 「クロスメディア事業」(分類)消滅の背景につき上に触れましたが、新規分類の中で、「家庭訪問販売事業」に於ける雑誌や教材は、「学校事業」や「学び・児童出版事業」での教材や参考書と分野としては重なるにもかかわらず、「家庭訪問販売事業」を新規分類でも分けて残しているのは何故でしょうか。直販という性格を表向きの理由としていても、実際は学研の持ち株会社化(来年10月発足予定)の下で、ほぼ丸ごと不採算部門として切り捨てるのではないか、等の憶測を呼ぶものとなっています。
 各事業会社をどのように作り、再編するのかは全く明らかになっていませんし、そこに於ける労働者の身分や労働条件の変更等につき組合が質問しても会社はまだ答えようとしていません。無責任な経営陣たちの生き残りが優先されている持ち株会社構想は、今回の中間業績の実態からも経営陣最後の延命策としてごり押しされていく可能性が強まっており、先月号でも指摘したように厳しく批判していかなければなりません。
<秋季闘争後半戦に入る>
10・23学研社前闘争を打ち抜く!
 10月23日、全都の争議団の集まりである争議団連絡会議の統一行動、そして地域の労組・争議団の共闘組織である南部地区交流会、そして出版関連労組交流会議の集中闘争の一環として、学研社前闘争が打ち抜かれました。 
学研の役員たちは一人も出社して来られず、逃亡!
 早朝7時30分から全都・地域の仲間は学研社前に登場。集まった仲間は、三手に別れてビラ配布・情宣を行いながら、社長・役員の出社を待ちました。しかし、いつもだと社長の乗った車が到着している8時を回っても、動きはなし。出勤する学研労働者、地域の労働者の通行量が増して来る。だが、学研の役員たちは、社前を圧倒的に埋め尽くした労働者の抗議・団交要求の構えを前に一人も出社して来ません。9月16日の社前行動の時には、遮蔽幕を張った社長車を待機場所から3往復半させて、社長・役員を数人ずつ地下駐車場までピストン輸送した会社側でしたが、そんな手段も諦めたようです(取材にきた新聞社にも状況を説明)。
ビラが完配となり足りなくなるほどの受け取り!
 当該がマイク情宣を開始、ビラは午前9時の始業時刻近くには用意した500枚がほぼ完配。地域の労働者の受け取りもよく、最後には足りなくなってしまいました。

85名の結集で、社前集会!高層社屋に轟く抗議の声

 9時を回ったところで、社屋正面に座り込んでふじせ支援共の司会で集会開始。当該労組から、移転間際に新本社ビル・土地を売却してリースで使用となった学研の窮状や、経営陣最後の無責任延命策として10日前に発表された09年秋の持ち株会社移行方針などへの批判と、ふじせ闘争が逃げ切りを許さない局面に入っている現状につき報告。 連帯挨拶を全学研労組、同じ五反田で争議中のブリタニカ分会、保安処分攻撃と闘う予防拘禁法を許すなネットワーク、間接強制を打ち破り11・15三多摩統一行動を控えている三合労ケミカルプリント分会から受けました。決意表明を集中闘争で取り組む出労交からマガジンハウスの解雇と闘う坂本さん、最後にふじせ闘争支援共闘会議が決意表明、アール闘争当該から次の現場への結集呼びかけを受け、シュプレヒコールを社屋に向かって叩きつけました。
 46団体85名の仲間が早朝から結集し、力強い闘いを展開しました。

11・13学研社前闘争 
富樫専務に抗議の声浴びせる!

 11月13日、学研社前で役員抗議・団交要求を中心とした行動を行いました。8時頃、中森取締役が来た後は、殆どの役員は、姿を見せませんでした。前回の10・23統一行動に続き出社を控えたのか、遠藤社長の車もいつもの時刻を過ぎても来ず。   私たちは、この日も学研労働者、出勤する地域の労働者に多数のビラを配布。8時40分頃、富樫専務が出社してきたので、団交要求書を差し出し、話し合いで争議を解決するように迫りました。しかし、富樫専務は元気なくうつむいたまま、構内へ逃げ込んで行きました。その背中へ抗議のシュプレヒコールを浴びせました。出勤する地域の労働者も注目して見ていました。


 9時を過ぎても、他の役員は出社して来ず。富樫専務は携帯電話の連絡が付かなかったのかな?私たちは社前でのはりつき・抗議行動へ移り、途中、来社した学研教室の指導者等、多くの人々にビラを配布、10時までの行動を打ち抜きました。
<共闘報告>
10・23争団連統一行動を展開!
 10月23日、ふじせ学研社前闘争に続き、休業補償打ち切り・解雇と闘うアール闘争(86名結集)、労働者排除と闘う大道測量闘争御徒町デモ(84名結集)を成功裏に闘い抜く!
11・20秋季シンポ「激化する出版産業再編と労働組合の課題」へ!
11月20日(木)18:30〜双葉社地下ホール  主催:出版関連労組交流会議