持ち株会社移行は学研経営陣の無責任延命策
分社化大合理化=労働者切り捨てを許すな!
学研、特別損失が拡大
無定見な株式持ち合い濫発も影響
学研は10月1日、「第2四半期末の投資有価証券評価損に関するお知らせ」を東証で発表した、と自社サイトに掲載しました。所有する他社株式の価格下落を9月末しめ中間決算で発表しなければならなくなったものですが、米国発世界同時株安の影響に加えてエフィッシモに対する買収防衛策を構えて無定見な株式持ち合いをくり返したことが今回の評価損拡大につなっがっていると言えます。
株式持ち合いは、日本的な護送船団方式と批判されバブル崩壊後には減少しましたが、この2〜3年外資の買収攻勢が強まる中、一部で復活しています。
上記の学研のように、株価下落による業績悪化・財務体質悪化、資金実態は変わらぬまま互いに増資(新株発行)で資本効率悪化、安定株主工作は一般の株主の議決権を無力化する、等の弊害が指摘されています。学研の場合、持ち合いの相手にも迷惑・損害を及ぼすでしょう。連結営業キャッシュフローの赤字幅が47億円に拡大した中での株式持ち合いには批判の声も出そう、との日経新聞の記事も当然と言えます。
赤字家庭直販部門でも撤退で特別損失
学研は、10月14日、08年4―9月期に約7億円の特別損失が新たに発生したと発表しました。家庭訪問販売で提供する小・中学校生向け教材事業「アクセル1(ワン)」と「マイコーチ」。から撤退するため。早期退職者に対する退職金の特別加算金支払いや有価証券評価損と合わせ、現時点で特損は20億円を超すと日経新聞でも指摘されています。
学研「崖っぷち」経営の持ち株会社移行の危険と問題性
会社は、10月14日に、09年10月に持ち株会社に移行する計画を発表しました。
「塾など成長事業への集中投資を進める。持ち株会社への移行により、他社との戦略的提携を迅速に結ぶことも可能になる」と言っており、「全社的なコスト削減や資産の有効活用、財務体質の強化といった経営管理機能の諸改革にスピーディーに取り組める経営体質を確立すること」も、組織再編の狙いとしています。対外的には、「戦略的な提携」「構造改革」を強調していますが、具体的には、09−10年度2カ年経営計画にある「成長事業への集中投資」「赤字事業の撤退・縮小」を動機としていることが見て取れます。
しかし、これまで長年にわたって改善されることのなかった学研の問題体質が、何故
持ち株会社によって改革できるのか全く不明です。学研経営は、「各事業単位の採算性や責任体制が明確になる」と持ち株会社の特徴として一般的に使われている用語を使って「効果」を強調していますが、現場に権限を与えず、しかも経営陣は責任を取らずに結果責任だけ押しつけるしわ寄せ策をくり返してきた官僚的な体質が、ますます助長されるだけということになりそうです。持ち株会社が株式保有で実効支配し、責任は分社化された各事業会社に押しつける、ということですから、自分たちだけの安泰を図る今の学研経営陣が、自ら認める「崖っぷち」の経営状況を、分社化した上で家庭直販事業をはじめ赤字部門を会社ごと切り捨て、労働者を大量に解雇する、業績の悪い子会社は賃金体系も変えて給与水準を切り下げる、転籍なども頻繁に行うなど勝手放題のやり得を狙って切り抜けようとする最後の延命策でしかありません。
日本における持ち株会社解禁は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)の改訂として1997年に行われました。その際に5年後の見直しという附則が設けられ、2002年の改訂では、大規模会社の株式保有総額の制限に関する規定を廃止、金融会社による他の国内の会社の議決権保有制限の対象範囲を縮減すること、等が経団連などの要求を受けて、さらに改訂制定されました。97年当時から、この解禁は巨大企業グループの形成とその下での大規模なリストラを横行させること、従って独禁法の第一条の目的にある「雇用及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」という趣旨に反するものだ、という批判の声がありました。
労働者保護の附帯決議など無視し、歪んだ発展をたどる日本の持ち株会社
しかし、当時の規制緩和、金融ビッグバンというかけ声の中で、解禁は強行され、みずほホールディングスを始めとする四大金融グループや、NTTグループなどの巨大企業が相次いで誕生、NTTで99年に2万8千人の社員の削減、その後も子会社設立による11万人の転籍・出向がくりかえされるなどのように、全社会的に増大した持ち株会社の下でのリストラと過酷な労働実態が生み出されていったのが実状です。
97年の改訂の際に、衆議院、参議院で採択された附帯決議では、労働者保護の法制度等の実施をうたっていましたが、いつものことながらそんなことは実施されてきていません。リストラ・首切りの労働者使い捨てや労働条件切り下げに対して、事業会社の労働組合が団体交渉を求めても持ち株会社経営者は雇用関係がないことを口実にこれを拒否する等の事例も後を絶たず、持ち株会社は「支配はあっても責任はない」という不条理を居直っています。「会社分割に伴う労働契約承継法」も不十分で、同法7条や商法附則5条を根拠に、協議違反の同意なき「転籍」の無効を訴えた労働者の請求が棄却される不当判決(07年5月、日本IBM事件)も出されるなどしています。
こうした歪んだ発展をたどっている日本の持ち株会社については、法律学者からも「要するに、日本の現行商法上、持株会社は法的責任隠蔽のためのシステムでしかないのである。海外に目を向けると、持株会社制度は行政上の不都合を乗り越えるための避難的措置として使われているくらいで、親会社子会社の責任はたいてい一体である。持株会社の多大なるメリットを活かすためにも、欧米並みの企業結合法制の整備は急務である。」
との声が上がっています。(ここで、メリットとは、子会社の自律性・独立性とホールディングスの高度な戦略的経営、とされていますが、経営的観点から言っても今の学研には、この二つは望むべくもないでしょう)。
労働者に対する無責任、さらには株主総会でも学研GIC等の不祥事を隠蔽し、コーポレートガヴァナンスなど機能していない社会的無責任を居直っている学研経営に、持ち株会社移行などを許せば、どんなに危険なことになるのか、と考えさせられます。
学研経営は、自ら招いた危機的な状況を、内外への無責任と労働者への苛烈な犠牲強要によって乗り切るための最終的な手段として、持ち株会社移行を打ち出すに至ったものと考えられます。学研および関連で働いている労働者の皆さんが黙っていれば、いよいよ大変な犠牲を強いられることになっていく状況です。労働組合の対応も問われる事態です。しかし、決して悲観的に考える必要はありません。
現場から共に学研経営の責任追及へ!
現場から学研の経営責任を認めさせていく闘いが重要になっています。米国発の金融危機と世界同時不況への激震は、新自由主義的な経済システムの破綻を明瞭に示しています。学研経営の苦し紛れの経営施策がその後追いでしかなく、労働者への犠牲は勿論のこと学研60年史にも不幸な終焉しかもたらさないことを突きつけていく時です。
ふじせ争議は、その不幸な後半分の歴史に立ち会い、争議解決無くして経営再建などないことを学研経営に示してきました。編集プロダクションでの労組結成に対し、委託業務総引き上げ=倒産・解雇攻撃を仕掛けてきた学研。その争議責任・使用者責任を追及し、業務再開ー解雇撤回をめざして闘っています。企業の壁を楯に取った下請け編集会社への実効支配に対して、「支配あるところ責任あり」を掲げて闘ってきました。これから分社化合理化がかけられたら、私たちの闘いも大いに参考になると思います。
旧労働省の持株会社解禁に伴う労使関係懇談会中間とりまとめの中でも、持ち株会社の使用者責任について、95年2月の朝日放送事件の最高裁判例が挙げられたようです。「基本的な労働条件について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある」かどうかが使用者性の基準になるとするものです。ふじせ企画の労働者に対する学研の関係も、これに当てはまるものでした。しかし、行政訴訟で裁判所は、朝日放送事件との同一性が争点であり、これにつき判断するとして訴訟進行をしながら、判決の段になると一切、この点の判断を回避してしまいました。従って、学研・ふじせ事件判決は、とても確定判決などと言えるものはなく、争議はますます現場で決着を付けていくものである、との確信を生じさせています。学研に派遣され学研管理職の指揮の下で働いてきた私たち自身が一番よく知っている学研の使用者実態を踏まえ、業務引き上げ=倒産・解雇の経営責任を現場から取らせていく闘いを展開してきています。
学研関連の皆さん。共に学研経営の責任回避、逃げ切りを許さず闘っていきましょう!
<秋季闘争前半戦報告>
9・16学研社前闘争
9月16日、五反田移転後初の社長・役員への抗議行動を行いました。遠藤社長は8時に出社、社長車の周囲からシュプレヒを浴びせました。車は地下駐車場へ。この後、この車(窓はスモークドグラス)
が遠藤社長を降ろして10分ほどして出て来て、五反田駅方向へ。どうやら他の役員たちを迎えに行ったようで、約15分後に役員たちを乗せて戻ってきました。結局、3人程ずつ相乗りして、地下駐車場へのピストン輸送を3往復。毎回シュプレヒを浴びせました。
上池台では殆ど通行人がいませんでしたが、五反田は朝は出勤途上の地域の労働者が多数見ています。今まで徒歩で出社していた専務以下の役員たちも直接抗議の声を人々の前で浴びるのを嫌がってのことでしょう。追及逃れの逃亡劇は笑止でした。
地下駐車場に向かう社長車
10・3学研社前闘争
10月3日、秋季第2波の社前行動を展開。だが、この日は遠藤社長はなかなか出社して来ません。9時過ぎになって社長を乗せたらしい車がやってきたのでシュプレヒを浴びせて抗議。しかし、よく見ると車内の人影は運転手だけ。社長・役員はその後も私たちがいる間は出社して来ないままでした。
マイク情宣と学研・地域労働者へビラ配布。本社を訪れてきた学研教室の指導者らしき方々にもビラを渡すことができました。玄関前で抗議の声を上げ闘い抜きました。
10・3提携先=(株)テーオーシーに申し入れ
10月3日、学研と株式の持ち合いを行っていることが分かったテーオーシーの本社(西五反田のTOCビル内)に申し入れを行いました。総務部長(兼社長秘書室長)が応対、学研の実態を説明する労組・支援共の話に耳を傾けて、社長にも伝える旨の回答でした。経済誌・紙の学研への批判的記事にはコピーまで依頼し関心を示していました。
10・16学研社前闘争
10月16日は、午後からの社前抗議行動。20名の仲間が結集し、12時半から沢山の旗・横断幕・幟を設営し、昼休みで社内から出て来た学研労働者、および地域の人々へビラを配布し、マイクで訴えました。
この日のビラでは、ふじせ争議のお知らせの他に、学研で働く非正規雇用の労働者へも、私たちが地域で共に闘っている東京南部労働者組合を紹介し、地域で一人でも入れる合同労組での具体的な取り組みと成果を報告して、「労働条件、労働環境は変えることができます」と訴えました。地域の労働者を含めて多くの受け取りがありました。
本社機能が一つになり、いろいろな人々が通る会社前で有意義な情宣ができています。
13時を回ってから、これまでの正面玄関前行動から形を変えて、南側の道路に面した場所で座り込み、また職場で向けてマイクで訴えました。
最後は社長室のある側へ回って、抗議のシュプレヒコールを上げて終了しました。
<共闘報告>
9・30品川臨職闘争33周年大井町デモ=南部集中闘争打ち抜く
浜野区長2年目、品川区に争議解決を迫り84名が結集し力強いデモ。
10・3全争議団闘争勝利総決起集会開催
豊島区民センターに全都の争議団・労組が結集、争議団勝利、職場や様々な課題で闘う仲間との連帯を確認。
本日10・23争団連統一行動
本日は争議団連絡会議の統一行動です。3現場貫く闘いを打ち抜きます。次号で詳報
学研本社前闘争→ アール社前闘争赤坂ツインタワービル前 →
大道測量・大同環境包囲デモ 上野公園不忍池(桜木亭横)からデモ