最終赤字56億、本社売却と労働者への犠牲強要
自ら「崖っぷち」と称する学研経営の危機と無責任

6・26株主総会で追及するぞ!

 会社は5月16日に3月決算を発表しました。それによると、連結最終損失は56億円、同売上高は784億円、営業損失は21億円という数字でした。

 無惨な赤字拡大となった原因については、毎回おなじみの直販部門の赤字は言うに及ばず、主に、市販部門が不振で赤字(前期比で12億円の利益減)、クロスメディア事業での11億円の営業赤字など新規事業の失敗、棚卸資産評価損(不良在庫の拡大)、等です。
完成間近の本社を売却 「固定資産流動化」との詭弁
 会社は、5月9日、資産の効率化と財務体質の強化を図るため、固定資産の流動化を決議した、として、西五反田に建設中の本社ビルと土地を三井・住友ファイナンス&リースに売却することを発表しました。しかし、動機はそのような能動的な位置づけではなく、この62期の赤字に続いて、63期も赤字となると、「2期連続赤字の上場会社で直接響くのが(金融機関の)取引条件で、一気に極端に厳しいチェックが入る。まさに非常事態となる」(遠藤社長)という「重大で深刻な現実」(同)にあるようです。IT企業など自社ビルを持たないのがトレンド、と言う向きもありますが、最初からリースで取得するならいざしらず、土地を購入し長期保有で減損会計適用が迫ると巨額の建設費をかけて社屋建設、そしてこれから移転という時期に売却、というのは何の計画性もなく、この売却による約90億円の特別利益を計上する必要に迫られた追い詰められた経営実態が見えてしまっています。62期の繰り越し利益剰余金は、17億円のマイナスとなってしまい、遠藤社長は社内報「学研ライフ」で学研の現状を自ら「崖っぷち」
とくり返している有り様です。 
達成不能の経営計画、転落したら崖の下には何が・・・
 遠藤社長は、63期(来年3月決算)で営業黒字2桁達成が最大目標と必死に叫んでいますが、今の学研にはとても無理なことは社内の誰もが知っています。学研は、遠藤体制の下で、3月決算の形だけの黒字化を行ってきましたが、そのようなごまかしがきかなくなっている現状を私たちは再三指摘してきました。期末にかけてのムック本等の乱造による見せかけの売上げ達成を社員に強いて、その後の返本増大を招くという自転車操業で、07年には3月決算でさえ、営業損益が赤字に転落し、期末ぎりぎりに学研第2ビルを売却して最終損失=赤字決算を免れるという手段に出たことも記憶に新しいところです。そして、以後も営業赤字が拡大しています。
 学研は、筆頭株主のエフィッシモに社長解任要求をちらつかされて、急遽、リストラ策を発表、今年2度目の希望退職募集や新賃金制度導入等による人員削減と賃下げ攻撃を狙うという学研労働者への犠牲強要策で対外的な取り繕いと危機乗り切りを図っています。しかし、これによって学研経営に対する社内からの不信感は最大化しています。本社売却と同時に学研経営が示した「学研グループ 2カ年経営計画」は、社員の協力も得られずに間違いなく破綻するでしょう。学研経営陣の無責任性の重大さと社員の失望・離反は、役員報酬の一部返上でごまかせるような状態ではなくなっているのです。
 「崖っぷち」から転落したら、遠藤社長らは、どう責任を取るつもりでしょうか?
エフィッシモの社長解任提案表明と取り下げ
 エフィッシモキャピタルマネージメントは、4月22日に大量保有報告書(変更報告書)の中で、来る株主総会において、学研の遠藤社長に対する解任提案を行う用意があることを発表していました。
 「平成19年3月期まで10期連続減収(連結決算に基づく、以下同じ)、4期連続営業減益」、「遠藤洋一郎氏が取締役に就任した平成10年3月期以降の累積当期純損益は▲538億円(平成20年3月期は予想数値使用)に達しており、この間、純資産は902億円から330億円(平成20年3月期第3四半期末)にまで減少するなど企業価値が大幅に毀損している」、「経常損益は、平成8年3月期以降平成19年3月期まで12期連続で期初の予想に大幅な未達となっており、平成20年3月期も、現在までのところ既に3度の業績予想修正を行い、経常損益は期初の予想より30億円以上悪化し21億円の赤字となる予定です。中期経営計画New Creative Planに関しても、現実との大きな乖離が期を追う毎に明らかになり、その位置付けすら不明」
 これらの点を指摘し、エフィッシモは、「このように、経営陣はもはや経営状況の適切な把握すらできていない状態だと考えられます。」と述べ、さらに
「子会社GICが、業務停止命令を受けるといった法令遵守体制の不備、また、基本的な在庫管理体制にも疑問を感じさせる平成20年3月期における多額の棚卸資産評価損の計上などからも、適切な経営管理体制が構築されていないと判断せざるを得ません。」との評価を下していました。
 そして、昨年より経営陣に対して書面により質問を行い、再三にわたり、回答を求めていたが、今なお、一切回答がないことから、株主として現経営陣を信任することはできない、として遠藤洋一郎氏の取締役解任に関する株主提案権を行使することとした、としています。「ただし、株主総会の招集通知発送前に、赤字事業からの撤退など抜本的な業績改善策、または、経営責任の明確化や社外取締役の選任など経営管理体制の改善策が公表された場合は、株主提案を取り下げることとします。」との条件で。
筆頭株主と経営陣の「かけひき」の茶番劇の裏で・・・
 早期退職、賃下げ等、労働者への犠牲強要策が拡大、直販の見直し=「学研のおばちゃん」は削減へ、など学研関連への影響も甚大
 これを受けて学研は遠藤社長解任提案に反対(続投)を表明、その一方でエフィッシモの求める「改善策」にそって、5月9日発表の「2カ年計画」の中で赤字事業からの撤退=家庭訪問販売事業の見直し(「学習」は廃刊の方向、現在2万人弱のセールスレディー=学研のおばちゃんは順次削減、等)、社外取締役選任、さらには上記の本社売却、早期退職制度等による人員削減などのコスト削減、等の方策を公表しました。また、インデックス・ホールディングスとの共同出資による携帯電話向け教育コンテンツ配信のアドモコなど3つの子会社解散も発表しました(4/28)。
 エフィッシモはこれを「抜本的な業績改善策および経営管理体制の改善策を含むものだと判断した」として5月16日に社長解任の株主提案を取り下げることを発表しました。経営計画の他に書面の授受による補足的な説明を受けた、とエフィッシモは言っています。しかし、実際のところは、両社でどのような交渉や取引が行われたかは分かりません。提案の取り下げが学研の決算発表日に行われたことで、56億の赤字決算にもかかわらず株価がやや上昇に向かうなど、示し合わせたような両社の動向を窺わせるものがあります。発表された学研の施策は、なんら学研の問題体質を根底から変えるものではなく、エフィッシモが最初に言っていた経営への厳しい評価がそんなに簡単に変わるものとも思えないはずなのですが、表面に現れているだけでも63期は倍額の8円の配当を出すなど、労働者を踏み台にして学研は大株主に大盤振る舞いを約束しており、エフィッシモも十分に獲得物を得たということでしょうか?
学研の無展望な実状と社長の無責任は、社内報からも明白
 私たちや学研で働く現場の労働者からは、今回の顛末は、度し難い茶番劇としか映りません。会社が4月14日に発表した、35歳以上の社員まで対象を広げた第2次早期退職者募集には結局、50名募集のところ35名の応募にとどまりました。働いている者を大切にしない会社のやり方で、社内の士気低下はますます進んでいます。学研の経営陣が、経営の戦略的展望も喪失し、無方針と混迷の中で自分たちの生き残りだけを図って醜悪な責任転嫁の労務政策を労働者に押しつけてきている末期的とさえ言える状況だ、ということは前号でも書きました。
 そんな学研経営が示している経営計画、2009年3月期売上高800億円、営業利益10億円、2010年3月期810億円、営業利益15億円、などという数字については、「絶対に無理だ」というのが社内の声です。それは、これまでの計画と実績の乖離からも明らかです。今回も、分かっていて、こういう発表を行って、世間を欺こうとしていると言われても仕方ありません。まさにやぶれかぶれの感があります。
 「学研ライフ」(4月30日号)で、遠藤社長は、62期の売上げが20億円、営業利益が30億円、事業計画と乖離したこと等を取り上げ、「最悪の62期」「危機的状況」等の言葉を連発し、なんでこんなになってしまったかと嘆いています。そして、エフィッシモの「在庫管理体制に問題があるのではないか」との指摘への4月30日の学研発表の「意見表明」の中で「企業会計基準の早期適用によるもので、ご懸念には及ばない」との回答とはまるで異なる、問題だらけの実態につき遠藤社長は吐露しているのです。「62期期首の在庫は130億であった。それが、低価法早期適用で36億強を評価減し、そして更に期中で15億円、つまり5年超のものを50億円以上評価減したわけだから、少なくとも80億の在庫になってしかるべきだ。それが、62期末には、あっという間に100億超の在庫になっていることがわかった。大量の返品があった以外に考えられない」。そして、先に触れたように「63期は崖っぷちでの戦い」という社長の言葉が出て来るのですが、ここでの詳述は省略します。
 遠藤社長のこの二枚舌をエフィッシモはどう受け止めるのでしょうか?エフィッシモにも、こうした学研の実状に照らして、大株主としての自らの言動についての責任が問われることを指摘しておきたいと思います。そして、コスト削減の下、労働者への犠牲強要を求めるやり方、労働者につけを回す「改善策」要求は、結局、経営の破綻に帰結するものでしかなく、自分たちにも返って来るのだということを肝に銘ずべきです。今の学研は、経営の問題体質が改められ、ふじせ争議を解決することなくして、経営再建はあり得ないことはますます明瞭になっているのです。
 私たち、東京ふじせ企画労組は昨秋、エフィッシモに対して申入書を送付し、筆頭株主としての姿勢を問い質していますが、さらに問題にしていくつもりです。
労働協約を締結できず、新制度導入は延期。
学研の春闘は継続中!

 
エフィッシモは遠藤社長への不信任を撤回した格好ですが、学研社員は社長を信任しているのでしょうか?
 否、遠藤社長は社内の信頼を獲得することができない状態に陥っている様子です。
 
学研経営は、新賃金制度に基づく賃金体系を2月中に明らかにするとしていましたが、詳細を開示したのは5月になってからでした。詳細を示すと、反発が強まりスムーズに導入できないと経営が判断していたことは明白です。これによると、賃下げ対象者が344人(社員の35%)に達する。全学研労組はこれに強く抗議、春闘を闘ってきています。従業員組合も、一般組合員の反発が強く組織内をまとめきれない状況で、5月中の導入は延期されることになりました。

 学研経営がこのかん強行しようとしている新人事制度では、資格等級制度において給与の多い労働者が賃下げの対象になるように格付けされる、新賃金制度等では、見なし残業手当を廃止し、一時金はポイント制で、労働組合の交渉余地を極端に奪い、経営の都合の良いように賃下げを行えるように狙ったものであること等の問題性は明らかです。そして経営側は成果給的な考え方を軸に、将来、一度失敗した裁量労働制を敷こうとしていることを見落としてはならないと考えます。労働者にとって何もいいことはありません。
 やりたい放題のリストラ=人員削減合理化と合わせ、もうこれ以上黙って従っているわけにはいきません。学研を担ってきたのは自分たち労働者であることの誇りにかけて職場から、現場から無責任な経営に対し怒りにの声を上げていこう!  
 そして、この経営の問題体質は、ふじせ争議をひき起こし未だに責任を認めて解決しようとしない姿勢としても現れています。私たちも共に闘っていくつもりです。
4・23社前役員追及ー5・6遠藤社長宅闘争
         −5・14学研本社前闘争を展開!

 4月23日、エフィッシモの社長解任提案発表を受けて緊急の取締役会が開かれた学研では朝7時25分に遠藤社長が出社、安田専務、岩井・中森取締役らも8時までに出社、これらに抗議・追及を行いました。その後富樫専務、大谷・本間監査役を、それぞれ追及、争議解決を迫りました。

  4・23社前闘争  富樫専務に団交要求 

 退任の噂さえあった遠藤社長の続投表明があった直後の5月6日には、ふじせ労組と支援共闘会議で横浜の遠藤社長宅へ団交申し入れ行動を展開、自宅周辺に多数のビラを各戸配布し情宣も行いました。連休で出かけていたのか遠藤宅は応答無し。ポストに団交申入書とビラを投函して帰りました。後日、またも遠藤社長は、これを学研から組合事務所宛に返送するという愚かな対応を行ってきました。
 5月14日には学研社前で午後12時〜3時まで抗議行動。社内へ向けた団交要求に会社は鉄柵・シャッターを閉鎖、受付にも通さない不当な対応をくり返しました。各出入り口から抗議の声を上げて、社前を取り巻く旗・横断幕・幟と共に争議状況が現出され、社長の車で出迎えに出た重要な(?)来客も、車を離れた所に停車し、歩いてやって来るなど、経営自ら混乱した対応を露呈。私たちは、危機的な経営状況を労働者に責任転嫁して逃げ延びようとする学研経営陣に抗議の声を浴びせ、五反田移転を迎え撃ち闘うぞ、等のシュプレヒコールを上げて闘い抜きました。


写真=5・14社前闘争

<共闘報告> 4・21南部春季統一行動第2波
エッソ石油前ーアール社前を貫き、成功裏に打ち抜く!

 
4月1日の第1波(品川庁舎前ー学研社前)に続いて、南部交流会統一行動の第2波として、8名の不当解雇撤回闘争、反合理科・反弾圧闘争を闘うス労自主のエッソ石油品川本社前行動が43名の結集で闘われました。続いて、赤坂ツインタワービルに事務所を構えるアールインベストメントアンドデザインの業務上の疾病の企業責任を追及し、解雇・休業補償打ち切りと闘っている東京南部労働者組合アールの社前抗議行動。こちらは06年の争議突入後、初めての統一行動、48名の仲間が結集してビル前の昼集会を力強く打ち抜きました。都労委が結審し、敗色濃厚な経営が雇用関係不存在確認訴訟を起こしてきた直後で、タイムリーな闘いとなりました。