06年の学研を振り返って
破綻した経営責任転化策と問題体質の露呈!
 今年も残すところあとわずかとなりました。2006年の学研を振り返ると、無責任経営の問題点が隠しきれなくなって噴出すると共に、その犠牲を学研及び関連労働者へしわ寄せするやり方が限界に達し通用しなくなってきたことを見ることができます。
 3月決算で単体で13億円の黒字を打ち出したものの、学研クレジット売却益50億円を考慮に入れると実質赤字で、この9月の中間決算での23億円の赤字と来春の業績見込みを合わせ見て、これまでの期末に帳尻合わせした見せかけの黒字計上策がもうこれ以上ごまかしを続けることができなくなっていることが分かります。
 先月号で報告した裁量労働制の導入前倒しの失敗は、こうした学研経営の行き詰まりの責任を労働者に転化して賃金を押さえ込もうとするこれまでの労務政策が破綻してきていることを示す特筆すべき出来事でした。
そうした中、受験塾の買収や老人介護事業への進出などの一見派手な事業展開も、足元の経営が揺らいでいる中の経営展望を欠いたままの動向でしかなく、3月に工事を開始し、08年へと突き進もうとしている移転事業も不安を抱えたものにならざるを得なくなっています。株主の中からは遠藤社長への不信感を抱き、解任を求める動きも出始めています。06年は創業60周年の年だったにもかかわらす記念事業も振るわず、ふじせ争議を含む問題山積の無責任経営に明るい見通しも生まれるはずがありません。以下に学研・ふじせ闘争の06年10大ニュースをまとめて見ました。

ふじせ闘争2006年の10大ニュース
28周年五反田地域デモ闘う!
 2月3日、倒産・解雇28周年闘争として、ふじせ労組と支援共闘会議主催、争議団連絡会議統一行動、南部地区労働者交流会・出版関連労組交流会議の集中闘争として、地域・全都の仲間67団体115名の結集で集会と五反田地域デモを行いました。学研本社の五反田移転を迎え撃ち、争議解決を迫る06年の闘いの飛躍へ向けた第1弾として打ち抜かれ、出版・地域・争議団、そして九州・関西・宮城等の全国からも結集を受け、熱い連帯共闘の力が結実した闘いとなりました。
九州ー東京でイベント闘争を展開!
2月19日には北九州・小倉で開催された「北九州市自分史文学賞授賞式」に対し、学研が後援を行っていることにつき恒例の抗議・情宣行動を展開。4月1日には2度目の開催となった「子どもキャリア教育講座」(学研と読売新聞の共催)。争議を抱えた問題に加えて、昨年来「ホリエモンブームに乗っかった企画」として批判。「子どもにお金や経済の仕組みを教える」というテーマの最近の教育への持ち込みには、銀行=金融資本とその元締めの日銀の「金融広報中央委員会」が仕掛け人になっていることも明らかにし、糾弾の情宣行動を打ち抜きました。
本社移転工事説明会でも会場内外で抗議・追及
 今春から基礎工事に入り、秋から新社屋建設工事開始、08年移転という過程に入っている学研本社の五反田への移転に対し、4月27日、29日に近隣住民向けに開催された移転工事説明会には、会場前抗議情宣と合わせ、隣に組合事務所を構える立場からの会場内での質問・追及を行いました。争議や相次ぐ不祥事を引き起こしたまま解決しようとしない問題体質を改めることは地域・社会に対する責任であることを強く突き出すことができました。
学研社前でも役員一人ひとりを追及、受付に迫る闘いも
 3/20、5/30、7/24、9/20、10/19、11/7、12/20と朝の社前行動を展開。早朝出社で追及をかわそうとする遠藤社長を迎え撃ち、その後も出社してくる各役員に抗議・団交要求を浴びせる闘いを展開、安田・富樫専務や新たな役員へも追求行動を浴びせました。また、4月14日の午後には40名を越える結集で、南部交流会の統一行動の一環として会社側のロックアウト、鉄柵検問体制と対峙し、社内へ向けた団交要求と集会。11/30にも同様の展開。
学研株主総会闘争
 6月29日の株主総会で、ふじせ争議をはじめ、粉飾決算加担の中央・青山監査法人との関係、子会社不祥事、等々の多岐にわたる追及を展開。会社側は、発言途中の当該のマイクの電源を切るなどの質問妨害を行い、答弁の中でも、「ふじせ労組は、イベント会場やホームページ等、あらゆる場で会社の名誉・信用を毀損する行為をくり返し、業績を妨害している。」などと回答。後日、組合事務所に「元学研社員」を名乗る自称ヤクザが、ふじせの情宣ビラに絡めて「指詰めろ・金出せ・殺す」等の電話も。
出版業界へも情宣
ホームページも注目浴びる

 
7月、東京ビッグサイトで行われた東京国際ブックフェアに対し、出展している学研を糾弾するビラ配布を今年も行いました。今年は教育社労組、洋書センター労組、山田書院労組と共に、2400枚のビラを完配し、1時間半にわたってイベント参加者にマイク情宣。22名の仲間が結集。争議を抱える学研の実態が広く知られるところとなっています。 
 イベント情宣を契機にふじせのホームページへのアクセスも増加。
会社決算、再三の下方修正
期末も中間も厳しい内容

3月決算では、連結売上高は842億円で前期の933億円から9・8%減で、低下率が大きく拡大し51億円の赤字。単体でも、売上高708億円で前期より5・3%マイナス、これらも当初の業績予想を大きく下方修正さざるを得なくなっています。中間決算では、単体の売上高は281億円で前期比マイナス6・2%で23億円の赤字。連結では、売上高が328億円(マイナス13・4%)、25億円の赤字で、ここでも売上高下落率は予想より悪化です。来春決算見かけ1億の黒字すら困難に。
会社、裁量労働制の前倒し導入を諦める
労基署からの指導もあり、学研は7月1日から、これまでの見なし手当制度を廃止し、労働時間どおりの残業費支払いを行いました。ところが、この時間外手当が前月より一人平均8時間・総額で5千万円増額となり、会社は慌てました。人件費が年間6億円増えれば実質赤字の業績にダメージとなります。そこで来年度以降に導入する予定だった雑誌部門での裁量労働制を12月から前倒し実施すると発表。しかし、現場からの反発、私たちの抗議情宣の中、11月になって導入延期を表明。期末に向け売上げ挽回へ超過重労働を強いている現実では無理。無責任経営のジレンマが拡大。
インデックスへ申し入れ
第2の大株主も再び「解決を望む」との立場表明

 7月27日、インデックスへ4回目の申し入れ。新窓口になった管理本部法務部長との間で「解決が望ましい」との同社の立場を改めて確認しました。
 同社は10月、小川善美社長の降格を発表。連結純利益を前期比46%減の30億7000万円に下方修正。国内外で積極的にM&Aを続け、急成長した同社。経営行き詰まりの学研の方から某証券会社を通じて提携を申し入れ第2の大株主になってもらいましたが、右肩上がりの時代が終わり、これまで拡大した領域の整理へ、との見方が。
遠藤社長の逃亡 
 5月5日、ふじせ労組と支援共のメンバーで、10月29日・日曜日の正午は支援の仲間を加えて、横浜市南区大岡の遠藤学研社長宅への団交申し入れ行動を展開しました。周辺200戸へビラのポスティング。4台の監視カメラも動いておらず、庭も荒れている遠藤宅でした。
11・7の学研社前では早朝出社も無し。いつまでも私たちの行動から逃げ切れるはずがありません。
ここへ来て学研株主の中からも遠藤社長の解任を求める動きが起きかけています。今の経営陣では誰がなっても同じとのさびしい観測の声も上がっていますが。

秋季闘争後半戦
11・30争議解決を迫り、団交要求行動!

 11月30日、午後1時半から本社前行動を行い、2時15分から社内へ向けた団交要求を展開しました。会社は正面鉄柵を閉ざしたので、3門に分かれて団交要求。
 会社は一時全ての出入りをストップ。来客や取引先への対応に追われました。長原口、西側での「受付に通せ、通さぬ」の攻防の最中、正面口から社長車が出て逃亡。遠藤社長かと思われましたが後に他の役員と判明。また、直後に外から戻った中山取締役が入ろうとして大慌て。抗議を浴びせました。

共闘報告
共謀罪、今国会での成立を阻止したぞ!
 12月19日の審議入りを阻止。与党は次期国会で継続審議に。完全廃案まで闘うぞ!
教育基本法改悪弾劾!
 一方、教育への国家介入を排してきた教育基本法がついに改悪されてしまいました。
出労交リーフ「教科書問題の今」発刊と合わせ、現場から反撃していこう。
労働契約法、新「労働時間法制」を許すな!
12・8 厚生労働省に対する怒りの情宣行動   
 労働政策審議会での審議が労使の大きな隔たりと激しい対立で6月にいったん停止したにもかかわらず、今秋再開された審議の場に厚生労働省は撤回したはずの素案を焼き直し、日本経団連の圧力などを背景に許し難い提案を行ってきています。
 まず、ホワイトカラーイグゼンプションの導入案を出し、経団連(年収400万円以上の労働者を対象としているが、厚労省は金額を明示していない)が求める時間外労働の規制の適用除外を考え方として積極的に容認する姿勢を示しているのです。サービス残業=ただ働きの法制化です。労働契約法関係では、就業規則の不利益変更による労働条件切り下げを労働者の同意なく労働契約とすることを狙っています。解雇の金銭解決制度導入(裁判で違法な解雇と認められても解決金さえ出せば、職場復帰させなくてもいい)については、今回見送ると報じられていますが、油断はできません。この他にも、契約社員など「有期雇用者」の正社員化の規定を労働契約法素案から削除、さらには裁量労働制の拡大や派遣労働の恒久化等も目論んでいます。厚労省は、あまりにも問題だらけで批判も噴出している法案を、年内最終報告を出して、07年国会上程に持ち込むために強行突破を狙っているのです。
労働法制改悪阻止・職場闘争勝利!労働者連絡会は、このような厚生労働省を弾劾し抗議の情宣行動を、労政審の当日にあたる12月8日に展開しました。
大田区介護支援費・行政訴訟、11・29実質勝訴の判決!
 南部労組の障害者組合員である鈴木さんの闘い。大田区の移動介護支給の4分の1への削減とそれを定めた上限要綱は違法との判決が東京地裁で出されました。大田区の削減措置は障害者の日常的な外出活動、社会参加等を著しく損なうものであることが認定
ました。障害者自立支援法が施行されたことをもって旧支援費制度に基づく差額の支払い請求は却下されましたが、実質勝利の判決です。大田区に抗議を!
南部労組の新争議=アールプロジェクト闘争、連続した現場展開へ!
 会社が行った業務上の疾病の責任居直りの休業補償打ち切りと解雇に対し、11月22日、中目黒から千代田区3番町に移った本社へ抗議行動を展開。11・30都労委調査を挟んで、12月13日にも社前行動。出社してきた副社長を追及。社長は逃亡。
南部労組テック工業、年末一時金闘争妥結
 12月7日に会社回答0・5ヶ月。中小零細企業で長く賃上げも無かった職場で、労組旗上げ後、少しずつ賃金・労働条件向上をかち取りつつあります。団交での部長の査定給導入の意思表示に対してはこれを撤回させました。