学研の経営陣は不当な株主総会運営を改め、質問に真摯に回答しなさい!
 私たちは、6月29日開催の学研の第60回定時株主総会に向けて、以下のような質問書を提出しました(ゴチック部分が質問書本文です)。総会の詳しい内容については、次号に掲載します。
1、東京ふじせ企画労働組合との労働争議について
 東京ふじせ企画労働組合と直接話し合って解決策を考えるのが学研にとって最善の道であり、大株主のインデックスからも問題解決を望むとの声が上がっている。話し合い解決を検討するべきではないのか。それができないとするなら、その理由 は何なのかを明らかにされたい。
学研に責任はないとの自らの主張に自信があるならば、同労組との話し合いの場に出てきて述べるべきではないか。

 
経営陣は「学研に争議はない」と強弁するが、その彼らが社前で追及を浴び、何も言えず、社内に逃げ込み、遠藤社長は自宅に監視カメラ4台も据えて、土日は遅くまで帰宅を避けて外出し、平日はこれまたふじせ労組の抗議を避けるために学研に毎朝7時45分の早朝出社をくり返し、それでも追及されそうになってゴミ取り口から社内に逃げ込んだりしている。争議は厳然として存在していることは学研の経営陣が身にしみて感じていることである。 
 このかん、東京ふじせ企画労組は、学研の東京ふじせの労働者に対する「使用者性」が最高裁判例になっている朝日放送事件に於ける朝日放送と下請会社の労働者の関係以上に明白であるもかかわらず、これを否認した行政訴訟判決を批判すると同時に、東京ふじせ企画の倒産に伴って破産管財人が起こした損害賠償請求裁判の判決で、学研の使用者性が認定されると共に、学研が東京ふじせ企画労組を潰すために業務総引き上げ=会社倒産・全員解雇を仕掛けたものである、という明確な事実認定を行ったことに触れて昨年の株主総会でも質問をしてきました。これに対し、昨年総会での学研の答弁は、「この損害賠償請求事件は当社の使用者性が争点になった事件ではなく、引き合いに出すのは意味がございません。」と述べました。

  意味がないどころか、この裁判は、何故東京ふじせ企画が倒産して、私たちの雇用が奪われたかを究明する重要な意味を持っていたのです。もちろん、この裁判は使用者性を争点としていませんでした。東京ふじせ企画の破産管財人が学研と工藤ふじせ企画(学研の業務を請け負い「孫請け」の東京ふじせに行わせていたトンネル会社)  社長を相手に起こした裁判ですから、経営間の争いです。そのために、業務委託契約の解除は、下請け(孫請け)の側の経営者も不本意であれ合意した上でのことだから、賠償責任は生じないとして学研と工藤が勝ったのです。しかし、裁判官は、上記の重要な認定を行ったのです。工藤ふじせ企画社長も須田東京ふじせ社長も学研の指揮・命令を受けて組合潰しに動いた、と明らかにしています。
  さらに加藤常務は、「使用者性が直接の争点になった事件の控訴審判決においても、東京高裁は、東京ふじせの実質的経営者であった工藤は、・・・東京じせを潰すのもやむなしとの判断から、学研から受託していた業務を返上したとの正しい認定を付け加えた」とわざわざ述べ、「何もご存じない株主様に真実を知っていただくために一言申し述べさせていただきました」などという文章を読み上げました。
 「何もご存じない株主様に真実を」どころか、虚偽の主張でだまそうとする学研のやり方は許し難いものです。当時、学研の黒川巌学習科学編集局次長が、ショック療法で組合を潰そうと工藤に持ちかけ、学研ーふじせー東京ふじせの3重構造を利用し、東京ふじせを潰し、ふじせで学研の業務を再開する等の計画を立てて、表向き「返上」   という体裁を学研が工藤に取らせたことは、一部、都労委でも認定されています。その一部を高裁判決が曲げて悪用したからと言って、学研の業務引き上げの主導性まで、裁判で覆されているわけではないことは明白です。学研が東京ふじせ企画を倒産させて35名の労働者の雇用を奪ったことはまぎれもない事実です。
  昨年の株主提案権の行使は、経営陣が学研と無関係と言い張っているふじせ労組代表を社外監査役に選任せよというもので、一般株主から提案されました。総会出席のふじせ労組はじめ支援者は、監査役になることは組合の要求となじまないので保留票を投じましたが、適切な社外監査役増員の提案には賛成しました。
  そして、ふじせ労組代表自らが発言して、一般株主から株主提案がされた意義、ふじせ争議は学研経営の問題体質を現す重大な事件であり、その解決如何が学研の未来を左右するものであることが一般株主の中にも浸透していることを経営陣は受け止めるべきであることを説明しようとしました。しかし、それを怖れた遠藤社長らは、ふじせ代表の発言を不当に封じ、退場までさせようとする不当な総会運営を行ったのです。遠藤議長は、昨年のこの総会運営につき謝罪すべきです。
  そして、速やかに東京ふじせ企画労組との話し合いで争議解決を図ることを決断すべきです。

2、第60期の業績と経営展望について
1)中期経営計画の修正と業績見込み
・中期経営計画をこれまでの3年から2年へ修正せざるを得なかった理由は何なのか?考え方を示していただきたい。

5月19日にNew Creative Planを発表した時に述べている「学研クレジット売却やGIC整理等」の不測の事態が起きたからなのか、4月に社内報で遠藤社長が述べている「3年先のことなど確定できない」として今後も「2年間ごとの中期計画」でやっていくのか不明です。
また、第61期は連結で利益ゼロ、単体で利益1億、62期は連結で利益10億、単体で利益11億との目標を立てている。売上高が、61期で連結782億円、単体で680億円で底をつき、62期で各810億、700億へとV字回復を果たすとされているが、その根拠は何か?新たな売上げと利益をどの事業に見込んでいるのか示されたい。
2)財務諸表について
・業績が、当初目標を大きく下回って業績見込みを再三下方修正せざるをえなくなった原因は何なのかを明らかにされたい。

 「パルス」4月号にも報告しましたが、学研は、4月21日、昨年8月に下方修正を行った業績予想につき、再度の下方修正を行った旨の発表をしました。    4月10日の部長会発表で遠藤社長が8月時発表の営業利益、当期利益を確保できるか、「近日中には結論が出る」と言っていた結果が、「確保できなかった」と出たわけです。

 連結では、売上高が867億から842億へと更に25億円の下方修正(当初計画は900億)、単独では、売上高が728億から708億へと更に20億円弱の下方修正(当初計画は735億)、当期利益は18億から12億9千万へと更に5億円余の下方修正がされています。
 「経営計画」をいくら立ててもこんなに見通しの甘さを露呈しているようでは、信頼されないでしょう。
・学研GIC事業整理引き当て損の25億円、学研クレジット売却益50億円を考慮すると、今次の業績は単体でも実質的に悪化しているのではないか?
・売掛金228億円は昨年(255億円)を下回ったものの、対売上げ比率ではほぼ同様の水準に高止まりしており、製品及び商品は119億円と昨年(116億円)を上回っている。市販事業部門において「返本の増加」と記載されているが、全体としても返本・不良在庫は改善されていないのではないか?実態を示していただきたい。
3)学研クレジット売却について

・理由は何か?「NIFの信用力やネットワークを有効活用」するとしているが、
具体的にそのような関係が築かれているのか明らかにしていただきたい。
・また、グループで唯一黒字だった子会社がなくなること等の影響をどう判断されているのか
 学研クレジットの経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO)の一環として身売りがされた、即ち同経営陣の学研からの離反が真相とされています。
4)不祥事が絡んだGSMの解散とGICの整理について
・学研スクールマネジメント解散につぐ 学研GIC教室閉鎖の原因は何か?
営業報告書にも「キャンセル率が高水準で推移し低迷が長期化していた」「商品の販売を中止した」と記載されているが、その相次ぐ解約の理由をどう考えているのか?問題がどこにあったのか明らかにしていただきたい。

 高額教材押しつけ販売についての反省と被害者に謝罪することを何故、考えていないのでしょうか?
5)ニュークリエイティブプラン06−07について
・クロスメディア・コンテンツ事業への積極投資とはいかなる内容か?
それを機軸とする基本戦略とは何か?

 創業60周年事業も精彩を欠き、科学大賞を創設などしたが、「大人の科学」も不振とされており、柱となる事業が何なのか不明確ではないでしょうか?
6)新社屋の08年五反田移転について
・移転費用は、最終的にどれだけかかり、借入金返済の見通しはどうなっているのかを示されたい。
  昨年も一般の株主から、移転して新居に入ってもローンが払えず売却する、というようなことにならないのか、と不安が示された。
・上記ニュークリエイティブプランや移転に伴う、人員合理化、特に中高年労働者へのリストラ等を考えているのか、明らかにされたい、
・24階の高層社屋建設について地域住民への対応をどのように考えているのか?
7)新人事制度について
10年ぶりに新たな人事制度を設けるとしているが、その狙いとするところは何かを示されたい。
 
職務手当(見なし残業手当)の廃止等に学研経営が動くのは、このかんの時間管理の強化と合わせ裁量労働制(サービス残業)導入等をおし進めていくためのものであることは、「パルス」05年10月号、11月号で触れました。  経過措置の中で適切な残業費支払いが行われるかのような言い方をしていますが、一時金算定額が目減りし、IDカードの直行・直帰に関わる本人修正を禁止して不適正な労働時間の判定が行われようとしているなど、問題だらけの内容です。07年労働契約法制定(労働法制改悪)の先を行くような措置です。

3、大株主と企業買収防衛策について
 ライブドア、村上ファンドなど、企業買収が社会的に問題になっているが、学研に於いてそのような切迫した状況があるのか。
 本社建設工事も身売りの準備などということはないのか?
 企業価値防衛を言うが、大株主の筆頭に古岡奨学会があり、一族支配の残滓は経営体質の抜本的な改善の妨げ、ひいては企業価値向上の桎梏になっているのではないか?
 
少なくとも、ふじせ争議を引き起こしたのは一族専制支配の職場状況に原因があり、それは今も改善されておらず、話し合いさえ拒んでいるのである。

4、退職慰労金撤廃と役員報酬制度について
 これまで株主からも要求が出されてきたが、頑なに変更せず、ここへきて撤廃することにした経緯を明らかにされよ?また、今回の打ち切り支給の額はいくらか。新たな役員報酬制度と合わせ、その透明性を高めるとするなら、各役員ごとの報酬額をこれ以降明らかにする考えはないのか?


5、「子どもキャリア教育講座」等のイベント開催について
「学研ー読売キャリア教育講座」はいかなる教育理念に基づいて開催しているのか?
 「お金教育」の仕掛け人は日銀で、その「金融広報中央委員会」が子どもにマネープランや金融商品の知識も与えていくとしている。その日銀の福井総裁が村上ファンドに投資していたことが発覚した。日銀の低金利政策で、この13年間で304兆円の預金金利という「所得」が一般家庭から消えていったと言われる。その半面、銀行は余ったカネをファンドや消費者金融に回す。ファンドも、消費者金融も、銀行も巨額の利を得る。学研は、どういう「お金教育」をするつもり?
 また、昨年学研教育総研を発足させたが、10月10日の「ニッポン教育再興プロジェクト発起集会」参加呼び掛けと同総研の方針はどのような関係にあるのか?
 10・10集会で「教育再興ネットワークの立ち上げに向けて」とする講演を行った鈴木寛は、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーでもあり、教育再興ネットワークについては、既に2000年5月に「東京教育再興ネットワーク」が「徳目の充実」などを掲げる石原慎太郎・東京都知事の教育政策を支援する組織として先行発足しています。「愛国心の育成」をはじめ、アナクロな国家主義教育に近づけようとする内容のものですが、これは「学研教育総研」のめざすものでもあるのか、明らかにしてほしいものです。

6、中央青山監査法人の粉飾決算関与と監査依頼継続について
カネボウの粉飾決算に関与して金融庁からも処分を受けている中央青山監査法人
との関係を今後も継続する予定なのか明らかにされたい。
 また、この事件についての貴社の見解を示されたい。

 他の監査法人に変更している企業も続出しているが、学研は変える予定はないのか?9月から同監査法人との再契約を行うのか?
 同監査法人が業務停止処分を受けている7月から8月までの監査はどうするのか? 
 これらのことは、株主総会の重要な議題として議案に付すべき事項にもかかわらず、提案されていないのは何故か?

 同監査法人との間に特別の関係でもあるのか?カネボウと同様な粉飾をつるんで行ってきたというようなことはないのか?
                                                          以 上