労働者への一層の犠牲強要に
     
   動き出す学研経営
 学研の中間決算発表は、例年同様に11月になってからと思われますが、業績予想については先月号で報告しました。経営実態は改善されているとはとても言えない状況です。
 今年4月号の「パルス」でも触れましたが、06年3月からの中期経営計画=「最低ラインの絶対的な目標」さえ達成が厳しい中、経営陣は、これまでの経営責任の転化の姿勢を改めることもなく、コスト削減へ労働強化・賃金押さえ込み等の学研及び関連労働者への犠牲強要策の一層の強化に乗り出そうとしています。職務手当(見なし残業手当)の廃止、成果給導入等の賃金体系の改悪等もその一環ですが、「見なし残業手当」については廃止に踏み切ることを明らかにしたようです。見なし残業については、採用している企業で、実際の残業時間に関係なく給与の中に一定の残業費が含まれているとする方式の下でトータルで経営側に有利にはたらくシステムでしかないことが指摘され、批判の声も上がっています。しかし、学研経営が廃止に動くのは、労働者のためではなく、このかんの時間管理の強化と合わせ裁量労働制導入等をおし進めていくためのものです。
 学研の経営危機を招いた長年の暴力労政、労組敵視策の責任を明確にすることもなく、後を引き継いだ沢田ー小松ー遠藤体制は、自らも無責任経営で経営行き詰まり状態を10年以上にわたり固定化してきてしまいました。そのつけを、またまた労働者に回して、経営責任を免れようとしていることにはあきれるほかありません。このような経営姿勢が、ふじせ争議を長期に泥沼化させ、開き直っていることと一体のものであることは言うまでもありません。
学研も労基法違反?問題ありの残業費取り扱い
 時間外手当については、この8月に日本マクドナルドが、社員やアルバイト店員ら13万人(!)の賃金、時間外手当に未払い分があり、毎日の勤務時間を三十分単位で処理し、三十分に満たない端数を切り捨てていた差額分につき過去2年間にわたり支払うことを労基署から指導された事件が報道された(マックでは、その後群馬県の店長も、「実態は管理職ではないのに管理職とされ、残業代が支払われないのは労働基準法違反」として訴えを起こしています)ときに、学研社内でも「うちだって問題だ。15分未満の残業はばっさり切り捨て。しかも申告して上司が認可しないとその残業さえも認められない。さらに部門によってぜんぜん認定基準が違うんだから」との声が上がっていました。学研では、この15分を休憩時間という名目で切り捨てているようですが、「休憩時間」であれば原則として一斉に付与し、勤務時間の始めや終わりではなく途中で与えなければなりません。もちろん、業務命令等に備えて待機している等の時間は休憩とは見なされません。
部署によって基準が違うなど、学研の残業費支払いの実態も相当問題があるようです。
学研が「教育総研」発足で社員に参加を
        呼び掛けた10・10集会の実態は?

 学研は創業60周年事業の一環として「学研教育総研」を発足させていますが、これに伴って会社は、社員に対し、さる10月10日に虎ノ門パストラルで開催されたニッポン教育再興プロジェクト発起集会への参加を呼び掛けました。この日の発言者は、この教育再興プロジェクトの陰山英男氏、金子郁容氏(慶応義塾大学院教授)、鈴木寛氏(民主党「次の内閣(NC)」文部科学大臣)、野口芳宏氏(日本教育技術学会理事・名誉会長)、深澤久氏(高崎市立浜尻小学校教諭、道徳教育改革集団代表)でした。
  この集会の第1部で「教育再興ネットワークの立ち上げに向けて」とする講演を行った鈴木寛は、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーでもあり、教育再興ネットワークについては、既に2000年5月に「東京教育再興ネットワーク」が「徳目の充実」などを掲げる石原慎太郎・東京都知事の教育政策を支援する組織として先行発足しています。東京から日本全体に組織拡大を図ろうと、(1)親孝行や夫婦愛などをはぐくむ道徳教育(2)日本の歴史の正しい伝承などによる健全な愛国心の育成(3)男女が互いの特長を尊重しあう正しい男女観の確立−など七本の柱を掲げています。これは「戦後教育がなおざりにしてきたもの」などとして産経新聞が絶賛し期待を寄せるキャンペーンをはっているもので、アナクロな国家主義教育に近づけようとするものでしかありません。
 10・10集会はこれをオブラートに包んだ性格のものと考えられますが、鈴木寛の教育再興ネットワーク提起は「東京都版を全国版に」という思惑を担うものに間違いありません。学研が、このような集会に社員を動員しようとしたのは、陰山英男氏の教材を最近学研で発刊したことによる縁で単に誘われたからというのが実情かも知れませんが、集会の性格も検討することなく呼び掛けたなら「教育総研」などを創設する資格もない無責任な話です。もし、分かっていて呼び掛けたなら、学研は旧文部省との癒着の上で急成長してきた路線から、さらに踏み込んだ方向性を持って教育「改悪」に関与していくということになるでしょう。
<その他の経営動向>
MBO実施の学研クレ株、学研、数%再取得――年明け、取引関係、今後も維持。
 学習研究社は、経営陣による企業買収(MBO)に伴い今月十日付で上場廃止になる旧子会社、学研クレジットの株式を年明けにも再取得する方針を固めた。出資比率は数%にとどまる見通し。学習教材の割賦クレジットなど、両社の取引関係は今後も維持する。
 学研はかつて、学研クレの発行済み株式の六五・九一%を保有する筆頭株主だったが、今年7―8月にエヌ ・アイ・エフSMBCベンチャーズ傘下の投資ファンドが実施したTOB(株式公開買い付け)に応じ、全株を約六十二億円で売却した。                       (2005/10/07)日経金融新聞より
 悪徳商法と批判されているGICの教材押しつけ販売を含め、割賦販売会社が必要ということでしょうか
学習研究社、ゴルフ事業部を新設――ネットの用品販売強化狙う。
 学習研究社は16日付でゴルフ事業部を新設する。学研は週刊ゴルフ雑誌「パーゴルフ」やゴルフ技術の解説書を発行しているほか、インターネットの専用サイトでゴルフ用品を販売している。事業部新設を機に専用サイトの内容を充実させ、雑誌や解説書の売り上げ増にもつなげる。
 事業部長にはメディカル出版事業部の松村豊部長が就く。事業部のスタッフは松村氏を含めて十人。当面は専用サイトの内容の充実に取り組む。ゴルフコースの予約ができるようにするほか、レッスンビデオをパソコンに配信するといったサービスを計画している。        (2005/10/12)日経産業新聞より
「なんだか、これも失敗しそうだ」との声が社内から聞こえてきています。「遠藤社長の趣味でやってるんじゃないの」の声も。
「鉄人」幼虫 科学教材に
 
零下200度の低温にも耐え、濃度100%のアルコールも、沸騰したお湯の熱さもへっちゃら。驚くべき生命力をもつアフリカ産の小さな蚊の幼虫が、科学教材として来年にも登場しそうだ。・・・(2005/10/13)朝日新聞より
このネムリユスリカを「科学のタマゴ」の付録につけようとする企画に対し、朝日新聞「声」欄に投書が。「この幼虫を小中学生用の科学雑誌の「ふろく」に採用する計画があると聞いて、一抹の不安を感じたのは、私だけだろうか。・・・不特定多数の小中学生を対象に全国にばらまかれるのである。成虫化したものはどう処理されるのか。驚異的な生命力を持つ生物が、全国を飛び回ることにならないか。突然変異を起こしたり、国内の在来種と交配したりすることは絶対にないと言い切れるか。・・・」 学研は「幼虫に放射線を当て不妊処理をする。人や動物の血を吸うことはない」、などと言っていますが、投書に書かれているようなことまで先のことは多分考えていないでしょう。暴力的な組合弾圧や悪徳商法など、社会に害をばらまいていることの反省もなく、ISO14001の認証取得など「環境問題への取り組み」をアピールしているとんでもない「公害企業」じゃないか、という声も聞こえてきています。

秋季闘争報告
第1波9・26学研社前闘争


 9月26日に秋季第1波の学研本社前団交要求行動を行いました。12時30分に社前に登場、旗・横断幕等設営の後、マイクで情宣、合わせて支援の仲間と共に座り込み、争議解決を拒み逃げ続ける学研経営に対する抗議を行いました。
 13時40分から、正面口で団交要求を行い、受付に通すように求めると、会社はすぐに鉄柵、シャッターなど全ての出入り口を閉ざしてしまい、私たちだけでなく、取引先、社員の人々も閉め出す対応に出ました。シュプレヒコールを上げ、3門それぞれで団交要求を行い、全ての出入り口を開放するよう抗議の声を上げました。
集金日でもあり、内外に人が滞留すると、会社は西側郵便センター口を中心に断続的に扉を開閉し、私たちだけ閉め出す対応をくり返しましたが、会社のこんな混乱した対応にあきれる来客も少なくありませんでした。
第2波10・8学研イベント(科学実験教室)
      会場=東芝科学館前で抗議行動


 10月8日、学研の創業60周年事業として開始された学研科学実験キャラバンを招いて行われたイベント=科学実験教室の会場である東芝科学館の前で争議を押し隠してのイベント開催を糾弾する情宣を行いました。
 川崎にある東芝小向工場の門前は土曜日とあって閑散としていましたが、ときおりイベントに訪れる親子連れや通行人の人々に争議を抱えた学研の実情を訴えるビラを配布し、マイクで構内に訴えました。東芝側は突然のことに驚いて、旗を鉄柵金網に付けていることにクレームを付けてきましたが、事情を話し引き下がってもらいました。学研のことを知らず、イベントを招致したことを考えてもらうようにしました。
 さらに学研サイドが呼んだらしく警察官が自転車とパトカーに乗ってやってきて、介入を図ってきましたが、これも「労働争議に介入するな」と抗議し、警察も数分で引き返して行きました。
科学館では、250名ほどの参加者を募集したようですが、招待したらしい地元の養護学校の生徒たち約30名を加えて、やっと100名程度になる参加者の数でした。それでも、ビラをちゃんと受け取って熱心に読んでくれる保護者が多く、私たちの闘いに理解と支援を呼び掛ける効果的な情宣となりました。

共闘報告
9・30南部集中闘争=品川臨職区庁舎前集会・デモを打ち抜く!
 9月30日、75年の品川区による臨時職員不当解雇から始まった闘いは、当局の話し合い打ちきり、刑事弾圧、職制による暴力排除等をはね返し、03年11月の地労委命令、今年3月の中労委結審を経て品川区に争議解決を決断させる大きなヤマ場に入っています。この日の区長宅包囲デモは南部地区や全都から約90名が結集して打ち抜かれました。
10・7争団連総決起集会を開催!10・18統一行動の成功へ!
渡辺工業闘争の勝利、日野遺跡闘争、本山闘争の解決に続く全争議団闘争勝利へ向けて総決起集会の成功をかち取り、10・18中大生協闘争勝利の統一行動へ!
共謀罪の制定を許してはならない!
相談しただけで罪になるという労働運動・市民運動潰しの現代版治安維持法=「共謀罪」法案につき、政府・与党は10月14日からの衆院法務委員会審議入りを強行し、18日にも参考人質疑―採決、さらに25日(火)、27日に参院で審議―採決を目論み、特別国会で強行成立させようと狙っています。共謀罪制定阻止の大きな声を!